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わからないけど面白い

2023/07/22

 昨夜、生まれて初めて観た『もののけ姫』は大変面白かった。
 描写と行動でぐんぐんと進んでいく圧倒的な時代ファンタジー。少し『君たちはどう生きるか』っぽかった。逆だ、逆。
 1997年の作品。26年前ですって。
 この年は確か『エヴァンゲリオン』ブームの頂点だったはずで、『エヴァ』の映画と『もののけ姫』を同時期にいちどに観た人は脳を灼かれて、その後の「癖(ヘキ)」が決定したのではないか。

 私の「そういう年」は2005年~2006年で、この期間に、古川日出男『ベルカ、吠えないのか』が直木賞候補になった。桜庭一樹が『少女には向かない職業』を発表して大きく注目された。谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』のアニメが大ヒットした。
 古川先生、桜庭先生、谷川先生には、SFマインドというか、マジックリアリズムというか、「よくわからないことが書かれ、あまりわからないまま終わっていき、それが圧倒的に面白い」という感覚を教わった。
 わからないけど面白い。わからないから面白い。
 この時期に物語の受け取り方の幅が自分なりに広がったと思う。

 ゼロ年代中期。
 小説の中で、いま、ライトノベルというジャンルがすごく面白いという雰囲気が高まっていた、あの感じ。

 その中で、私は特に当てもなくぽちぽちと小説を書き、個人運営の創作サイトに参加して、その仲間内で習作を見せ合っていた。
「小説家になろう」はすでに存在したけど、サイト名の通り、作家志望者が創作作法や投稿のマナーを掲示板で教え合うのがメインのコンテンツで、まだ、今のようなプロ作家の登竜門という感じではなかったと思う。
 そのころから書くのは遅かったですね。
 もっと筆が早い人、そして私より才能がきらめいている人が、ごく小さなコミュニティに何人もいた。
 自分には実力があるのに認められないとか、文学賞がもらえないとか、そういう悩みとはあまり縁がなく来られたのは、この頃にはやばやと「あ、私は天才ではないな」と悟らされたからだろう。
 そこで「やめよう」と思わなかったのはなぜなのか。
 よくわからない。

 わからないまま今に至り、誕生日を迎えた。

 今年は終日用事があって、誕生日らしいことは何もできなかったけど、Twitterでたくさんの人がお祝いのいいねやリプライをくれた。

 ふだん交流がない人も多かった。嬉しかった。
 いいものですよね、他人のめでたい日って。

 外で飲んでいると、不意に店内が暗くなり、バースデーソングが流れて、店員さんが花火を立てたケーキを誕生日の人がいる席に持っていく……そんなサプライズ演出に出くわすことがある。
 だいたい私は手拍子や拍手に加わる。
 いや……迷惑ではないと思う……直接からみに行ったりはしないし……知らない人からのいいねくらいの感じですよ、リプライまではいかない……少し変わった人と思われるかもだけど、まぁお酒の席だし……ダメですかね……書いていて不安になってきた……

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