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九重の宿


 九州に移住して2年、まだまだ、温泉巡りが終わらない。
 日本には、2万7千ヶ所の温泉(源泉)があって、その3割強が九州に点在してる(出所:環境省 令和3年度温泉利用状況調査)。
 温泉でなくとも、お風呂に浸かりながら本を読むのは好きだ。青空の遠く先に流れる白い雲を遠目に、昼ひなか、のんびりと露天風呂に浸かり、本が読めたら最高! 
 だけど、どこの温泉も読書禁止。ボーっと空を眺めているのはいいけど、本を読んだらダメってのは残念でならない。
 さておき、移住してから「九州八十八湯めぐり~九州温泉道~」が推薦してる温泉地を巡っている。温泉好きの人たちが厳選した源泉で、どこも趣があって泉質がいいらしい。
 選ばれた温泉地は、九州全域に点在。130ヶ所強ある。一つひとつが遠く離れてる。九州には1万ヶ所を超える温泉があるのだから、当然か。
 中には、TVの「ポツンと一軒家」に出てくるような山奥の温泉もあって、びっくり。良く見つけてきたもんだ。
 温泉巡りは、ちょっとした冒険のようで楽しい。自然豊かなところで飽きない。

九重星生ホテル(山恵の湯)

 熱烈な温泉ファンではないけれど、そんな私でも、何度も入りたくなる処がある。
 九重星生ホテルの山恵の湯もそのひとつ。
 別府から車で1時間ほど。海岸から、ひと山向こうの湯布院と阿蘇を結ぶやまなみハイウェイの外れに「九重星生ホテル」がある。阿蘇くじゅう国立公園の中。
 少し離れたところにもホテルや旅館が点在しているけど、山深く何処も見えない。周囲には、レストランも店舗もない。
 ホテルは、車道からも奥まったところにあるので車の音すら遠い。とにかく、静寂な佇まいがいい。夜の暗闇には、満天の星が輝いている。
 広い土地にポツンと本館と温泉棟が建っている。せせこましさがない。小さなエントランスの先には、ゆったりとしたロビー。そして、目の前に九重の山々が広がっている。山懐にあるのでトレッキングや登山客の利用客も多いらしい。
 余分な遊興施設はいらない。九重の山々と温泉があれば充分だ。
 温泉の名前は、「山恵の湯」という。硫黄泉、単純泉、酸性緑礬泉、冷鉱硫黄泉の4種の源泉があり、まさに山の恵みだ。
 内風呂もあるけど、公園のように広い露天風呂が格別いい。岩を並べた風呂や桶風呂、ジャグジーや打たせ湯など、工夫を凝らした大きな風呂がいくつもある。開放的で硫黄臭が苦手な人でも気にならない。
 目前には九重の山々。青く澄み切った空。白い雲が流れる。風は冷たいけど、湯に浸かれば気にならない。硫黄泉に入ったら、次は酸性緑礬泉の桶風呂に入ろう。
 宿には、山恵の湯とは別に客室近くに大浴場もある。至れり尽くせりだ。
 部屋に戻り、ゆったりとしたソファーで、雄大な山々を遠目に、コーヒーを飲んでひと休み。旅の疲れを癒してくれる。
 食事をする広間に華美な装飾はないけど、清潔でひっそりとしたた住まい。食事そのもので勝負してるようで潔い。
 山海の新鮮な食材を使った料理は、どれも丁寧につくられていて、美味しい。品書きと共に、箸に私の名が刻んである。そんな気遣いが随所にあって、食事を引き立ててくれる。
 ホテルの下手を車で2〜3分走れば、タデ原湿原が広がっている。その先は九重の山々。湿原は、普段着のまま散歩が楽しめるように歩道が整備されている。一時間も歩けばちょっとしたトレッキング気分。もちろん、九重の山々を巡る登山口もある。事前にホテルに頼んでおくと、お弁当も作ってくれる。大きなおにぎりが2つとおかずが少々。山歩きのランチにはこれで十分。美味しいんだ。
 車で10分程の処に「九重“夢”大吊橋」がある。眺めるだけでもいい。高さは最大で170m。50階建の高層マンションの屋上にいる感じ。しかも、足元は格子状で見通しがいい。所々、ガラス張りになっている。渡り切るには、風に揺れながら400mほど歩かねばならず、迫力満点。高所恐怖症の私は一度で十分だが・・・。
 私のような人は、やまなみハイウェイがいい。阿蘇の雄大な姿をみれる絶景ポイントがあちらこちらにある。走った先の湯布院も阿蘇も、上質な温泉地がたくさんある。もちろん、泉質は様々楽しめる。
 
 ここは、何日いても飽きることのない処だ。
  単なる宿泊客だけど、一度泊まってみると、どことなく応援したくなるのが九重星生ホテルだ。


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