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#2016年映画ベスト10

今年もありがとうございました!!ということで極私的2016年ベスト10です。

1.ペット

こんなに言っても誰も見てくれないけどそれでも私は推し続ける。もう褒めても誰も読んでくれないので昔のエントリをご参照ください。

2.マネー・ショート 華麗なる大逆転

リーマンショックを題材にした映画。監督のアラン・マッケイは、一貫してすさまじいバカ映画を描いてきた人。もともとサタデー・ナイト・ライブのライター、ディクレターをしていて、その後はウィル・フェレル出演のコメディ映画の監督で知られる。

彼の代表作はなんといっても映画『俺たちニュースキャスター』。バカしか出てこないコメディ映画だ。1970年代のアメリカを舞台に、トランプ大統領のマッチョイズムを10倍ぐらいに最悪にした徹底的な女性差別主義のバカ男たちがキャリアウーマンの女性と対決する。本当にバカしか出てこない、純粋なまでの大傑作バカ映画なので、未見の方は是非見てみてください。その後も「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」や「タラデガ・ナイト オーバルの狼」など、本当に頭のおかしい映画ばっかり撮っている人である。

それが今作でなんと、アカデミー賞作品賞レーストップ争いに躍り出たと聞いて、完全に耳を疑った。のだが、作品を見ると超納得。

この「マネー・ショート」は、2008年に発生した、未曾有の世界的金融危機と言われる「リーマンショック」を題材にしている。リーマンショックでは”サブプライム・ローン”が破綻し、アメリカではたくさんの人が家を失い、ヨーロッパに飛び火してギリシャという国家までが破綻した。一般的には悲劇として語られている事件だ。

しかしその原因は、あまりにもずさんなアメリカの金融の体制が産んだ、荒唐無稽なジョークとしか言えないようなものだった。この映画では、難しくて誰もが敬遠する金融用語をセクシーなグラビアモデルなどに説明させる。そうすれば、人が耳を傾けてくれるからだ。

誰もが富を求め、1ドルでも多く、他の人より手に入れたいと願って死に物狂いになっている。それでも、その実体はどこにある?富という実体のないものに執着するあまりに、みんな盲になっている。そんな状況を、アラン・マッケイは冷徹に描き出す。

ただお金を生み出すためだけに作られた、完全に詐欺のような制度、サブプライムローン。その実体に、たったひとりのある男が偶然に気がついた。そして実際に制度を利用している人を探しに行ってみたら、収入のない人はおろか、ペットの犬にまでローンをさせてしまうような制度だった。なぜこれに、今まで誰も気づかなかったんだ?

これは実際に起こった出来事だが、この世で正気を保っているのは、映画の主人公たちだけのように見える。わたしたちはわりと無邪気に世界のことを信用している。どこかで何かおかしいことが起こっていたら、きっと誰かが気がついて、直してくれているのだろう。でも本当はそうじゃない。

みんな資本主義に踊らされ、狂っている。わたしたちがいま生きている世界はいったい何なのか?みんなまともそうな顔をして、まともそうな事を言っているのに、完全によく出来たブラックジョークにしか思えない。バカな独裁者がバカなことを言ってバカなことが起こる。そんな、よくあるコメディ映画じゃないんだから。この映画が恐ろしいのは、これが本当に起こったことだということだ。

アラン・マッケイは、徹底して「バカバカしいこと」を描いてきた。実は「俺たちニュースキャスター」は、みんながいま見ているテレビのニュースはメディアが作りあげたものだと、本当の報道とは何なのかということを問いかけているし、「オーバル」にそういう問いかけがあるのかはちょっとわからないが、まあとにかくずっと「荒唐無稽なこと」を描いている。

それはその反対にある「正しいこと」をアランマッケイがその芯に持っているから、純度100%のバカバカしさというものを描く事ができるのだと思う。その芯は方向性は違えどマイケル・ムーアの芯にあるものに相似している。

「マネーショート」は、テーマは確かに金融だが、そこに描かれているのは純粋な「荒唐無稽なこと」だ。世界を疑え。お前が生きている世界は完全なブラックジョークだ。真実を見ろ、鍵はいつもどこかにある。騙されるな、そしてお前が出し抜け。そう言われているような気持ちになって、とにかく鑑賞後テンションがブチ上がる。おすすめです!!

