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パン・オ・ショコラという完璧な食べ物

わたしはパン・オ・ショコラが大好きだ。パン・オ・ショコラとは、クロワッサン生地のなかにプレーンなチョコレートが入ったもの。チョコレートには固形のタイプもあればクリームのタイプもあるが、だいたい固形が多い。南西フランスやカナダのケベック州ではショコラティーヌ(Chocolatine)と呼ばれるそうだ。フランスの朝食では、クロワッサンとパン・オ・ショコラがセットで置いてあって、いずれかを選んでオレンジジュースかコーヒーと一緒に食べる。

パン・オ・ショコラが素晴らしいのは、クロワッサンのバター風味豊かなサクサクの皮ともっちりした生地のなかにさらにビター目のチョコレートが入っているそのハーモニー。

先日ジョエル・ロブションのパン屋さんで買ったパン・オ・ショコラは完璧だった。見てくれこのふっくらとした姿!皮はパリパリで、口に入れるとぷんとバターの香りがする。噛みしめると拡がる小麦の味。黄金の麦畑が見えるようであった。そしてクロワッサンの中の層には、もっちり・しっとりした皮がミルフィーユのように隠れている。そのもっちりしたゾーンはお好み焼きの皮をぺったりと焼いた感じだなあといつも思うのだけど、ここがクロワッサンの心臓部。おいしいパンとそうでないパンはここで決まる。そして核心部のチョコレートはちょっとペースト状で、しっとりした皮と渾然となって、それはそれは素晴らしいハーモニーだった。これぞ僥倖!!

ところでわたしがパン・オ・ショコラに目覚めたきっかけは、もう何十年前も前に食べた山崎製パンの「ホワイトデニッシュショコラ」だった。山パンなのでバターや小麦の香りもサクサクももっちりも全部ないけれど、それでも折り重なるパン生地とチョコレートの組み合わせはわたしを驚かせるのに充分だった。こんなにおいしいものがあるなんて!そして時は過ぎ、わたしは黄金に輝くパン・オ・ショコラを気軽に食べられるようになったのである。ありがとう山パン。ありがとうジョエル・ロブション。ありがとうフランス。ありがとう日本。






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