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美大やデザイン学科以外からデザイナーになる場合の戦略?みたいなもの

[この投稿で言う「デザイン」「デザイナー」は、他のデザイン分野と比べて比較的新しいUIデザイン,UXデザイン,サービスデザインあたりの分野を念頭においています。定義はせずにふわっと書いてるので、精密な領域の定義を求めてお読みになると不満に思われるかもしれません。「戦略」についても同様におおざっぱな意味合いで使っていますので、そのつもりでお読みいただけると助かります。また、個人的な意見で、美大の意向表明などではありませんのでくれぐれも誤解なきようお願いします。][内容と写真もあまり関係ありません。雰囲気です。]

最近口にする人はめっきり少なくなりましたが、すこし前までUIデザイン系のLTを聞きに行くと、登壇者が口々に「ぼくは美大出身じゃないんですが...」と前置きをしてから話し始める場面を何度も目にしました。プロとしてすでに素晴らしい実績のあるUIデザイナーが、どうしてわざわざ「美大出身じゃない」と言うのか不思議でした。僕は工学部のデザイン学科でデザインを学び、社会に出てプロダクトデザイナーとしての経歴をスタートしましたし、美術大学以外のデザイン学科はむかしもいまもたくさんあるのです。(社会人経験のあとの大学院は、多摩美ですが、当時インタフェースデザインを学べるところがここしかなく。)
他には「非美大」なんていう言い方もあって、それ「美大以外」って逆差別だろう(笑)と思ったりします。美術大学はなにか気分になる存在なのかもしれませんが、べつに魔力とか持ってないし魔法も使いませんよ。

それはさておき。

最近、美術大学やデザイン学科で学ぶ道筋以外で、デザイナーを目指す、目指そうという人が増えてきています。オンライン・オフラインとも講座や学びをサポートする仕組みもいろいろ立ち上がってきています。
たしかに昔と比べれば、美大や専門学科以外からデザイナーになる時の参入障壁はずいぶん低くなっているように思います。一方で、経験値の高いプロのデザイナーがすでに世の中に多くいるのも事実で、そういう市場に後から参入するためにはなにかしらの「戦略」も必要だと思うのです。正面から真っ向勝負に行くひともいて良いと思うので、そういう人たちを特に止めようとは思いません。

UIデザインの分野を見れば、今はツールもアセット(デザインのための資源)も揃っていてデザイン手法もいろいろ公開されているので、ツールの使い方を覚えて既存のUIを参考にしてそれっぽいUIデザインを作るのは、表面上はわりとすぐにできてしまいますね。それで「私にもデザインできそう」という気分になるのは入口としては大事なことです。
プロを本気で目指すのなら、その先の段階を視野に入れておかないと教養・入門レベルで止まってしまいます。入門レベルのままではプロの仕事はできない、というのは冷静に考えれば当然のことです。そこの戦略がだいじですね。

いろいろな分野の「デジタル化(デジタルシフト)」の流れでUIやUX,サービスデザインが必要とされる分野はすごい勢いで広がっていて、これまでの「表現に軸足を置いたデザイン教育」でカバーしきれない部分が日に日に増えています。
これから、これらの分野にチャレンジする(たとえばUIデザイナーになる)なら、既存のデザインやデザイン教育が手薄なところやカバーできてないところを狙うという「戦略」はかなり有効なのでは、と思います。もちろんツールを使う技量や表現力、デザイン力はある程度身につけた上で、というのが条件ですが。

たとえば、経営学を専攻している学生、あるいはすでに実務で経験のあるひとなら、いま盛り上がってる「デザイン経営」周りは知識としても興味分野としてもアドバンテージがありますね。Fintech系のアプリのUIデザインをするには金融システムの理解が必要です。医療は専門外のひとから見たら専門知識の壁がとてつもなく高いし、HRや法務に関わるデザインを手がけるには、前提となる知識や仕組みの理解が必要です。AIが裏で走るチャットのUIは利用するAIの特性を理解しないと作れませんし、VUIは画面じゃなくて話し言葉や会話の設計が主役です。デザインリサーチの定性調査には社会学の知見が求められたりします。
話をUXデザインやサービスデザインまで広げれば、マーケティングの知識は必須ですし行動経済学も有用です。場合によっては、表現力よりもファシリテーションのスキルや組織論、組織変革についての知識の方が役に立ちます。

もしも、いまこれらの専門分野に近いところにいる人が、ご自身の専門性にプラスして「UIデザイン」ほかのデザインスキルを身につけたら、既存のデザイン教育を受けたデザイナーに対して差別化できて競争力を持てるでしょう。

もちろん、デザイナーも新しい分野を学んでいますし、どんな業界・クライアントにも対応できる熟達したデザイナーもいます。個人ではなくチームでデザインすればデザイナーが対象分野の専門知識を深く理解する必要はないかも知れません。(どちらが正しいデザイナー像か、という議論にはあまり興味がありません。)

デザインが社会の様々な分野に拡散・浸透していき、「〇〇+デザイン」という新たなデザインのプレイヤーが増えてきた時にどういう世界になるのか、とても興味深いです。
従来のデザイナーと競争が激しくなるのか、棲み分けるのか、相乗効果が出るのか打ち消し合うのか、あるいはそんな世界は来ないのか。そもそもそんな議論すら意味がないのか…。
ひとまず5年後くらいには一つの答えが見えそうな気がします。3年後かもしれないけど。

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