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「勉強する気はなぜ起こらないのか」のレビュー

「勉強する気はなぜ起こらないのか」外山美樹著(筑波大学教授)のレビューをしていきます。昨年は豊島岡女子で出題、今年も光英VERITAS、横浜女学院で出題されていました。読み物としてもおもしろいので親御さんにもおすすめします。2023年11月の教室通信を加筆修正してアップしています。


私個人の経験として、やる気は波があるので大きな波が来た時にはブレーキを踏まずにとことんやることがポイントだと思っています。勉強が苦手な子はそこで知らず知らずのうちにブレーキを踏んでしまうんですね。たとえば、やる気に満ち溢れているときは新しいテキストをもらったときなどです。次のタイミングは春期講習のテキストを配付された時がチャンスかもしれません。

第1章 やる気は内からわくのか、外からくるのか

近年の心理学の研究では、外からのやる気にもよい点があることが明らかになった。自律性の程度によって、外からのやる気を段階的に分類。
「典型的な外からのやる気」自律性が低い
・先生や親に叱られるから ・先生や親に褒められるから
「プライドによるやる気」結果の方が重要、義務感、自律性が低い
・勉強ができないと恥ずかしいから ・良い成績をとりたいから
「目標によるやる気」積極的に行動、自律性の高いやる気
・自分の夢や目標のために必要だから ・良い高校や大学に入りたいから
「自己実現のためのやる気」自律性の高いやる気
・自分の能力を高めたいから ・知識を得ることで幸せになれるから

「勉強する気はなぜ起こらないのか」第1章より

中学受験生にやる気を出させるには目標を設定することがカギのようです。私の経験上も学校見学など勉強の目標となる行動を積極的に行っている人はやる気があるように感じます。(当然親御さんの協力が必要です)一方で、残念ながら中学校を見に行ったことがないという子もいます。

6年生の秋になると学校見学の時間もなかなかとれないので5年生までに幅広く見ておくことをおすすめします。説明会や文化祭は争奪戦ですからそれ以外の日でもよいので校門の前まで行ってみましょう。守衛さんに声をかけて事務室まで資料をもらいにいってみるなどチャレンジしてみることをおすすめします。大学付属などは大学が開門してしていればキャンパス内はフリーで入れることもあるので、行ってみる価値はあるかもしれません。(立教新座、学習院などはおすすめです)

第2章 なぜ誘惑に負けてしまうのか

人生で成功するために、もっとも必要なものは「我慢強さ」 我慢強さとGPA(学生の成績評価値)の間には関連がみられる。少しでも前に進むためにちょっとした工夫ができるかどうかが、やる気を継続するカギ
誘惑を目の前から遠ざける 原始的な方法が、実は抜群の効果を持つ。
①ご褒美作戦 ②環境を変える作戦 ③負担をおさえる作戦 ④友だちに頼る作戦 ⑤勉強って大事だと思う作戦

「勉強する気はなぜ起こらないのか」第2章より

私自身はToDoリストを作って消し込みをしていくことで達成感を味わうようにしてモチベーションをあげています。算数の問題を解くときは簡単な時は15題ずつ解くようにして難しいときは5題ずつなど③の負担をおさえる作戦は使っています。①は私の得意な作戦です(笑)入試に入る前に仲間と食事に行く約束をして乗り切りました。(かにを食べに行きました)

皆さんにはこの春を乗り切るコツを紹介しておきます。今つらい人は参考にしてみてください。
・現状維持を心掛ける
・計算はためても一日まで
・塾は遅れても休まず行く
・ハーゲンダッツの新作を食べる
・スタバの新作を飲む(私も新作が出たら必ず飲みます)
・宿題は途中まででも大丈夫
・あと少しで春休みが合言葉

昨年の春ごろカップのデザインです

第3章 目標設定で差をつけよう

自分の能力にあったレベルで目標を設定 実現可能で現実的な、小さな目標を設定
主観的な成功確率が低い行動ではやる気が低い 成功確率が高まるにつれてやる気も高まる
成功確率が50%のところでピークに達し、それ以上成功確率が高まるとやる気は低下する
常に最上位目標(志望校合格)を意識する
最上位目標の存在を忘れないように、その内容を紙に書いて、それを自分の部屋に貼り付けておくなどするとよい

「遂行目標」ライバルに勝利する テストで10番以内に入る 相対的な基準 他者との比較
「熟達目標」連立方程式が解けるようになる 二段飛びができるようになる
目標を達成することによって、達成感や自信が強まる
他者との比較ではない「熟達目標」を目標とすることが望ましい