3.ズートピア

こちらをご覧ください。

4.シンゴジラ

こちらをご覧ください。

5.ジャングルブック

「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブロー監督による、名作映画の実写リメイク。一応ヒットしたのに全く話題になっていなくてすごかった。この映画の何がすごいのかというと「主人公以外全部CG」ということで、これが実現してしまったらこれからこの世の中どうなっちゃうの?!と動揺しまくるエポックメイキングな作品だ。映画の最後に、「撮影地:ロサンゼルス」と出て来た瞬間、鳥肌が立つ。

壮大なインドのジャングル、完全にホンモノにしか見えない動物(英語を流暢にしゃべる)、この全てがCGだなんて。守ってくれる黒豹、楽しいともだちの熊、やさしい狼のお母さん、このみんなが誰も実在しないなんて。もしこの世界がもうひとつ存在しているなら、もうそっちでいいような気がする。

「ストーリーにひねりがない」とか批判されているみたいですが、このトリッキーな映像世界が、まったく破綻せずに1時間半ちょっとに収まっていることがもう奇跡だ。こんなものを見せて頂いて本当にありがたい。

本作のCG制作には、2億4,000万時間分のレンダリングが必要だった。仮にこの処理を1台のPCで行うと、数千年かかるという。

なにその壮大な話?!聖書かよ?!聖書だろ!!みんな「アバター」にはあんなに騒いでいたのに、どうして「ジャングル・ブック」は見ないんですか?!おかしくないですか?!とにかく見てください!

6.クリード チャンプを継ぐ男

2015年公開みたいなんですけど宇多丸さんが2016年ベストに入れていたので2016年ということでもいいでしょうか、、。

わたしは「ロッキー」を見たことがないし、スタローンにも興味がない。なので最初は完全にこの映画をスルーしていた。のですが、見たらもう号泣しかない。

これはあの有名な「ロッキー」の続編だ。ただしロッキーは2006年に『ザ・ファイナル』というのを作って終了宣言をしている。この映画を監督したのはライアン・クーグラーという、一本も長編映画を撮ったこともなかったド新人。クーグラー監督が第一作目の映画『フルートベール駅で』を撮ろうと映画関係者に会っている最中で、「ロッキーのライバルに隠し子がいた」という設定を思いついたのを映画関係者に話したところ、たまたまスタローン本人に話す機会があって、あれよあれよという間に実現してしまった企画なんだそうだ。

繰り返すがわたしはロッキーを見たことがないし思い入れもない。それでもこの『クリード』は、見る人を完全に『ロッキー』の作品のユニバースに取り込んで熱狂させる力がある作品だった。

『クリード』の主人公、ロッキーのライバルの息子であるアドニス・ジョンソンは、恵まれた境遇を捨ててボクシングの道に入る。そのために父のかつてのライバルであり、いまはレストラン経営者となったロッキーを訪ねて、ボクシングを教えてくれと請う。対戦相手に勝つために、ひたすら厳しいトレーニングを重ねるアドニス。

アドニスは、YouTubeで父の名試合を再生してはシャドウボクシングを重ねる。鑑賞者は完全に彼に同化し、熱狂し、この男に勝ってほしいと願う。そのフィクションの力!設定がどうとか、詳細な背景がどうとか、ディテールがどうとか文脈がどうとか、もうそんなものはどうでもいい。

このアドニスという男はいま、きっと、フィラデルフィアに実在していて、その男がいま、勝利のために血の滲むような努力をしている。がんばれ!!!!アドニス!!!!うおおおお!!

