恋愛は誤作動
恋愛は誤作動だと思う。人間は「その人を好きになるのが正しい」という理由で恋愛をすることがない。
「この人を好きになってもなんにもいいことないし、誰も喜ばないし、誰も幸せにならない」と理屈ではわかっていても、それでもどうしようもない重力に引っ張られるように、坂を転げ落ちるように、頼んでもないのに、どんどん勝手にエスカレートしていく。
いろいろ考えてみても、どうしてその人だけが特別に見えるのか、はっきりとした理由がわからない。ものすごい美人だとか?年収一億円とか?IQ300とか?とくにそういうこともないんだけど、どうしてスイッチが入ってしまったんだろう。
その人はどう考えても、「好きなタイプは?」と聞かれたときに、自分が答える条件にひとつもあてはまってない。相手が自分を好きだ好きだと言っているわけでもない。自分がその人を好きになる意味がわからない。これはどう考えても誤作動だ。
やっかいなのは、そうやって思う相手も、タイミングも、自分ではまったくコントロールできないことだ。恋愛をすると、まるで気まぐれに高さを変える床のうえにいるように、勝手に上がったり下がったりさせられて、とにかくせわしない。しかもそれはまったく外因的なものなので、自分でコントロールをすることができないのだから。
好きだと気づいたその瞬間に世界はおもいっきりひっくり返り、もといた世界には戻れることは二度とない。かつてそこにあったはずの、静寂で平穏な、何も起こらない世界には。
どうしてこんな面倒な誤作動を好き好んでやりたいのか、よく意味がわからないなあ、と誤作動が起こるたびに思う。
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