趣味を見つけるのは難しい


イラスト:山本悠

イケメンのIさんはいつも忙しそうだ。いわゆる仕事人間である。むかしこういう名言を残していた。

これは高円寺の居酒屋でレモンサワーを飲みながらIさんが叫んだ言葉である。イケメンだって人間なんだからいろいろ大変だ。先日、そんなIさんがふと言った。

「僕、今年は趣味を作ろうと思うんですよ」

「趣味!趣味ってある人はすごいありますよね。釣りとかフットサルとか登山とか。ああいう人ってすごいですよね」

「そうなんですよねえ。僕、趣味っていう趣味がなくて。齋藤さんは趣味ありますか?」

「うーん...映画観賞とか...ゲームとか..料理とか....」

「料理もゲームも日常のことだし、映画だってみんな見てるじゃないですか」

「ウッ」

「ってそうなっちゃいますよねえ」

「なっちゃいますねえ」

「趣味ってどう作ればいいんですかね」

「映画鑑賞っていうと漠然としてるけど、わたしハリウッドの大作映画で3DCGを見るのが好きなんです!!CGで出来たお金がかかってる絵を見るとああ眼福じゃ...目が幸せ...!!って思うんです」

「たしかにそうやって限定すると趣味っぽくなってきますね」

「あんなにお金をかけた最先端の映像がたったの1800円で見られるなんてすごくないですか。毎回ものすごいアイデアが詰まってる。海外の雲の上にいるめちゃくちゃ頭いい人が寄ってたかって作ったものが日本にいながら電車に乗って見られるんですよ。シルク・ド・ソレイユなら1万円くらいするじゃないですか。こんなにコスパがいい話ないですよ」

「お金がたくさんかけられたものを見るのが幸せっていうのが僕はよくわからないんですが、だったら音楽ライブとか演劇とかでもいいんじゃないですか?」

「ライブとか演劇は公演数がすごく限られるじゃないですか。何月何日の何時にそこに行かなくちゃいけない。事前のチェックとチケット購入とスケジューリングの手間がもう面倒で無理なんです。美術はそれに比べるとまだマシですが、その場に行かなくちゃいけないからやっぱりハードルが高いし、いつの間にか終わってる。その点ハリウッドの大作映画だと大々的に宣伝されるから情報が目に入る確率も高いし、公開されたらいろんなところでやってるし、一ヶ月くらいはかかってるし、時間も1日何回も設定されてるので一回失敗してもまた次のチャンスがある。オススメです!!」

「なるほどー。僕はマーベルも全然見たことないんでハードルは高そうですね...前に奥さんに連れられて『ローガン』を観に行ったんですが、全然ダメでした。プロフェッサーXすら知らなかったから、わけがわからなかった」

「『ローガン』は「あんなにカッコよかったヒュー・ジャックマンがこんなに老いさらばえて...」って泣く映画だから、いきなり見たら『なんじゃこの救いのない映画は』ってなるじゃないですか」

「奥さんにまったく同じことを言われましたよ..でもやっぱり運動とかのほうが趣味っぽいですよね。僕、この前ボルダリングに行ったんですよ。でも全然ダメでした」

「ボルダリングって、身体が小さくて柔らかい人のためのスポーツですよ。Iさん真逆じゃないですか。長身で身体が硬いんだから相性最悪だと思います」

「その通りでした...」

「わたしも映画観賞とゲーム以外の趣味を今年は見つけようと思いますが、いざ見つけようとすると趣味って難しいですね...」

趣味というのは何の利益にもならないものだ。趣味をわざわざ見つけるのは難しい。仕事でもなく、誰に頼まれたのでもなく、自分が熱中することを見つける事ができる人は少ない。そうやって時間を忘れて打ち込めるものを見つけて、それを極限まで追い求める人だけが輝くことができる。オリンピックで活躍している人はそうやって見つけたものだけを脇目もふらずに追いかけてきた人たちなんだろう。

普通に生きてると忙しくてそんなことは忘れてしまって、だから定年後の趣味はそば打ちとかガーデニングとか盆栽とかのステレオタイプになってしまうのだ。

果たしてIさんとわたしに趣味が見つかる日は来るのだろうか?!皆さんはどうやって趣味を見つけているのでしょうか?!




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