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『木を使って循環する社会を創りたい』有限会社アルブル 代表取締役 米地 徳行さん

木工教室や木育など、様々なチャレンジをしながら、木を使って循環する社会創りをされている、有限会社アルブル 代表取締役 米地 徳行さんにお話をうかがいました。

プロフィール
出身地:
大阪
活動地域:近畿地方
経歴:大阪市立大学卒、ベンチャーキャピタルのJAFCOに2年勤めたのち大宝木材株式会社入社現在に至る。
現在の職業および活動:大宝木材株式会社代表取締役、有限会社アルブル代表取締役、NPO木育フォーラム理事長
座右の銘:二残一伐

「木工教室が当たり前の世の中に」

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

米地 徳行さん(以下、米地 敬称略):陶芸や料理教室のように、木工教室が当たり前になり、誰でも親しめる世界になって欲しいと思っています。
 私は木育をやっているのですが、それを始めたきっかけは、子どもが小学校の時に啓発ポスター展に入賞したので見に行ったことでした。そこには戦争反対や差別反対という啓発ポスターがあり、その中に木に関係するポスターが何枚かあったのです。木が切られて泣いているポスターや斧で木が切られ血が飛び出しているポスターなど、木が切られてかわいそうということが表現されていました。息子の友達がそのポスターを描いていて、息子からみたら親父が木を切る仕事をしているのは具合悪いと思い、イメージを変えたいと思ったんです。
 「木を切ることは良いことか、悪いことか?」と聞くと9割の方が"悪いこと"と答えます。でも、実際今の日本では木が切られてないことが環境破壊に繋がっています。木を切らないと栄養を取り合ってしまい、1本1本がヘロヘロの悪い木になってしまったり。葉っぱが生い茂ることで、地面に光が当たらず、地面に何も生えなくなってしまうので、根がむき出しになり、大雨の時に木が流れてしまったりします。最近のニュースでも、川に木が流れる映像があると思いますが、まさにそれです。最近では、家を建てるときも木を使うことが減ったり、海外の木の方が安いという理由で国内で使われる80%は輸入の木が使われていて、日本の木が使われていません。
 私は、昔の日本みたいに木を使って循環する社会をつくっていきたいと思っています。しかし、江戸時代の文化に戻るというわけではありません。今の時代にあった木との付き合い方が必要だと思っています。実は今の日本は国土に占める森林の率が70%で世界第2位と資源大国なんです。木の値段も海外と比べて物凄く高いわけではありません。なので、まずは国民が日本の木を使う文化にすることで、資源の活用になり、生産性が上がり、経済も良くなります。なので、日本人一人ひとりが木のことをしっかりと知って貰うために木育を始めました。
 また、木を使った物づくりを楽しんで貰う活動も広げています。以前、大阪市内の保育園から依頼があり、木のベンチを作りました。その園長先生が木が好きな方で、園庭にプラスチックや鉄で作った物ばかりで木で作った物がないので、園庭に木の物が欲しいとの依頼でした。園長先生と話す中で、ただ作って納めたらつまらないと思い、「子どもたちと一緒に作りませんか?」と提案してみたら、園長先生も喜んで頂き実現に至りました。3回シリーズで製作に取り組み、1回目は保育士さんが手伝ってくれ、2回目には保護者の方が手伝ってくれるようになり、なんと3回目には地域の人が来てくれて手伝ってくれたんです。園児も幼稚園を卒園する時に、自分が作った物が残るのは嬉しいですし、お母さんたちも金槌を初めて使ったという人もいて体験を喜んでくださり、地域の人たちからも「関わりたいと思っていたけど、中々行く機会がなく、手伝えたり、子どもたちに「ありがとう」と言って貰いとても嬉しかった!と、嬉しい言葉を頂きました。園長先生も、「国から地域で子どもを育てる様に言われますが、どう取り組んでいいかわからず悩んでいましたが、今回の体験では地域を巻き込んで取り組めました」と、とても喜んで貰い、みんなに喜んで貰うことができたのです。
 そして、さらに嬉しいことがありました。その時は大阪府の助成金を使用したこともあり、保育園の負担はありませんでした。次回やるとしたら、お金もかかるし一回限りの依頼だろうと思っていたところ、園長先生から電話があり「お金を集めるので今年もやって欲しい」と依頼の電話を頂いたんです。それがすごく嬉しかったですし、みんなに喜んで貰いながら収益にもなるモデルになると思いました。この様に、都市部でも木工教室が流行れば、木が切られる様になり、山にも良いですし、自然と繋がった生活になります。そして木が切られればまた植えることもでき、そういう循環する社会を創っていきたいです。

