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「あなたのステキ」を「この町の誰かのステキ」にした理由 ~「おしゃれのふじ園」裏話~


さて、わたしのFacebookページでは告知していました、2月24日開催の「おしゃれのふじ園」にいらしてくださった皆さま、いらっしゃることができなかったけれど、Facebookイベントページを見てくださった皆さま、ありがとうございました。

※おしゃれのふじ園 Facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/2089825674419616/

こちらの企画は、Facebookのイベントページをご覧になるとわかりますが、「あなたのステキが、この町の誰かのステキになる」をテーマにした〝委託型フリーマーケット〟であり、〝自主制作セレクトショップ〟です。

といっても、何が何だかわからないところもあると思いますので、とりあえずこのイベントができた背景や成り行きを説明しますね。

瀬戸内町には、「洋服を手に取って選ぶ」機会がほとんどない

(ミヤタトモコちゃんが描いてくれたFacebookイベントのトップページのイラスト)

・わたしが住む加計呂麻島がある、奄美大島南部、加計呂麻島、請島、与路島の4島にまたがる自治体、鹿児島県大島郡の瀬戸内町には、おしゃれな服を扱うセレクトショップなどがほぼない。

・町民は洋服やファッションアイテムは、ほぼ通販やネットショッピング、もしくは瀬戸内町から大体車で一時間ほどかかる奄美大島の繁華街、名瀬で購入している。

・ゆえに、中学生や高校生など、おしゃれに興味を持ち始めた子たちが、「洋服を手に取り」「ショップの店員さんにアドバイスをもらいながら」「自分で服を選ぶ」機会がほとんどない。

・しかし、瀬戸内町民は超過疎化・高齢化が進んでいる場所ながらも、おしゃれな方が多い。

・おしゃれ好きは大抵、「買ったはいいがいまいち似合わず着ていない服」「気に入ってはいたが気分が変わって着ない服」「勢いで買ったがサイズが合わなかった服」などを持っている。

ゆえに、出品者はクローゼットの整理をしつつ、「捨てるには忍びないがもう着ない服」を、〝この町の誰か〟に手渡し、

購入者は「いつもの自分の趣味や、通販ではなかなか選ばない服」を、実際に手に取り試着しながら〝ステキに〟着こなす方法を知りつつ、おしゃれとショッピングの楽しさを味わう。

というのが、この「おしゃれのふじ園」の目的であり、コンセプトでした。

「お茶の不二園」が「おしゃれのふじ園」に変わるまで

(こちらが、いつもの「お茶の不二園」のようす)

(こちらが、〝委託型フリーマーケット〟であり〝自主制作セレクトショップ〟である「おしゃれのふじ園」のようす)

このイベントの始まりは、瀬戸内町の奄美大島南部に位置する古仁屋(こにや)にある、「お茶の不二園」の店主・藤井愛一郎さんと、同じく瀬戸内町に住むシンガー・ミヤタトモコちゃんの世間話から始まりました。

「お茶の不二園」は、いつもはお茶やコーヒー豆の販売及び店内で喫茶を行うお店。普段は、洋服の取り扱いはありません。

トモコちゃん「瀬戸内町には、若い人が洋服を見て試着もできて買える場所がなかなかないよね」
藤井さん「じゃあ、うちの店でやってみる? 棚にあるお茶やお菓子を取り払えば、洋服並べられるよね。日曜なら定休日だし、いいんじゃない?」

そんな軽い話からスタートしたそうです。

そこで、トモコちゃんから「服をたくさん持っていそうだから」という理由で私に声がかかりまして。

ちょうど、年末で大掃除がてらクローゼットの整理をしていた私は、「いいね、ぜひ!」とすぐ話に乗りました。

自宅でのフリーマーケットで、まずはリサーチから

(「おしゃれのふじ園」がまだ企画段階の頃に自宅で行ったフリーマーケット。海を渡り来てくれた方もいれば、車で40分かけて訪れてくれた方もいました)

そこから、まず、需要があるのかどうかを知るために、わたしはまず自宅でフリーマーケットを開催。
さまざまな方がいらしてくれて、「こういうの、またやりたい!」という声があることを確認しました。
そこから、古仁屋のちゃんこ居酒屋 神鷹の娘さん、アコさんが、前にちょくちょく行っていた「不定期開催☆神鷹フリマ」を再び行うことに。ならば、その日に合わせて「おしゃれのふじ園」も行って、いっそのこと〝瀬戸内ファッションウィークエンド〟として両日盛り上がればいいじゃないか、という話になりました。