見た後に、アドニス、そしてロッキーという男が心の中に一人増え、居場所を作る。人は折に触れて彼らがいた場所に戻り、生きる力を得る。それこそがフィクションの力であると感じさせてくれた映画でした。おすすめです!!

7.エクスマキナ

やっとこ日本で公開されたAI映画『エクス・マキナ』。監督・脚本のアレックス・ガーランドさんは、なんと本作品が初監督。小説『ザ・ビーチ』や、『28日後…』の脚本を書いた人だそうだ。

初監督でこれ!いや〜すごいな〜。2045年に、機械が人間の知能を超える「シンギュラリティ」が来ると言われている。それを機械からのアプローチではなくて、人の心からのアプローチで描いたのがこの作品だ。

ロボットの開発者のネイサンは検索エンジンの開発者。全世界の携帯電話をハックして、通話やカメラから得た言葉や表情などの全データを使い、人間と同じように考え、感じ、コミュニケーションするAIロボット「エヴァ」を作り上げた。美しいロボットに心をかき乱された主人公は彼に聞く。

「どうしてロボットに性別を付けたんだ?灰色の箱でいいじゃないか」

ネイサンは答える。

「楽しいからだよ。性別を付けたのは楽しいからだ」

神が性別を作ったのも、楽しいからなんだろうと思う。性別も美醜も才能も、そういう違いがなかったらこの世界はどんなに楽ちんなんだろうかと思うけど、それはきっと「楽しくない」。AIの開発が面白いのは、神のように生命をデザインできるからだ。もし、できそこないの人間を修正することができて、より良い世界をデザインできるなら?君ならどうする?

それに対するネイサンのアプローチはかなり女性蔑視(かなり日本人蔑視でもあると思うんですがww)的だったのでなるほど...という感じでしたが、すでに全てのデータが検索エンジンに取り込まれているこの現代社会、「ありえそうな寓話」として良くできた映画でした。キューブリックが映画化したかった「A.I.」が、スピルバーグの時代まで映像技術の進化を待たなければならなかったように、この映画が実現したのはダブル・ネガティブによるCGによってのもの。北欧で撮影された映像含め眼福でした。

8.この世界の片隅に

いままで戦争のことは教科書で読むことで、実際にその時に生きていた人のことに寄り添って考えてみようとは思ったことがなかったなあ、というのを見て思った。

それが可能になったのは、このとんでもなく詳細なリサーチ(監督は海苔まで作ったらしい)によって生まれた作品のあたたかい眼差しによって。昭和19年に生きていた「すずさん」を想うことで、いままでこの地球上に生まれてきた全ての人よ、、ありがとう、、!という気持ちになれる映画。「この世界の片隅に、わたしを見つけてくれてありがとう」ってスゴイ言葉だなあ。2016年で一番すごい言葉。

9.ゴーストバスターズ

84年公開の大ヒット映画「ゴーストバスターズ」のリメイク。全員女性、しかもオタクな理系女子たちがNYでゴーストを倒すチームを結成するという大改編。わたしのなかでこんなに評価が高いのは、監督のポール・フェイグ、女優のクリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』チームだからである。

「ゴーストバスターズ」は楽しかった。大学を追い出された研究者たちのチームが、「この人すげー暇そうだけどなにしてんだろ..」みたいな地下鉄の職員を加えたチームでゴーストに立ち向かう。女子同士の軽妙な掛け合いも面白かったし...

唯一の男性は、「手伝い募集」で応募が来たアシスタントなんですが、このアシスタント、「顔と身体がいいから」という理由で雇ってみたら、、、

電話もロクに取れない、歴史に残りそうなものすごいバカだった。

なんだけどまあ、顔と身体がいいから雇い続けているという...。「バカなブロンド」の逆パターンで、面白かった。

1時間半、何も考えずに「アハハ」と笑ってみれる良い作品でした。

10.オデッセイ

読み返したら原作のことしか褒めてなかった..「ハイ&ロー ザ・ムービー」を見たら差し替えます。


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