記者:初めて聞くことが多く、木育の大切さを感じましたし、木工教室が多くの場所で開かれることで、循環する社会が創られていくイメージが沸きました。

Q.「木を使って循環する社会をつくっていきたい」を叶えるために、現在どのような活動指針を持って、どのような(基本)活動をしていますか?

米地:私は、人のために行うことが結果自分のためになると思っています。なので、自分のためではなく、いかに相手が喜んで貰えるかを考えて行動しています。
 また、収益を上げることも大切にしています。NPOの活動にも繋がるのですが、環境系の集まりは収益を考えていないところが多くあります。昔は情熱で突っ走って、何とかしてこれたのですが、今の時代はそうはいきません。ちゃんと収益を上げないと若い人はついてきません。でも、企業の多くの悩みは、「若い人がついてこないこと」だと言うのです。私は、木材業界は新しい形に変えていかないといけないと思います。今、材木業界は昔に比べてよくありません。昭和30、40年代は何もせずとも儲かった時代がありました。でも、今は時代が違います。色んなことにチャレンジしていきながら、木材業界をよくしていきたいと思います。

記者:インタビューの最中も、人のために行っている在り方が溢れていましたし、自分だけでなく業界のこと、後世のことも考えられて活動されていることがとても素敵だと思いました。

Q木を使って循環する社会をつくっていきたい」と思うようになったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

米地:もともと祖父が材木屋を仕事にしており、私は長男だったので、小さい頃から材木屋になるもんだと思っていました。木の仕事がいいと思ったきっかけは、和歌山県勝浦に祖父が住んでおり、小学生時代はよく遊びに行って海や山で過ごしていました。本当は海に行ったり、友達と遊びたかったのですが、祖父に連れられ一緒に山に行き、植林を手伝わされたりして、山に行くのが当時は嫌いでした。でもある時、祖父に「この植えた木って何年したら使えるようになるの?」と聞いた時に、祖父が「30 ~50年後だよ」と言ったんです。でも祖父は30年後にはおそらく死んでいます。祖父が自分のためではなく、下の代のために働いていることを知ったんです。それを知った時にすごく感動しました。木の商売は、自分の為ではなく30年後のために働いているというのが、とてもかっこいいと思いこの仕事をしようと決めました。

記者:米地さんが今の素敵な活動をするきっかけになったお話しもまた素敵で、聞いていてとても感動し、木の仕事のことをもっと知りたくなりました。

Q.「木の商売が自分のためではなく30年後のために働いているのが、かっこいい」と思うようになった背景には、何があったのですか?

米地:私はおじいちゃん子で、祖父から色んなことを小さい頃から教えて貰いました。特に子どもの頃から言われて印象に残っているのは、「自分のためにするよりも、他人のためにする方が自分のためになるんだよ」という言葉でした。祖父とお風呂に入った時に「お風呂に浮かぶおもちゃを水を使って取ってみて」と言われ、一生懸命自分の方に引き寄せようとするのですが、おもちゃはこちらに引き寄せられません。逆に、おもちゃを遠くへ飛ばす様に水を押すと、回り回っておもちゃが自分の元に来たのです。その時祖父が「人も同じで、人にもやったら返ってくるんだよ」と言った言葉が今でもすごく印象に残っています。

記者:米地さんの在り方の背景には、御爺様の影響がすごくあったのですね。 自分のためではなく、誰かに喜んで貰うため。自分の事業だけではなく、木材業界や日本のことを考えて活動されている姿が本当に素敵だと思いました。貴重なお話ありがとうございました。

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【編集後記】
インタビューの記者を担当した荒牧と不知です。
終始柔らかい笑顔で対応して頂き、とても楽しいインタビューでした。米地さんが持たれている深い問題意識は、多くの人に共感できるものだと思いました。多くの方に知って貰いたいと思える素敵な方でした。
米地さんのますますのご活躍を楽しみにしております。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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