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ヴァンセンヌの森の鳥たち

パリには、大きな森が二つあります。パリを挟んで東側にあるのがヴァンセンヌ(Vincennes)、西側にあるのがブーローニュ(Boulogne)。この「森」というのが、同じ首都でも東京では想像つかない類の「本気の」森で、人の手が入り整備された、いつも誰かが散歩やジョギングしている、明るい憩いの場だけでなく、奥深くには、昼間でも一人では歩く気にならないような(実際にオススメしません)、鬱蒼としたエリアもあります。

ヴァンセンヌの森には日頃からよく散歩に行くのですが、今でも初めて森の中を歩いた時のことを思い出します。一番驚いたのは、パリに一番近い側にあるドームニル(Daumesnil)湖の中にある島に、鳥がたくさん放し飼いになっていること。特に、動物園でしか目にしたことのない孔雀を、手を伸ばせば触れる程の距離(実際に触れようとすると、上手に避けます)で見られることに感激しました。孔雀たちは時々羽根を広げて見せてくれるのですが、一羽だけアルビノの真っ白な雄がいて、この孔雀が羽根を広げると、その気高さに圧倒されてしまうのが不思議。他の孔雀も色とりどりでとても綺麗なのに、どこか物足りなく感じてしまう気がします。これは単に一羽という貴重さから来るものなのか、白い色の持つエネルギーなのか。

孔雀に限らず、白鳥やカナダ雁、色々な種類の鴨、バン、カモメ等はいつも島にいますし、サギや鵜も時々どこからか来ているのを見かけます。
この時期は鳥たちのヒナが孵るようで、毎年ヒナを見るのが楽しみの一つです。今年も白鳥、カナダ雁、バンのヒナが続々と生まれ、日ごとに大きくなっています。昨年は孔雀のヒナも見たけど、今年はどうだろう。鳥たちも基本つがいで子育てしているようで、仲睦まじい様子を見ると和みます。

水鳥以外で見かけるのは、ヨーロッパコマドリ(Rouge gorge:フランス語で"赤い喉"という意味の通り、喉のあたりが朱色です)が一番のお気に入りで、愛らしい外見に似合った高い声でさえずります。シジュウカラもよくいます。あとは外来種のインコがかなり繁殖していて、綺麗な黄緑色で見る分にはいいのですが、生態系への影響が心配されていると聞きました。

この湖のまわり以外で、森の中で見かけたことがあるのは、ヨーロッパアオゲラというキツツキの仲間や、ジェというカケスの仲間など。フクロウとカワセミも、1度きりですが見かけました。ちなみにカワセミを見かけた時は、夫婦で口喧嘩の真っ最中だったのですが(笑)、あまりにもレアだったので喧嘩中なのに二人してテンションが上がり、結果的にカワセミに取りなしてもらいました。忘れられない思い出です。

パリに住んでいる人でも、ヴァンセンヌは端っこなので、あまり来る機会がないかもしれません。でも鳥や動物が好きな人にはぜひ、ピクニックがてらにでも来てのんびりしてもらえたら。旅行でパリに滞在する人にも、時間が許せばぜひ。ここならではの、ごく自然に鳥たちと過ごせる空間を体験したら、日本での鳥や動物との距離感を見つめ直すきっかけにもなりそうな気がします。

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