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HiGH & LOW the Movieがどんなに素晴らしいか、何文字使えば伝わるのでしょうか

映画『HiGH & LOW the Movie 2/End of SKY』を見た。あまりに圧倒されてしまって、「すごい」以外の感想がない。『面白い』とか『よくできてる』とかそういう感想を越えた「すごかった」しか出てこない。人間はあまりにも新しい体験をしたときに、何の言葉も出ないのだという。まさしくそんな感じだった。

HiGH & LOWはコテコテのLDHコンテンツである。元EXILEのHIROが企画・プロデュースし、EXILE軍団が総出演。テレビドラマから映画、漫画、ライブステージまで展開する一大マルチメディアプロジェクト。昨年夏に第一作目となる映画版が公開され、続いて秋に「レッドレイン」が、そして公開されたのが今回の第三弾「End of SKY」である。

「ハイローがすごい」と、エグザイルのファン以外が騒ぎ出したのは昨年夏のことだった。8月に公開された「ザ・ムービー」はドラマを下敷きにして作られた初めての映画版だったのだが、登場人物百何十人みたいなドラマのいろんな方向をたった2時間に収めようとしたために、濃すぎ&バラエティに富みすぎの常軌を逸した映画になってしまった。それがかえって(正しい使い方)評判となり、エグザイルファン以外にも広く見られる映画になったのだ。ハマった人の例は金田淳子先生やライムスターの宇多丸さんとかである。

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キャラが濃すぎる!!覚えるだけでも大変

「ザ・ムービー」を見始めると、ジャンプに連載されてるヤンキー漫画の主人公みたいなのが何十人も出てくるのに圧倒される。「全員主役」というテーマらしいが、一つのチームで映画一本撮れてしまいそうなくらい濃い面々が次から次へ出てくるのだ。

「全生徒が平均5年留年する」というヤンキー高校....

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ハッピ着て車のボンネットに乗って喧嘩にやってくる人...

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濃すぎる...

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白づくめで喧嘩が強く、雇ってる「女の子を絶対守る」クラブ幹部たち...

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めっちゃ高そうなバイクに乗っている、やたらと顔がいい謎の三兄弟...

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バラエティ豊か、かつジャンプやマガジンで見たことのある気がする、既視感があるのにたまらなくフレッシュなキャラクターが登場し、「なんなんだろうこの人...」と考えている間に次の人が出てくる。ぜんぜん息をつく暇がない。

そんな濃い人が出てきて、「地元を守る」とか「死んだダチの敵」みたいな理由で殴り合ってたと思いきや、あれよあれよと何百人対何百人の喧嘩に発展していき、「えっなんだっけ」とあっけにとられているうちに勝手に映画が終わるというすごい作品なんである。

ハイローには、どこから突っ込んでいいのかわからないくらいほころびがたくさんある。だがそれは出来が悪いのではなくて、込められている熱量があまりにも高すぎて消化不良になるという、映画好きにとってすごく幸福な出来事だった。ハイローの常軌の逸し方は、すごく好感が持てる逸し方なのだ。エグザイルのことを何も知らず、誰がいるのかわからなくても、「この異常な映画、みんな本気で作ってるんだな」とスクリーンから感じることができる。

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人大杉

なぜこんなにハイローは高感度が高いのか。頭を抱えてわかりやすく苦悩するオッドアイの主人公、白ずくめの衣装を着たホストクラブの店長。こうしたキャラクターは、演じるメンバー自身が「このキャラクターならこうするだろう」と自ら考えて肉付けをしていくのだという。こんな厨二病的設定が、リア充の極みとオタクが白い眼で見てきたエグザイルの人たちが考えたことだなんて、なんて素敵なことなんだろう。沢山の人がマーベルを好きなのは、大人が真面目に「ビームは目から出るのか手から出るのか、出るとしたら何色でどれくらいの強さなのか」ということを考えて、本気で作っているからだ。

