報告書

私が株式会社イグジィットを解散するわけ の続き

赤字といっても、いろいろあるけれど

1991年3月に設立だから26期が終わって、解散時は27期。うち黒字は21期だから、ぜんぜん恥ずかしくない。ほとんどの会社は数期しか続かない。

25期の決算作業をしているときに、税理士事務所でそろそろ会社を終わりにしようと思ってるんです、という話をした。

税理士事務所だから内実はバレバレだ。ところが、辞めない方がいいと言われる。

辞める必要ないじゃないか。会社を終わりにするといっても、いろいろある。解散だって、にっちもさっちも行かなくなった会社がやるもんだ。解散しようとしても、ほとんどが解散するお金がないとなって、大変なことになる。無借金なんだから、解散する必要がないと。

いや、無借金というのは正確じゃない。代表取締役から、貸し付けはある。つまり私がお金を会社に貸していると。大した金額じゃないけど、タコが自分の脚を食べながら生存してるのとおんなじ状態だ。

にっちもさっちも行かないわけじゃないけど、そうならないうちに解消しないと。それに今の業務で、今のやり方で黒字になるはずがない。

なにより市場性だし、それにね、私の性格では無理です。

とっとと終わらせなきゃ。


フェードアウトするための方法を模索

すぐに終わらせるわけにはいかないから、社員が辞めてしまうまで。クライアントの担当者や直接的に関わる人たちにはフェードアウトすること告げて。

社員、最後のウェブのデザイナーには辞めてくれと言ったわけじゃなく、7時には退社するスケジュールをキープしながら、ウェブ以外の仕事を全部私がするようにした。

彼が退社してからは私がウェブの更新もしたし、新規のクライアントの仕事も取るようにしたけど、3ヵ月しか契約しないというやり方にした。

何かというとSNSの運用で、それまで3ヵ月のオーガニックリーチやインプレッションを、引き受けた3ヵ月で倍にしますというもの。元が低ければ、倍にするのは簡単。でも倍以上にしたアカウントを、4ヵ月以降も倍々にするのは困難だ。

きっとフルでコンテンツマーケティングからやっても、べったり貼り付いて本気でやらなきゃ無理だろう。いや、どっちにしろ倍々の継続は不可能だ(笑)


私のスタイル、というより性格

29歳ぐらいのときに思った。当時は勤めていて、私の下には社員・契約社員・アルバイトと30人ぐらいがいた。

ひとりと打ち合わせなどで10分話すと、全員で300分。それでも、ほとんどの人は構われていない、ちゃんと対応していないと思われてただろう。さらに偉い方々や他部署との会議が、最低でも2時間はある。1日のほとんどが、そんなことで終わる。

そんなんでいいの? 自分で作ったりするより、打ち合わせとか指示ばっかりで、管理職として出世したいの? ないわ。それは、ない。

だからクリエイティブの会社を作った。

まあまあ、ずっと順調。20期を過ぎるあたりまでは。メインでやっていたのは聞けば誰でも知ってる、世界的なブランドとか一部上場の企業とか。

たとえば1社は20年以上やらせていただいた。グラフィックの広告販促物を丸ごと、ウェブサイトは立ち上げから、ずっと。契約もないのに、うち1社で独占で20年近く。

これってうちが優秀だったから、効果があるのとかカッコイイのをバンバン作ってたから、と思いたいけど、あんまりそうでもない。というか、そこじゃない。


社名・ブランド名は残っても、誰も残っていない

20年以上やっていると、担当者はもちろん、関係した人たちは全員いなくなっている。社長だって役員だって、みんないなくなった。資本は3回以上、ごそっと変わったと思う。グローバルブランドって、そうなんです。

人や資本が変わると、まずコンペがある。コンペがあっても、うちが残って来た。どうしてか。それは、私が何でも知っているから。

担当者が変わるときだって、まもともな引き継ぎはない。だからうちに依存して来るんです。資本が変わるときなら、なおさら。

私の性格は、カッコイイでしょキレイでしょ面白いでしょうとか言いながら仕事をしても、売れなかったとか効果がなかったなんてことになったら、やっててもしょうがない。仕事してられないと思う。

だからクライアントの商品やサービスを、社員の人以上に知って、競合他社の状況も調べて、クリエイティブ以前にマーケティング的にどうかと考える。だからその会社のスタッフみたいな存在で、しかもクリエイティブもいいじゃん、効果あるじゃんという風にありたいと。

だけど、そんなことをしてたって意味がない。という状況になってきた。日本中で起こってることだと思うけど、担当者が退社しましたってレベルじゃないことが、どんどん起こる。

資本が変わるというのは、ようするに儲かるから。投資して、それ以上のリターンを期待できるから。そのために社内の人も、さまざまな仕組みも激変させる… 担当者が素人だったとしても、経営者や管理職が業務の知識があれば、まだなんとかなるでしょう。それが逆に、上の方々がまったくの業界や業務の素人というケースが圧倒的に多いのだと思います。


丸投げして、逃亡してしまう管理職

これは別のクライアントですが、信じられない事態が起こりました。もちろん、誰だって知っているブランドです。

ある在日大使館とそのクライアントがコラボしてキャンペーンを打つというのです。担当の課長がその会議に、私に出て欲しいというのです。制作することがあるなら出ますが、でも私、英語喋れませんよ。と条件をつけました。すると、そこはこちらでなんとでもするからという返事。

そんなのまったくデタラメでした。9割以上、英語で会議は進むのです。通訳みたいなことをしてもらう時間の余裕はありません。それどころか、重厚な会議室の中で、制作物の話をする以前の内容が討議されているのです。私にはなんの関係もないとは言えませんが、かなり遠い。そしてギャランティには、まったく関わりがないのです。

大使館とのコラボですから重要な仕事であることには間違いありませんが、うちは制作してなんぼ。コンサルや広告代理店じゃないのですから。

第一このクライアントにそんな予算はありません。出資社関係に握られています。

10回以上は、大使館に行ったと思います。大使館の中に入るには厳重な警備を通ります。撮影でカメラマンの車で入ったときには、車の下に爆発物がないかどうかミラーでチェックされ、そこをパスするとゲートが開きます。

3回目の会議が終わり、大使館から出てきたときのこと。課長から話がありました。実は退社すると。あと1週間ぐらいしか出社しない。大使館との案件は、次の会議から新任の役員が出席する。申しわけないけど、よろしく頼みますと。

へ?

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