日にちが決まったら、まず、出品者を募集しました。
通常のフリーマーケットですと、出品する方は一日、お店にいなければいけません。しかし、そうなると、その日が仕事の方や、子育てや介護などで一日拘束されるのが難しい方は、なかなか出品のハードルが上がります。
しかし、〝委託型フリマ〟なら、商品を持ってきてくだされば、その場にいなくても出品可能なのです。

全て持ち寄りで作られていく〝自主制作セレクトショップ〟

また、「おしゃれ」なものが買える場所、「おしゃれ」について話せる場所が少ない瀬戸内町でやるからこそ、〝自主制作セレクトショップ〟である意味にもこだわりました。

ただ服を置くだけではなく、いつもは「お茶屋さん」の「お茶の不二園」を「セレクトショップ」に変身させるために、ラックや姿見、トルソーやハンガーなど備品も皆さまからお借りし、募集し、持ち寄り、お店のしつらえを整えていきました。

(アクセサリーや小物類のディスプレイ。サングラスが乗っているのは、「もういらないから」と頂いたガラスと木でできた標本箱です)

(春らしい華やかな気分になりたかったので、桜の柄のトップス、ピンクのロングスカート、白い貝殻のようなニット、クジャクのような柄の服やレインボーカラーのサンダル、ピンクのサンダルを集めてディスプレイ)

これは、洋服を買うということは、ただその品物を手に入れるということだけではなく、

「ステキな空間に行き、好きな服を探し、選び、人にアドバイスをもらい、試着をしてみて、店員やプロフェッショナルに着こなしのコツを教えてもらい、その空間にいることと、人びととのコミュニケーションを楽しむ」

ものだという考えが、この「おしゃれのふじ園」スタッフ一同の中にあったからです。

中学生のころのフリーマーケットの想い出

わたしが、自分で選んで服を買うようになったのは中学生のころ。

当時は70年代の古着のリバイバルブームで、その頃、わたしが住んでいた東京都世田谷区では、砧公園や世田谷総合運動場などでフリーマーケットがよく開催されていました。
70年代当時にベルボトムやマキシスカート、プラットフォームのブーツで街を闊歩していただろうお姉さま方が出品している品物は、当時のわたしにとって、とても魅惑的。お姉さま方は「もう着ないから持って行って!」と1着100円などの破格で品物を売ってくれます。その価格なら、中学生のおこづかいでも買うことができました。

そうこうしているうちに、気に入って購入したけれど、着ない服が出てきます。
そこで、当時のわたしは自分もフリーマーケットに出品を始めることにしました。

すると、時に一日で五万円以上の売り上げも出るほど、服が売れたのです。

金銭的にももちろん助かるし嬉しかったのですが、「自分がかわいい、ステキだと思った品が」「人にもかわいい、ステキだと思ってもらえる」ことに、当時の私は、やりがいと楽しさ、喜びを見出しました。

その楽しさと喜びに味を占めて毎週のように出店をしていると、いつも出店をしているほかのお店の方とご縁ができていきました。

服飾の専門学校に通うおしゃれなお姉さんや、古着屋を経営しているステキなお兄さん。
フリーマーケットに出店中、トイレに行きたくなったときに店番をしてくれたり、屋台でお昼ご飯を買うときに一緒に買ってきてくれたりした彼女や彼と、わたしは次第に仲良くなりました。

服飾の専門学校に通うお姉さんたちとはそのうち、自宅にまで遊びに行かせてもらうような仲に。服だけじゃなく、ご自宅のインテリアもステキで、服飾の専門学校についての話をいろいろ教えてもらいました。

古着屋のお兄さんとは、フリーマーケットからのご縁でお店に遊びに行かせてもらうようになりました。古着屋の中には、バーカウンターとレコードラック、DJブースがありました。
私はそのお店で、人生で初めての辛口のジンジャーエールをご馳走になりながら、お兄さんの好きな音楽や映画の話をたくさん聞いて、進路の相談にも乗ってもらいました。

そんな風に、「おしゃれをしたい」という気持ちは、さまざまな大人と出会い、そして、さまざまなカルチャーに触れることにもつながると、わたしは自身の経験から思うのです。

ところが、瀬戸内町には、その機会があまりありません。

ですが、ミヤタトモコちゃんからの誘いのひと言で、

「あ、自分たちでこの機会を作れるのでは?」

と思ったのです。

(あちこちの「この町の誰か」から集まったファッションアイテム。右上のベージュのハットはステキだったので私が購入しました)

「あなたのステキが、この町の誰かのステキになる」ということは?

