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性的マイノリティとマジョリティを繋ぐ Be My Friend! LGBT代表、牛島彩さん

以前から人権問題に強い関心を持たれ、その中でもLGBT(性的マイノリティ)の社会問題を解決すべく、アライ(LGBT当事者ではなく理解し支援する人)として活動されている、Be My Friend! LGBT代表の牛島彩さんにお話をうかがいました。

プロフィール
出身地:福岡県
活動地域:福岡県
経歴:
1974年生、福岡女学院大学卒。コピーライター、TCC会員。福岡女学院大学非常勤講師。
九州初女性誌『女性ジャーナル』編集部、『九州ウォーカー』情報編集部等を経て2000年独立。広告コピー、CMや商品の企画、広報全体計画実行に携わる。
行政の人権ラジオや人権週間ポスターの制作を通し人権問題に強く関心を持ち、2015年より「Be My Friend! LGBT」代表として性的マイノリティとマジョリティを繋ぐ活動を行なっている。
現在の職業および活動:Be My Friend! LGBT 代表
Re+word【リワード】代表、福岡女学院大学非常勤講師、文章力講師
座右の銘:神のなされることは皆その時にかなって美しい

すべての差別は「する側」の問題。
外から壁を叩かなければ、なくせない。

Q.現在どのような活動指針を持って活動をされていますか?

牛島さん(以下牛島、敬称略):2~3か月に1回、映画上映と交流の会を開いています。自身がLGBTでない人は、なかなか当事者の気持ちが分からなかったり誤解してしまったりしがちで、イメージだけで決めつけたような発言をして相手を傷つけたり、逆に傷つけたくないから理解したいけれど質問できず、遠慮しがちです。
だから、まずは仲良くなって友達になれば、色々な情報交換もできるようになってお互いの理解が進むでしょう。戦うのではなく、ゆるやかにつながり合う仲間になろうという方針です。多分、「フォビア」と言われるほど極端な差別主義者は、世の中に多くないと思うんです。よく「2:6:2の法則」と言われるように、差別する人は多くて人口の2割、アライ(LGBT当事者を理解し支援する味方)も2割。残る約6割が「積極的に差別しようとは思っていないけれど、LGBTってよく分からないから、特に何もしないし意見もない」という人ではないでしょうか。でもその多くが、「身近にLGBTがいないからピンと来ない」と思っているようなんです。気づいていないだけで、絶対にいるのに。
私は、当事者の友人が一人でもいれば、LGBT全体の人権を尊重できると考えています。差別って、人をその人格でなく属性で見下すことだと思うのですが、その属性の友人が一人もいないから見下せるのだとも思うんです。尊敬できる女友達がたった一人いれば「女はバカだ」なんて言わないし、女性全般を差別する発言に反論したくもなるでしょう。それと同じで、「Be My Friend! LGBT」に来ていただいた方には、一人でも当事者の友達をつくって帰っていただきたいと思っています。そうすれば、互いに自然な思いやりを持てる。
あと、あれ禁止、これ禁句とはできるだけ言いたくないと思っています。私自身、以前は当事者の友人に対して、何が失礼になるのかが分からないから、突っ込んだ話ができないと悩んだ経験があります。恋愛の話でも、何がタブーなのか分からず、非当事者には普通に聞けることが聞けないとか。でもそれって逆に差別なんじゃないかなと思ったんです。だったらまずは何がダメなのか知るためにも、どんどん聞いてほしい。
だから、イベントを共同主催している当事者の方には、傷つけるような発言があったら申し訳ないけれど、一旦飲み込んで、「その発言はこういう理由で当事者を傷つける可能性があるので気をつけましょう」というところまで教えてね、とお願いしています。相手が傷つけるつもりで発言しているわけではないことは分かっていますし、まずはのびのびと話そう、知ろうというのがこの会の趣旨ですから。

記者:繊細なことってどこまで聞いていいか分からないことたくさんありますよね。普段聞きづらいことを聞ける場ってすごく大切だと思います。

Q.そもそも、活動のきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

牛島:当事者の友人で、親にカミングアウトしても受け入れてもらえていない子がいたんです。親から拒絶されて傷ついている人は他にもいますが、特に一人、苦しんで苦しんで精神を病んでしまった子がいて。その姿を見ていると、じわじわと義憤が高まってきて、たまらなくなっちゃって。
私自身、フリーライターとして特に力を入れているジャンルが人権でした。色々な人権問題に携わる中で、LGBTは唯一、肉親からも差別を受けている人々だということに気づいたんですよ。
いろんな差別問題がありますが、基本的にどんなに周囲に受け入れてもらえなくても、家に帰れば親だけは味方、というのが普通ですよね。でもLGBTの方は、自分を産んだ人からさえ差別されてしまうことがあるんだ!と思った時に他人事じゃなくなって、過去にいじめで居場所のない思いを抱えていた身として、勝手にシンパシーを覚えたんです。

