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もらったもの

誰かにあうたびに、眼には見えないし、形もないものだけど、思い出というすごいものをもらっていると思う。思い出というのは手に抱えきれないくらい大きなもので、夏の大空にもくもくと立ち上がる入道雲くらい大きい。

思い出のいいところは、減らないし、どこにいったのかわからなくなったりしないところ。いつでも手の届くどこかに置いておいて、折に触れて、取り出して眺めることができる。アンティークショップにある、きれいな宝石が散りばめられた、よく手入れされた小さな腕時計みたいに。食器のコレクターが、よく磨いた皿を手にとって眺めるみたいに。Netflixにアクセスして、好きな番組を見るみたいに。牧場の牛がさっき食べた朝露の付いた草を反芻するみたいに。

でもそう遠くない将来、いつの日か、何もかもが、終わるときがくる。それでもこの棚の中にある思い出たちはびくともしない。ほこりがつかないようにぴかぴかにして、たまに取り出しては見つめるようにしようと思う。

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