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B2B SaaSスタートアップで学んだこと

こんにちは。2019年6月末で、ワークスモバイルジャパンを退社することになりました。
新卒で入社して10年以上勤めた大手通信会社から初の転職で、スタートアップ(的な企業)に飛び込んでから3年2ヶ月。体感としては5年以上かなというくらい、密度の高い3年強でした。

この3年間の素晴らしい経験で得られたことやスタートアップの醍醐味を、感謝と共に記録に残しておきたく、記事を書きました。
これからスタートアップに挑戦する方、したい方の参考になれば幸いです。

1. はじめに:私が3年間やってきたことは、実はCXだけでもなかったという話

私は「カスタマーエクスペリエンス&アドボカシー」という立場で、 LINE WORKSのユーザーの声を可視化し、プロダクトの改善に行かしたり、ユーザーコミュニティを運営するなどの仕事を主にやってきました。
詳しくはこちらのnoteに書いたので、よければ読んでみて下さい。


・・・とはいえ、実を言うと、やってきたのはCX(カスタマーエクスペリエンス)をベースとしつつも、その時々の事業の成長に必要な、雑多にいうところの「マーケティング」っぽい範囲内のいろいろなこと、というのが事実だったりします。

なぜなら、会社の課題が日々変わっていき、やるべきことの優先順位も日々変わっていったから。ある程度成長が安定した状況であれば、自分の仕事の範囲内のことをやっていれば、それで昨日も今日も半年後も1年後も大丈夫なのかもしれない。が、生まれたての赤ちゃんに必要なケアは日数や月齢に応じて変わっていくのと同じように、始まったばかりのスタートアップでは、成長に応じて変わり続ける状況にキャッチアップして、その状況で必要なことをやらなければ、成長に貢献できないし、自分のバリューも出せない。

私はCXという名前の肩書きではあったものの、いっときはプロダクトのリリースマネジメントをやったり、プリセールス(営業同行するエンジニア)っぽいことをやったり、パートナー向けのマーケティング施策をやったり(キャンペーンとか)、コンシューマーっぽい広告施策をやったり(こんなのとかLINE公式アカウントとか)、PRをやったり、カンファレンスやセミナーを主催したりと、CX以外でもかなり幅広いジャンルで仕事をさせてもらいました。

なんでそんなに幅広かったのか?というと、スタートアップあるあるで、実際人がいなくてやらざるを得なかったという要素もかなり大きいのですが、もともと「マーケティング」「カスタマーエクスペリエンス」といった肩書き以上に、LINE WORKSというワクワクするプロダクトを広げることそのものに最大の関心があったので、事業の成長に関われる面白いことなら何でも良かったという自分のスタンスが大きいと思います。事業の成長に必要なことで、自分がバリューを出せるのであれば、それをやれば良いと思っていた。なんなら営業でもエンジニアでも事業開発でもアリかなーというスタンス。前の会社でエンジニアも経営企画も販売推進もやったことあったし。

わりといろんなものに自分で手をつけるのが好きなタイプなので、一種類の仕事だけをずっと続けるのは性に合わない。そんな性格だったので、CXの仕事をベースにしつつも、その時々で別の仕事をしたり、優先順位を変えられる仕事の仕方は合っていたと思う。

大企業に勤めていた時に「こんなことをやりたい」「会社にとってこれが必要だから、やらせてほしい」と言って提案したアイデアを、「これはあなたの仕事じゃない」「これをやるならAとBとCの部署と調整が必要」みたいな理由で却下されることにがっかりしていた自分にとって、「事業の成長に必要なら何をやってもOK」というスタートアップの環境は、好きに羽を伸ばせるすごく自由な場所だった。

後述する大きな変化の最中で、CXの仕事の優先順位を下げて、マーケティング施策の方を優先することを上司に許可を取って自らやっていた時期もある。
それが正しかったかどうかはなんとも言えないけれど、自分の役割にとらわれずに、事業の成長にとって必要なことを会社に提案して実行していく、ということができたのは、すごく大きな経験になった。

うまくいったものもあるけど、中には失敗したものもいくつもあるし、手をつけて広げたものの、最後までやりきれなかったものや、自分一人がやろうとして周りがついてこない状況になってしまったものもある。何せ人が足りないのが常態化しているので、いろんな部署を兼務した結果(最大で3つ)、自分が「何でも屋」になってしまっていることに対する焦りも強かった(周りからも何が私の仕事なのか分からない、と言われたりもした)。うまくいくものばかりじゃなかった結果、自分が何に向いていて、何が不得意で、本当にやりたいのが何なのかがすごく明確になった。次に進む決断をすることができたのも、これだけのことをやらせてもらったおかげだと思う。

2. ゲームチェンジの瞬間に立ち会えた

私が入社したのは、サービスがローンチして数ヶ月、社員数が20人以下という時期。サービスは無名、ユーザーはわずか。まさに0を1にしている最中。
その後仕組みを作ることで1を10にし、今は10を100にスケールさせるための別のフレームを取り入れようとしている。
この3つのフェーズを経験できたのは、スタートアップならではだったと思う。