記者:言われてみれば、確かにそうかもしれませんね。結構みなさん親へのカミングアウトがハードル高く感じられているようでした。

Q.牛島さんは当事者ではないのに「他人事じゃない」と言う理由を、もう少し詳しく。

牛島:私自身、中学でいじめられたことで学校に居場所を失いました。しかも母親が「お前が生意気だからだ」「お前に原因がある」などと責める人だったので、学校だけでなく、家でも息ができず、毎日死にたい、と言うより生まれなければ良かった、消えてなくなってしまいたいとしか考えられなかった。居場所がない思いは、経済的に逃げ場のない小中学生にとっては死ぬのと同じです。
外でいじめられて帰ってきても、母親たった一人だけでも「何があっても味方だ、どんなお前でも受け止める」と言ってくれたら、その子は死なずに済むのではないでしょうか。
だからまずは親御さんにLGBTを理解してほしいと思ったんです。
全人口のうちLGBT人口は5%や7%などと言われていますが、10代で自殺する子のLGBT率は、それよりもかなり高いという一説があります。
親や周囲から否定され、生まれて来なければよかったという、居場所のない思いを抱えて生きる子どもを1人でも減らしたい。
ですから今、親世代の方や学校の先生方が、多くこの会に参加してくださっていることを本当にうれしく、頼もしく感じています。

Q.Be My Friend! LGBTは、今後どのようなビジョンをお持ちですか?

牛島:率直にいうと、アライを増やすことです。
LGBT(QやIも含む性的マイノリティの総称として)等への理解を促す啓発活動は、多くの場合、当事者やそのご家族の皆さんが行っています。でも、すべての差別は「する側」に問題があるので、壁の外側、つまりLGBTを壁に閉じ込めている側から行動を起こさなければなくならないと思うんです。
差別者本人には差別しているつもりはなく、ご自分の正義を大切にしているだけかもしれない。だから非差別者、つまりLGBT当事者から「差別しないで」と言われても、耳を貸さずに切り捨ててしまいかねない。でも、自分側の人間だと思っていた人から「それは差別だよ」「そういうことを言うと傷つく人がいるよ」と言われるとハッとすることってありますよね。当事者でなく、それを取り巻く差別者と同じ属性側からでなければ壁は壊せない。だから、壁を外からノックする仲間を集めたかった。そして、壁の内側でノック聞こえるよ、という人と両側から叩けば、この壁は壊せるかもしれない。だからアライと当事者をつなぐ仲間を増やしたかったんです。
会には当事者・非当事者問わずご参加いただいていますし、いちいち参加者のセクシュアリティを確認することはありませんが、スタンスとしてはあくまでもアライ側から壁を叩くので、一緒に歩きませんかという態度。こちらから「友達になってください、Be My Friend!」という姿勢で、一部の差別主義者と真っ向対立するのではなく、理解したいと願う人々と、アライの気持ちを広げていきたいと思っています。
理解されなくて孤独を感じている当事者には、少なくともここには味方や仲間、理解したがっている人がいるんだよということを伝えていきたい。
特に、子育て中の親御さんやこれから親になる人、さらに教育現場にいらっしゃる方にも、LGBTはごく当たり前の存在で、我が子やその友達がLGBTである可能性が、みんなにあることを知っていただきたいと思っています。
毎回参加してくださっている、高校生のお嬢さんのいる女性が、活動を通して「いつか娘が恋人を連れてきたとき、それが彼氏でも彼女でも歓迎したい」と言ってくださった時は嬉しかったですね。
どんな場にもLGBTがいることが前提だと、誰もが当然認識している状態になると良いですね。

記者:たしかに当事者かその家族が啓発活動をしているのはよく聞きますが、非当事者が中心の団体って珍しいですよね。

Q.アライを増やしていくために、どんな目標や計画を立てていますか?

牛島:3年ほど前から、この会に来ていただいた方の縁で、中学生にLGBTに関する授業を行う機会をいただきました。その授業から発展して、保護者の方や先生方に聴講いただく会が毎年恒例となり、校長先生まで聴講してくださるようになりました。「校長として何ができるか」と模索し、熱心に質問もしてくださいます。私は、制服やトイレなどのハード面をいきなり変更するよりも、図書室にLGBTに関する本を置くとか、先生達が性別を男女に限定するような話し方をやめるとか、まずはソフト面の認識を変えることが大切だとお話ししました。
最近は大学や専門学校でもお話をさせていただいていて、意識の高まりを感じますね。

記者:まずは、ひとりひとりができることからが大切ですね。

牛島:私はLGBT当事者ではないけれど、プロのライターとして広報活動はできるため、私にできることをしっかりやっていきたいですね。

記者:居場所がないことの孤独感はきっと誰もが感じることだと思います。内側(当事者側)と外側(アライ側)の両方から働きかけることで、差別の壁がバランスよく消えた未来を希望します。
本日は貴重なお話、本当にありがとうございました。

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牛島彩さんの活動、連絡については、こちらから


編集後記
今回インタビューの記者を担当した荒牧(写真左)、岩渕(写真中央右)、池田(写真右)です。牛島さん自身はLGBT当事者ではなくても、「私は味方だよ!仲間だよ!」と訴えられる気持ちが強く伝わりました。牛島さんのこれからのご活躍とご健勝を心より応援しております。

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。


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