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『探偵はBARにいる』を観た

2023/12/06(水)

『探偵はBARにいる』を観た。
 すすきのに新しい映画館ができて、オープン記念のリバイバル上映ということだと思う。名画座(っていうのかな、今も)ではない。TOHOシネマズなので、今の目玉は『ゴジラー1.0』だ。本当はゴジラを観るべきだろぉ、クリエイターの端くれなら最新の話題作をさぁ、と右耳で黒い天使が囁いてきたが、すすきののシネコンですすきのが舞台の傑作映画を掛ける支配人の心意気を汲むことこそクリエイターの役目ではありませんか、と左耳で白い悪魔が囁いてきて、そっちに決めました。
 70席ほどの劇場で観客は私ともうひとりだけだった。ほぼ貸し切り。
 前の日記で「同じ映画を2回以上観ることはめったにない」と書いたけど『探偵はBARにいる』は封切り時に映画館で、買ったDVDで、地上波のテレビ放送で、アマプラで……少なくとも4回は観ている。もっとかもしれない。今回でプラス1。なんでだろうなぁ。
 地元が舞台のアクション映画であること。札幌のダークサイド……歓楽街の猥雑さ、渦巻く暴力、現在は見えにくいけど確かに北海道に横たわる貧困と差別の歴史……などなどが巧みに織り込まれていること。主演の大泉洋と松田龍平の魅力。
 少なくとも私の友人・知人や、このnoteを読んでくれている人の中で、松田龍平演じる高田が好きじゃない人が存在するだろうか。マイペースで天然だけど、北大の農学部に籍を置く研究者で、空手の達人で、何だかんだで大泉洋をたったひとりの親友だと思っていてわがままにつきあってあげる松田龍平が好きじゃない人、いますか???
 随所にズシンとした手応えがありつつ、全体的には軽快なエンタテイメントであることも大きい。素晴らしい映画だけど再び観る気合いが湧いてこない場合もあるもんね。長大だったり、重厚だったり、陰惨だったり。
 推定5回めともなると、内容は全部わかっている……と思いきや、大スクリーンで、酒も飲まず、スマホの電源も切って観ていたせいか、新しく感銘を受けたところや、登場人物の感情がどう交差しているのか、ますます腑に落ちたところがいくつもあった。
 私は原作の東直己さんの小説も好きで、この映画も好きなんだけど、原作ファンが全員絶賛しているかというと、実は少数だけど否定派がいる。
 探偵と高田のルックスが全然違うので。
 大泉さんや松田くんみたいなシュッとした感じではなく、ふたりとも100キロ近い巨漢で、探偵は常にストライプのスーツを着ている。原作の描写だと「サンドイッチマン」が実にイメージが近い。このバージョンも観てみたい。NHKあたりでテレビドラマ化されないだろうか。

伊達さんが探偵、富澤さんが高田

『探偵はBARにいる』は『3』まである。
 個人的には、ハードボイルドとしてのの魅力は『1』がもっとも高く、社会的なテーマと複雑なプロットが見事に整理されたエンタテイメントとして、普通にいちばん派手で面白いのは『2』。ストーリーに連続性はないので『2』だけ観ても大丈夫です。もちろん『3』も十分に面白く、ヒロインの北川景子は凜々しく美しく、クール狂犬キャラの志尊淳が好きじゃない人はいますか??? という感じなんだけど……
 映画って『1』の要素をパワーアップして『2』が生まれ、そこから同じ手法で『2』を超える『3』を生むのは難しいので、監督が替わったり、ムードが一新されたりしませんか? 『BTTR』も『エイリアン』も『ターミネーター』も『3』は少し雰囲気が違うような気がする。『探偵』も。
 私の最初のお薦めは『1』か『2』です。
 たぶん定期的にアマプラだのネトフリだのに入ると思うので、その機会があったらぜひ観てみてください。

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 大満足で劇場を出て、スマホの電源を入れたら、チバユウスケが亡くなったという報せがあった。
 すぐに映画の感想を書く気になれなくて、1日経ってからこうして書いています。

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