これらのスタートアップのグロースフェーズを経験する中で、明確に「いま、グロースのステージが変わった」と思った瞬間が2つあった。

一つは、サービスのローンチから1年経って、サービス名が「WORKS MOBILE」から「LINE WORKS」になった日。
無名の1サービスだったものが、名前にLINEがつき、「LINEと繋がる唯一のビジネスチャット」としてLINE社と共同で発表を行った直後からSNS上でBuzzが始まった。ニュースがどんどんシェアされていくのにワクワクした。そして、その日を境に加入者数の単位が変わった。他のサービスには追随できないマーケットを獲得したと思った瞬間。

二つ目は、無料プランをローンチした日。
パートナー販売をメインとするB2B SaaSビジネスでフリーミアムを始めるというのは、実はかなり珍しい。既存のモデルとはまったく別の仕組みが必要になる。
フリーミアムの新しいプロダクトをコンセプトから議論し、マーケットとターゲットユーザーを決めて、マーケティング戦略を考えていくという、事業の立ち上げに密に関わることができたのはすごくラッキーだったと思う。

フリーミアムのマーケティングをやることになった時から、販売ではなく、マーケティングでコンシューマーに近いユーザーを獲得することが自分の仕事になった。
(前述の、CXの仕事の優先順位を下げていたのはこの辺の時期)

これまでB2Bしかやってこなかった人間が、B2Cのマーケティングをやることになるとは!予想しなかったことだけに、新しく始まるチャレンジにワクワクしたのを覚えている。
そして実際に、その日からフリーミアムのユーザー数は急激に増え、全く違う属性のユーザーが入ってくることになった。

市場に新しいものを投入することで、ゲームチェンジが行われ、見える景色がガラッと変わる。
その瞬間に立ち会えることこそ、スタートアップの醍醐味だと思う。

3. 同じ思いを持った仲間と出会えた

大企業からスタートアップに転職した私にとって、入社してまず思ったのは「めちゃくちゃ優秀な人が周りにいっぱいいる!」ということだった。
当日は外資の大手ITベンダーからの転職組の中堅クラスが多く、入社したその日からすぐ戦力になるような精鋭揃い。上司は外資の戦略コンサルを経験して外資大手ITの本社にもいたにも関わらず、あえてスタートアップに来たというすごい熱量の持ち主。
終身雇用が約束され、ややもするとルーティンだけを淡々とこなす社員もいたような職場から来た身としては、「やる気のある人しかいない」という状況はかなり刺激的だった。

最近は入社する方の出身や年代もだいぶバリエーションに富み、特に若手が増えてはいるけれど、やはり共通しているのはサービスやビジョンに共感を持って入ってくるという点。
収入や知名度ではなく、純粋にプロダクトが好きで、マーケットを広げていくことに興味がある人たちと、同じところを目指して話をしながら仕事をするのは、すごく楽しい。
そんな出会いの場を与えてもらったことに、感謝です。

4. 大好きなユーザーと一緒にサービスを創り、広げていくことができた

仲間と同じくらい大好きな、LINE WORKSを熱心に使ってくださるユーザーさん。
熱い想いを語ってくれ、LINE WORKSの話でいくらでも盛り上がれる。前回の記事でも書いたけれど、熱心なユーザーがたくさんいるということに、良い意味ですごく衝撃を受けた。
そんな素敵なユーザーと導入事例やコミュニティの場をきっかけに知り合い、一緒にマーケットを盛り上げて、新しいサービスを作っていくという経験ができたことは、私の大きな財産になった。

特に、初期からサービスを使ってくれて、良い意見も苦言も愛を持って率直に言ってくれる方々とは、同士のようなつながりになった。本当に不思議で、面白い。
ベンダーとユーザーの関係に留まらない、一緒に作っていく関係を築けるということは、CXという仕事を手探りでやっていく中で得られた大きな気づきと収穫だったと思う。

5. 最後に:感謝とこれからについて

大好きなLINE WORKSのプロダクトを広げていく仕事を、同じ熱意を持った素晴らしい仲間、理解のある素晴らしい上司、そして大好きなユーザーさんと一緒にやってこれたのは、本当に幸運なことでした。
お世話になった皆様、応援していただいた皆様、温かく見守ってくださった皆様、本当にありがとうございました。
かけがえのない3年でした。

CXを軸に、幅広い業務にチャレンジさせてもらった結果、私の中では、熱量のあるユーザーさん、特に業務を改善しようと頑張っている現場のリーダーを応援したいという気持ちがすごく強くなっています。ベンダーが主役ではなく、ユーザーを主役にしたマーケティングとしての「カスタマーマーケティング」をやっていきたいと思い、別の場所でチャレンジをさせてもらう予定です。

また次のワクワクを、今後お伝えできればと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

追記:上のような話を、たぶん、8/2のBigbeat Liveのセッションでお話しさせていただく予定です。もしよければ、ぜひアツい1日を一緒に過ごしましょう!


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