「ハイロー」が愛される理由も同じだ。日本で最もリア充な大人たちが、こんなに荒唐無稽なことを本気で考えて、本気で作り上げている。天下のエグザイルなんだから、お金だけがほしいのなら顔がいい男の人がかわいい女子と難病もののドラマをちょちょっとやるだけでいいんだろうに、こんなに何百人の殴り合いを撮らなくちゃいけないと考える、その思考回路がもうすごい。

彼らがフィクションの世界を心の底から信じて、自分の能力の全てを捧げているのがスチル写真1枚見るだけでわかる。そこに人は感動する。それこそがフィクションが存在する意味だと思う。私のように3次元に恵まれない人は現実に絶望するしかないが、この残酷な世界に生きる意味を見出すことができるのは、こういう素晴らしいことが起こり得る場合で、だからこそ救いを求めてスクリーンを見るために映画館に通う。

普段は憎まれ口を叩いているのに、いざピンチになったら助けてくれる仲間。無関心に見えて、本当は気遣ってくれている友達。強すぎる敵に、努力、友情、勝利の3点セットで立ち向かう世界――。

魅力的なキャラクターを考えるのは、人間に対する最大の賞賛である。素晴らしいキャラクターが存在することで、人間に対する希望が湧いてくる。ハイローに登場するキャラクターは、敵も味方も、誰もがやりすぎなくらいにフィクションくさくて、虚勢を張っていて、だからこそものすごく人間くさくて、ものすごくかっこいい。もしこういう世界を作り上げられるのだとしたら、本当に人類もまだ捨てたものではないと思う。


そして今回の「ザ・ムービー2」だ。「レッドレイン」は個人的な理由でちょっと除外させていただきますが、続編に傑作なしと言われるこのご時世で「ザ・ムービー2」は「ザ・ムービー」を完全に超えた奇跡の映画となった。ハイローの映像のクオリティが上がるなんて予想もしてなかったし、クオリティが上がる必要も全然ないのに、なんと、実質、上がっている。スローモーションなどを多用し、また美術が素晴らしいおかげで、映像がスタイリッシュになっているのである。スタイリッシュ!!そんな単語をハイローに使う日が来るなんて..

相変わらず「データを公開する」を「USBを公開する」と言っていたり、違う主人公による複数のクライマックスが同居しているので話のテンションがよくわからなくなったりするカオスぶりは健在。だが、作品の熱量では前作よりも上。最初のアルバムが一番良いと言われるが、ハイローに限っては、クオリティとテンションが前作よりも上がり、どこに出しても恥ずかしくない作品になった。こんなことがあるんでしょうか。まったく信じられない。

アクション好きにとっても、爆発好きにとっても、見たことが無い絵がたくさん出てくる。ここにある全てが、監督、鍛錬を欠かさなかった役者、全ての人の努力によって作られたものであるということに胸を打たれる。バトルシーンは2時間かけてワンカットの長回しとか、カーアクションは『西部警察』のベテランスタントマンがやっているとか、日本のエンターテインメントが築き上げてきたものが、いまここに集結しているのだ。

そして思うのが、「クールジャパンは実在した」ということだった。これまでに日本が生んできた、沢山のヒーロー。漫画にゲーム、ヤンキー映画にヤクザ映画。これまでに日本が作り上げてきたコンテンツがいまハイローという場所にまとまっている。机上の空論だと思っていたクールジャパンが、なんとここに実在していた。ああ、そうなのか。ここにあったのか。今までにたくさんの人達がエグザイルに支払ったお金を1円も無駄にしたくないという誠実な思いが画面から伝わってくるのも日本らしい。

まあそんな感じで、見ればその誠実な姿勢が伝わるけど見ないと全然わからないというのがハイローだ。『マッドマックス』は良かったなと思う。みんな面白いと口々に言って、それを聞いた人が素直に観に行って、素直に面白いと言ってくれた。ハイローも見てくれたら、きっとそうなるのに。でもみんな見てくれない。それが悲しい。

とりあえず気になる方は映画第一弾→いま公開されているザ・ムービー2の順番で見てみてください。



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