「あなたのステキが、この町の誰かのステキになる」

「おしゃれのふじ園」のキャッチコピーは、ミヤタトモコちゃんが考えたもの。

すばらしいキャッチコピーで、このコピーを見た時、私は「トモちゃん、才能、歌以外にもありまくり」と思ったものです。ちなみに、トップ画像の絵もミヤタトモコちゃんが描いたもの。「お茶の不二園」の雰囲気と、「おしゃれのふじ園」が目指すイメージがダイレクトに伝わる絵で、「トモちゃん、絵も描けるのか!」と彼女の縦横無尽さに驚嘆しました。

当日は、オープンの午前十時と同時に人が詰めかけ、クローズの午後四時を過ぎても「まだやってる?」とお声がかかるほど盛況でした。

一日に二回も訪れてくれるお子さま連れのお母さまや中学生たちがいらっしゃいました。

そして、ALT(外国語指導助手)として瀬戸内町に住み、サウンドデザイナーとしても活動するチャックのDJタイムには、音楽好きの人びとがやってきました。

お歳を召した女性が若い世代が出品した服を買い、中学生が30代のわたしの服を買い、細身の体型でなかなか服が見つからないという親子が、スリム過ぎてものはステキだけど誰も着ることができない服を着て、「なかなかサイズが合う服がないから嬉しい!」と喜んでいたり。

また、中学生同士で訪れてくれた女の子たちが、試着室で「これかわいい!」「似合う!」と盛り上がっては、「でも、着こなせるかな」と悩んだりして。

そうしたら、わたしは「こういうトップスは片方だけ結んで縦のライン作ったり、横か前だけボトムに入れるとかっこよく見えるよ」などアドバイスしたり。

むかし、自分が、ステキなお姉さんやお兄さんにしてもらったことを、

今、自分が中学生たちにできたことがとてもうれしかった。

そう、それもきっと

「あなたのステキが、この町の誰かのステキになる」

ということなのです。

(今年の流行、エクリュカラーでまとめたディスプレイ。イベント終了後、Facebookイベントページでお褒めの言葉をいただきました)

遠くても、

田舎でも、

大きなスーパーやファッションビルがなくても、

高級ブランドショップがなくても、

「あなたのステキ」も「わたしのステキ」もここにはあり、

その「ステキ」を手に取ることも、手渡すことも、

受け取ることもできるのだ、と思いました。

2月24日開催の「おしゃれのふじ園」では合計300点以上の出品で、約3割の100点が「この町の誰か」のもとへ行きました。

また、「あなたのステキ」を「誰かのステキ」に交換しに、「おしゃれの○○」をどこかで開催できたらいいな、と思っています。

うちでどう?

とか、

一緒にやろうよ!

と言って下さる方、随時募集中です。

ちなみに、この企画、出店料は「お茶の不二園」で使用できる400円ドリンクチケットつきの500円で、運営費は100円、出店者は21人でした。

(ひとつひとつ手作業でトモコちゃんが切ってくれたお茶券)

出店者の皆さまは、お手すきの時にいろいろとお手伝いをしてくださり、また、「次やるならもっと手伝うから、声をかけて!」など言って下さいました。皆さま、本当にご協力をありがとうございました。

「次にやるなら、ぜひ行きたい」「もっといろんな人に知ってほしいから宣伝してほしい」というお声もいただきました。

もし、次回も開催するなら、チラシを作ったり、もっと空間づくりにこだわったりができたら、と思います。

ということで、こちらのnoteを投げ銭システムにしておきます。

共感してくださった方、この企画を面白く感じてくださった方がいらしたら、よろしければ、ぜひ投げ銭を。

頂いたお金は、関わったスタッフ陣と今後につながるような何らかの形で、使わせていただきます。

瀬戸内おしゃれ倶楽部 「おしゃれのふじ園」実行委員会

三谷晶子

※noteの会員でないけれど、投げ銭・サポートをしたいという声があったので、こちらの記事に¥500の値段をつけました。文章は、上記ですべて公開してあります。noteの会員でない方でも、下記の「ノートを購入する」ボタンからクレジットカードでの投げ銭が可能です。皆さまから、ご協力をいただければ幸いです。

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作家/『ILAND identity』プロデューサー。2013年より奄美群島・加計呂麻島に在住。著書に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。Web小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。