2-4_回診_リハビリ

2-4 回診で緊張、リハビリでほっこり

リアル白い巨塔

大学病院といえば、「回診」がつきものだ。教授を先頭に20名くらいの大所帯で病棟内の患者のベッドを回り、問診をしていくあの、白い巨塔のシーンを思い浮かべてほしい。

ちなみに、教授が率いているのは同じ診療科の医師、研修医、医学部生なのでこんなに威圧感のあるオジサマ達が来るわけではない。とはいえ、ベッドをぐるりを囲まれると、それなりの圧迫感はある。

学生たちへの無言のエール

私が入院したのは「脳神経センター」という病棟で「脳外科」と「神経内科」の患者さんがいる。私の疾患は「神経内科」に該当するのだが担当のT教授は見た目が柔らかい好好爺タイプ。威圧感はゼロだが、学生たちはおそらく緊張していたと思う。

T教授:「こちらの患者さんは2つの病院で異常なしと言われた。横になっているときは落ち着いているけど、起き上がると酷い頭痛がする。この症状の病名はわかる?」

学生たち:「…」(誰も答えられなくてちょっと気まずい空気)

T教授:「脳脊髄液減少症だよ。覚えておいて。起き上がった時だけ痛みが強く出るのは典型的な症状だから。」

学生たち:(めっちゃメモ)

こんなやりとりがあった。「私のように誤診されて心身ともに苦しい思いをする患者さんがでないように、私のこの症例が学生たちにとって良き教材となりますように」と心の中でエールを送った。

この回診は神経内科は毎週火曜の午後だが、脳外科では月曜の朝7時ごろに行われており、医師たちの過酷な労働環境を慮った。たしかに、朝9時からオペが入っており、休憩なしで10時間ということもザラな外科の医師たちは朝の早い時間しか回診できないとは思うのだが、過労死しませんように・・・。そして、医療現場にも働き方改革必要でしょ、と思った。

プチリハビリ開始

回診とは別に毎日、主治医の先生率いるチームの医師の誰かは問診に来てくれるので、状況をできるだけ細かく伝えるようにしていた。痛みの場所、痛みのレベル、どんな動きが可能かなど。また寝たきり状態がすでに3週間続いているため、便秘気味なのと、筋力低下が気になったので相談したところ、「ベッドの上でもできるストレッチをしましょう」とのことで翌日からリハビリ指導が入ることになった。

リハビリは術後にものという印象が強かったが、筋肉量を減らさないように術前からストレッチやトレーニングをすることも多いそうだ。そうすることで、術後の快復が早いとのこと。

リハビリ担当のK医師は20代後半の女性で、暇な時間の多い入院生活にとってはかなりリフレッシュできる存在だった。「筋肉とか神経の生前覚えるのが大好きなんですよ」などと笑顔でマニアックなことを語る彼女は私と相性がよく、些細な質問にもきっちり答えてくれて入院後半のハードリハビリも楽しく取り組めた。こういう巡り合わせは運なので私はラッキーだ。

腰が怪しいのでは!?

ベッドの上で上半身を起こさずにできるトレーニングというとかなり限定される。リハビリ用の重りを持ってゆっくり腕や手首を動かしたり、横向きの状態で足をお尻の方に引き上げたりなど。仰向けで足を素早く上下させる運動もしたが、そのとき寝ているのに眩暈のような変な感覚がした。

あ:「あれ?先生、この動きすると気持ち悪いです。頭痛が増す感じではないのですがクラクラするかも・・・」

K医師:「やめましょう!こうやって、いくつかの動きのパターンを試すなかで、髄液漏れてそうな場所わかるかもしれませんね。今のところ腰が怪しいです」

腰が怪しいとのことなので、腰を勢いよくねじるような運動は避けたほうがよさそうだ。

腰に纏わる反省点「歩く姿勢は重要!」

腰関連のことをもう一つ。頭痛を避けるため、長距離の移動はストレッチャーだったが、トイレまでの5メートルほどの移動は歩いていた。頭を下げた状態にすると痛みが緩和されるので、点滴のポールを杖のようにして、腰を90度曲げて、下を向いて歩いてトイレまで移動していたのだが、この姿勢は腰への負担という意味では最悪だ。当然、腰痛になった。ストレッチしたいところだが、前述のように腰はあまり捻らないほうがよさそうだ。

リハビリ医師からのアドバイスによれば、膝を延ばした状態の90度腰曲げは負担大だが、おばあちゃんのように膝も曲げると、少しクッションになって、負担が減る。時すでに遅しではあったが、一つ勉強になった。体は本当に正直で、姿勢は重要だと思い知らされた。

何はともあれ、来週はいよいよ脳槽シンチ(腰椎から薬剤を投入してそのその薬剤の流れを時間を追って撮影する検査)が待っている。おそらく漏出個所が特定できるはず。そうすれば、治療への道が開けるはず。こんな言い方は変だが、ちょっと検査が楽しみになった。

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【バックナンバー】
0)疾患についての概略
0-1 その頭痛、低髄液圧症候群ではないですか???
0-2 患者偏差値を上げる行動をする

1)発症から入院まで
1-1 発症 1回目の緊急搬送と誤診
1-2 迷走 原因不明の状態に苦しむ日々
1-3 脱出 迷走終了!入院決定!

2)入院中の出来事
2-1 入院開始 低随圧三大面倒な行動
2-2 検査結果① 低髄圧の勝利をつかむ
2-3 点滴と血管に纏わるお話

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