日本の漫画から女子力を学ぶ

日本で言われる”女子力”とは、欧米で言われる”ガールパワー”と同じ言葉であるけれど、その言葉が持つ意味は正反対だ。ガールパワーのほうは「女性には生まれつき素晴らしい力が備わっていて、女の子は他人の助けがなくても強いんだよ」という意味だが、女子力は全く違う。

女子力といってぱっと思い浮かぶのは、「サラダが取り分けられる」とか「料理が上手」とか、「他人を立てる」「家事能力が高い」「非力」「長い巻き髪やスカートなど、男性ができないような”女性らしい”見た目を保っている」などなど。マスコミとか時代とかが勝手に作り上げた幻想における“恋愛市場”において、”より多くの人に求められる売り物”であり続けることが美徳とされるというなんとも独特なカルチャーだ。

本日、そんな”女子力”がハイパー高い漫画をTwitterで拝見した。高すぎて観測した瞬間にスカウターがパリンと割れて地面に落ちた。ベジータも仰天レベルである。そんなハイパー女子力漫画の作者はまるさん。フォロワー24万人、LINEアイコンも大好評でグッズが商品化される大人気のクリエイターさんだ。

登場するのは「彼くん」と「彼女ちゃん」。

彼女ちゃんの特徴は

・天然
・素直
・ちょっとドジっ子❤
・泣き虫
・幼児語を多用する
・彼くんのことが大好き❤ 

などなど。とりあえず、本編をご覧ください。

彼女ちゃんの他の特徴は...

・滑舌が悪い(フラペチーノをぺれぺちーのと言う)
・ものを知らない(スタバのトールを知らない)
・機械に弱い(昨年11月に買ったiPhone8の設定ができない)
・彼くんから返事が来た!と思ったら友達からで「てめーじゃねー!」と怒る
・彼くんから連絡が来ないと泣いちゃう
・おしゃべり。でも甘いものを食べている時だけは無口になっちゃう
・彼くんがトイレに行ったらトイレの入口でハンカチを持って待っている
・彼くんが仕事で疲れているだろうな...と先読みして、「今日靴下に穴あいてるんだ!」などの癒やしメールを送る
・ふりふりゼリーをもらったらずっとふりふりして飲まない
・缶コーンポタージュを飲んだらコーンが缶底に詰まって出てこないので彼くんに缶底を叩いてもらう
・彼くんに「にらめっこしよう」と持ちかけ、彼くんがまだ変顔してないのにキャッキャと笑う
・2人でお散歩にいくと、目についたものを追いかけていってはぐれ、彼くんに「もう、どうして黙ってどこか行っちゃうの!」と怒る
・あんまりお酒が飲めないのに、「ぷはー!」と真似をしたがる
and so on...

この漫画では、彼女ちゃんの友人も仕事もまったく出てこず、彼くんと一緒にいて幼児退行しているか、ひたすら連絡を待ちわびてずびずび泣いているところしか描かれない。電車の中で思いっきり彼氏に絡みついて寝ている女子を思い出した。なぜか女子は電車の中で彼氏に甘える傾向がある。

それはともかく、彼女ちゃんは単に彼くんに依存しているだけの女子に見えるのだが、彼女ちゃんにはメンヘラ要素が全くなく、むしろキラキラ系なのでなんとも言えないギャップを感じてしまう。

しかしそんなホンワカしたムードの中で異彩を放つのが、このエピソードだ。

この投稿にはさすがに「なぜ相談相手が男なのか」「彼くんに女がこうやって相談していても平気だったらこういう漫画を描いていいと思います」とファンからも若干厳しいコメントが付いていた。

「わざわざ気のある男に恋愛相談をしてわざわざ断る」ことを、「天然でかわいい女子」として描く。やっていることは完全に「オタサーの姫」で悪趣味とも取れる展開である。これをホンワカといい話的にまとめるというのはすごい才覚だと感銘を受けた。

わたしは「君の名は。」がわからなかった。「ララランド」もわからなかった。でもこれは、これまでに見た中で最もわからない。わたしは恋人に依存せず、生き生きと活動したり、引きこもったり、家から出る気力もなくて寝床でうなされたりしている女性が好きだ。彼氏から連絡が来ないといって泣く気持ちは痛いほどわかるけれど、そんな自分を「あまえんぼでカワイイ♡」とは思いたくない。他人にそう思われるのもまっぴらだ。

その人から連絡が来ないから、会えないから、悲しくて泣いて相手に当たってすがる。それは愛情が深すぎるからではない。単に相手に対する依存の度合いが深くて、むしろ自分の要求が満たされず、思い通りにならないことに駄々をこねて泣いているのである。それに酔いしれていては相手の負担が増えるばかりだ。もし泣いちゃうことがあったとしても、せめて自分の傷を自分で癒せるようになる努力は忘れない人間でいたい。わたしはそう思うのである。


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