「勉強する気はなぜ起こらないのか」第3章より

3章の内容は保護者会でよくお話しする内容です。クラスアップ(他者との比較)を短期目標に設定すると早い段階で受験生活が暗礁に乗り上げます。まずは自分が努力すればできることを目標にして1つ1つ成功体験を増やしていくことがポイントです。漢字テストで満点を取る。計算ミスを1問以内にする。本を週に1冊読む。ゲームは1日30分以内にする。などできることからやることをおすすめします。

第4章 やる気を左右する周囲の存在

優れた友だちの存在によって、やる気が出ることもあれば、逆に自分の不甲斐なさを思い知らされ、意気消沈したり、やる気がなくなったりします。
鶏口となるも牛後となるなかれ
優れた集団の後ろにつくよりは、弱小集団でもトップになったほうがよい。心理学では、この格言が実際にあてはまるような現象が観察されている。

私たちは元来比較する生き物
他者や集団ではなく、過去の自分と比較する
人と比較するよりも、過去の自分と比較する方が、有能感が高まる

「勉強する気はなぜ起こらないのか」第4章より

レベルが高い学校に入りたいと思うのは普通のことでしょう。そこの心配はしてもしょうがないように思います。(レベルの高い学校に入ったらついていけないのではいう心配)
この章で学びがあったことは
・過去の自分と比較する
これはおすすめしたいです。2か月前にできなかった問題ができたというのは自信につながります。
できなかった問題にしるしをつけて期間をおいて再アタックしてみるのです。
・自分より少し成績のよい人と比較する
競争心の強い子どもであれば有効かもしれません。
・自分の能力にあった集団に所属する
塾のクラスがこれにあたるでしょう。クラスの最下位にいるよりは1つ下のクラスの上位の方が授業の理解度も増して成績の伸びを実感できることは経験上多いです。特に算数で顕著です。国語やその他の科目で上位クラスにいる場合は、算数はついていけてなくて自信を失っていることもあるかもしれません。ここは塾と相談して算数でクラスを決めてもらうか、個別などでテコ入れをしてもらう必要があるかもしれません。

第5章 ネガティブでも大丈夫?

一般的には、楽観主義と悲観主義では、楽観主義のほうが望ましいと思われている 自分の行動がもたらす結果への期待は、やる気を引き出す
成功すると予想すればやる気が上がり、失敗すると予想すればやる気が下がりやすいという相関関係がみられる

やる気を高める原動力は、人によって違う可能性がある 悲観主義者のなかにも、「物事を悪いほうに考える」ことで成功している人がある程度いる。
これから迎える状況に対して、最悪の事態を想定する。そういった考え方をする人を心理学では、防衛的悲観主義者という。
不安傾向が強い人に有効な心理的作戦、防衛的悲観主義が成功する理由
①悲観的に考えることで、不安をコントロールできる
②予想できる最悪の事態を見越して、それを避ける最大の努力を行なう

「勉強する気はなぜ起こらないのか」第5章より

この本で一番のおすすめは、この第5章です。保護者会などで入試に向かう時はポジティブ思考でとつい話しがちですが、人によって違うというお話しです。ネガティブであっても事前に防衛策を講じておけば成功できるということです。失敗するかもしれない。ではどうすれば…という考え方ですね。

第6章 やる気がなくなったとき

どうして人はやる気が低い状態、言い換えると、無気力な状態になるのか。
「自分がいくら何をやっても無駄なんだ」「行動と結果の間に随伴性(相関関係)がない」
無力感が学習される。いま直面している課題に対してだけでなく、その後の容易に解決できる課題にも影響を及ぼす。心理学では「学習性無力感」という。将来の課題に対しても無気力になってしまう。

小さな頃から、自分が努力すれば何らかの変化が起こる経験を何度も積んでおけば、困難な状況に遭遇してもそれに立ち向かい、ちょっとやそっとでは無気力状態に追い込まれることもなくなる。行動と結果の随伴性を感じることができるように、まわりがサポートしてあげれば、そこから脱出することはできるはず。やる気とは「行動を引き起こす力」

「勉強する気はなぜ起こらないのか」第6章より

3章にあるように小さな目標を1つ1つクリアしていくことが大きな目標をクリアするコツのように感じます。階段の1段を低くしてあげて、そして確実に前に進むことが成績向上そしてやる気アップのコツなのでしょう。人は人、自分は自分。自分なりの小さな目標を設定して、そして確実に前に進んでいきましょう。

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