六本木駅にて

今日、日比谷線の六本木駅で降りた時に、目の前を女の人が歩いていた。その人が目を引いたのは、ものすごいがに股だからだった。2つに分けたひっつめの髪に革ジャン。タイトスカートに網タイツに黒いブーツでわしわしと歩いている。そしてその足は、たくましく筋肉隆々だった。以前友人に、「あんたはいつもがにまたで歩いている」と言われたことがあるのを思い出し、「わたしもこんな感じで歩いているのかな...と思った。

そこで、ふと、その人が女性じゃなくて男性だということに気がついた。気づいたその時、わたしはコードを読み間違えていたことになんだか血の気が引く思いをした。わたしたちは普段、駅ですれ違う大量の人にも、目の端に入るだけの人にも、まるで人工知能のように「◯◯代の女性」「何人の何十代の男性」というようにラベルをぺたぺたと貼り付けている。そしてそこから外れると異形のレッテルをまた貼り付けて安心する。

そういえば最近休日になると、まちなかで女性の服装をした男性を良く見かけるようになった。ここ数年のことだと思う。以前はそうしたことが絶対に許されない雰囲気があって、みんな完全に女の姿に偽装していたが、最近「そういうのもありかも」みたいな空気があって、多少のほころびがあってもどんどん外出している気がする。多様性はいいことだ。みんなしたい服装をしたい時にしたいようにするのがいいのだ。誰にも文句を言われる筋合いはない。

今日のできごとで、わたしは自分が目の端に入ったものにすら瞬時にレッテルを貼り付けているのに落胆すると同時に、これからはそのレッテルをなるべく剥がして生きていきたいと思った。

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