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カンフー・パンダ 1、2、3

昨年の夏だったか秋だったか、休日にベッドから起き上がれないことがあった。風邪とか食中毒とか、そういう具体的な病気ではないのだけど、起き上がる気力がない。疲れがたまっていたのかもしれない。

立ち上がって動き回る気力がないだけで、意識ははっきりしている。そこでわたしはベッドに横たわり、布団をかぶってアマゾンプライムかなにかで「カンフー・パンダ」を観賞した。

主人公は、ものすごいカンフーオタクだけど、実践はからっきしダメな、怠け者の太っちょパンダ、ポー。ポーは父のラーメン屋で働いていたのだけど、何かの間違いで、この地を救う「龍の戦士」に選ばれてしまう。今まで血の滲むような努力をしてきた、大スターのカンフーマスターたちを差し置いて。そして、今までは知識でしか知らなかった、憧れのカンフーの世界に飛び込んだポーだが、ダルダルな身体に運動神経ゼロということで修行は難航を極め...

厳しい修行に音を上げ、「もうカンフーはやめてラーメン屋に戻る」とこぼすポー。そんなポーに亀のお師匠、ウーグウェイが言う。

「(カンフーを)辞めるとか辞めないとか...、ラーメン屋になるとか、ならないとか...お前が心配しているのは、過去に何だったのか、これから何になるのかということだけだ。こんな言葉がある。昨日という日は歴史で、明日という日のことはまったくわからない。今日というは日はギフト、贈り物である。だから今日のことをプレゼント(現在)と言うんだよ」


ウーグウェイ老師は亀だが禅マインドを持つマスター。

いいこと言うなあ。

って見てたら終わったので、


次は

カンフー・パンダ2を見た。

前作で開眼し、みごとに「龍の戦士」になったポー。

カンフーに恨みを持ち、火を吹く武器を使って、中国を制圧する野望に燃えるシェン大老(鳥)の悪巧みを止めるために旅に出たのだが..

生身と生身で戦うカンフーの世界に、火の武器を持ち込む悪いヤツ、シェン大老。ひどい!この卑怯者!!

しかしポーは、「インナー・ピース」、いくら周りが騒がしくても、自分のなかに静寂な空間を見つけることによって心を平和に保つ術を身に着け、シェン大老に立ち向かう...

がんばれポー!!

と、見ていたらまた終わった。


ので、

次は


カンフー・パンダ3を見た。

ネットフリックスだけの限定公開である。カンフー・パンダ、ビデオスルーどころかNetflix直行とは、、

3の悪役は、死んだカンフーマスターを操ることが出来る悪い奴、カイ。こいつが強いのなんの。

あ〜大変だな〜

と思っていたら、

見終わった。


ふと外を見ると、既に日が落ちている。

驚愕した。


貴重な休日が、

カンフー・パンダ 1、2、3で終了した


そんな休日を過ごしてしまうなんて?!


あなたは想像したことがありますか?!


いやない!!


かつて、ライターになる前は、スイッチとかポパイとかギンザに記事を書いているようなライターさんって、さぞかしおしゃれな生活を送っているんだろうなあ!!!と思っていた。


夜には業界人と連れ立って高い飲み屋に行って業界の話をしたり、休みの日には鎌倉のオープンエアのカフェで犬とか連れてブランチしたり、ミニシアターによくわからない国のマニアックな映画を見に行ったり、意識の高い仲間とホームパーティで知的な会話に花を咲かせたり、趣味のいい家具に囲まれたおしゃれな家に住んで、ゆとりのある暮らしをしているのだと思っていた。


それが現実は、無印良品の足つきマットレス(シングル)から起き上がれずにカンフー・パンダ1、2、3である。

もう完全に絶望した。


きっとおしゃれな人というのは、何をやっていてもおしゃれなのだ。

八百屋さんでも、道路工事の人でも、職業なんかに関係なく、何やってたっておしゃれな人はおしゃれなんである。

だが、おしゃれじゃない人は、何をやってもおしゃれじゃない。


どんなとこに行っても、何をやっても、おしゃれになることはできない。


そういえばウーグウェイ老師が言っていた。

「木になった桃をもぎ取って収穫するのはわたしにも出来る。だが桃の木にオレンジやリンゴの実が成ってほしいとどれだけ望んでも、桃の木に成るのは桃の実だけだ」


いや〜いいこと言うな〜


ということで、カンフーパンダ1、2、3をこなしてもまだ寝床から起き上がる気力がなかったわたしは、そのあと「ザ・ペンギンズ from マダガスカル」に「ヒックとドラゴン」、「ブルー」という3DCG映画を立て続けに鑑賞し、誰とも会話することなく、貴重な休日を終えたのであった。


いまだにこれ以上の休日を過ごしたことはない。





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