それは突然のことだった。今年の初めにふと鏡を見ると左の前頭部に円形脱毛症ができていた。

ちょうどその頃、仕事で悩みを抱えていたからストレスが原因に違いないと思った。

でも、「円形脱毛症 原因」で検索すると、実は原因はよくわかっていなくて、遺伝的なものと書いてあったりする。

さらには円形脱毛症は悪化するとすべての髪が抜けたり、眉毛やまつげまで抜けることもあると書いてある。
恐ろしすぎる。それ以上直視できなくて、しばらく蓋をすることにした。
右から左に髪を流す鬼太郎ヘアにすると患部は完全に隠され、自分でも忘れるのだ。

でもある時、お友達の美容師さんに話したら早めに皮膚科を受診した方がいいと本気で勧めてくれた。

お友達のあと押しは偉大だ。それからすぐに皮膚科を予約した。

病院に行くと、先生は患部を見るなり、あーこれはかなりいっちゃったねーー髪の突然死ですねーー窒素当てますーと言うやいなや、びゃーーっと冷たい窒素スプレーを頭皮に当て始めた。

冷たくて痛くて悲しくてイたたたたたタタタと言ってみたって先生は止める様子がない。

すごく長く感じたけどもしかしたら5秒くらいだったのかもしれない。

痛みの訴えには無反応な先生は、飲み薬と塗り薬を処方してくれて、第一回目の診療はすぐに終わった。

あまりの衝撃で、その後会う人には円形脱毛症の治療の話をしてまわった。

するといろいろな反応があった。

男性のとは違うから大丈夫よ！そのうち生えてくるわ！元気出して！と笑いをこらえながら励ましてくれる方。

私はね、最近ストレスで心臓が痛いの、、と心身の負担を共有してくれる方。

それから色々話しこんでしまって10年くらいの親友みたいな雰囲気になった。週に一度スポーツクラブで会う仲だけど。

円形脱毛症をカミングアウトするとそのビジュアルの衝撃から、人の心を丸裸にするのかもしれない。

桜の開花とともに、患部にはささやかな産毛が芽生えてきた。