秋田真維

日々の雑感のまとめ。(旅行、観劇、ニュース、自分の活動などなど)

朝顔の結実

色とりどりの朝顔が咲き乱れる庭。朝露に濡れた花弁(かべん)は、しっとりと鮮やかに、その色を際立たせる。青はさらに海のように深く、紫は夕暮れ時のより妖しく。夜が明ける前に密やかに咲き、日が昇りきるまでにはしぼむ花。美しく咲き誇る様を知るは、暁(あかつき)の住人のみ。
 見なければ、その美しさを知らなければ、その美しさはこの世に存在しないのと同じだったのに。まだ男女の隔(へだ)ても辛うじて曖昧(あいま

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花が散って染まるのは

トントン、ざばあ、ぽたたた、ぴちゃん。様々な水の音たち。ところどころ立ち上る湯気。染殿は水と植物たちの音や匂いで満ち溢れている。美しく色鮮やかな花も、硬い木の皮も、皆すべて何かの色を身に宿している。まさかそうとは思わないような色が、滲みでることの面白さ、興味深さ。織りなす色が幾重にも重なる美しさ。彩りはそこかしこに潜む。
「あなたはまるで橘の花の香りのようだ。」
あの人は私にそうおっしゃった。
 

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藤のうたたね

第一夜

もうそろそろ桜が咲こうかというのに、降り止まない春雨。それを横になって眺め続けていると、まるで冬が別れを惜しんで泣いているようだと思えてくる。
思えば、今も昔も泣いていることが多い私だった。
 「母上、気を強くお持ちください。先の帝であった父上を亡くしてから数年、母上まで私を置いて行かれるのですか…」
「四の宮、貴方のことを思うとこの世にいつまでも留まりたいように思い、心残りで気がかりに

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桐花の蕾

「桐花の蕾」
               

 幼い頃、どこかの山で見かけた薄紫色の花。
蛍袋より、少し細長い釣り鐘状の花が、鈴蘭のように樹の枝に連なって咲いていた。きっとあの花は桐の花だった。今この庭に咲いている花と同じ、薄紫の桐の花。
私の入内(じゅだい)が決まったのは、父の死から五年、裳着(もぎ)を終え成人してからは、三年が経とうとしているころだった。
私が産まれた時から父は
「この子にぜ

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