ポケモンワールドチャンピオンシップス2018の記録【⑤ Day2(本戦レポート)編】

 WCS2018へ出場するにあたって私にはずっとやってみたいと思っていたことがありました。それはCOMPETITORのロゴが刻まれた選手Tシャツを身に着けて出場することです。本番当日の朝、身支度を整える時に初めてそのTシャツに袖を通しました。鏡で自分の姿を見た時には「いよいよこれからが本番だぞ」と改めて身が引き締まるような感覚がありました。

大会中は右腕にチムLOLIのみんなが送ってくれたこだわりハチマキをずっと巻いていました。ついに自分がずっと夢続けていた舞台への挑戦が始まります。どこまでできるかはわからないけど、自分のやってきたこと、自分の信じたデッキと共にやれるだけのことをやる…私の気持ちはそれだけでした。

《① WCS2018使用デッキ:ルガルガンゾロアーク》

「ルガルガンゾロアーク WCS2018.ver」
4 ゾロア(SM3+)
4 ゾロアークGX(SM3+)
1 ゾロアーク(XY8)
3 イワンコ(SM6)
2 ルガルガンGX(SM2L)
3 カプ・テテフGX(SM2L)
1 ミュウEX(XY5)
1 マッシブーン(SM5+)
1 ヤレユータン(SM5S)
(ポケモン 20)

4 ダブル無色エネルギー
2 基本闘エネルギー
2 ストロングエネルギー
(エネルギー 8)

3 N
3 アズサ
2 シロナ
1 プラターヌ博士
1 ククイ博士
1 マオ
2 グズマ
1 アセロラ
4 時のパズル
4 ハイパーボール
2 シンカソーダ
2 フィールドブロアー
1 改造ハンマー
1 マルチつけかえ
2 かるいし
1 こだわりハチマキ
1 パラレルシティ
(トレーナー 32)

 WCS2018へ臨む上で、私にはこのデッキしかありえませんでした。というか、WCS2018環境においてこのデッキ以外に自信を持って使えるものがなかったです。「① デッキ選択(環境把握&練習記録)編」にて詳しく書きましたが、紆余曲折の末に私はこのデッキに辿り着きました。日本を発つまでに自分ができる限りのことは全てやってこのデッキを完成させ、現地に到着してからも改めて変えるような箇所はないと思った。もう迷いなんてものは何1つない…自分がそう思えていたほど自信のデッキです。

しかしながら、WCS2018環境においてルガルガンゾロアークというデッキタイプは、正直風当りが強く厳しい位置付けにあるデッキでした。その一番の理由はゲームテンポを掴む上でエネルギーを貼る過程が1ターン遅れやすいことにあります。この環境はゾロアークGXとマッシブーン(SM5+)を中心としてずっと動き続けていました。環境に存在しているデッキタイプの多くに共通しているのは、1枚のエネルギー貼るだけで戦うことができるポケモンが強いということ…それに対してルガルガンGX(SM2L)が攻撃をするためにはエネルギーが2枚必要です。ルガルガンゾロアークは様々なデッキと長い時間を戦い続ける上で、エネルギーを毎回しっかりと貼れるかというテンポの取り方がとてつもなく重要になります。

 また、環境的に厳しいと考えた他の理由としてゾロアークコントロールというデッキタイプの存在があります。相手のエネルギーを積極的に壊しながら戦ってくるようなデッキは正直苦手です。もしもDay1の環境のままならとても人に勧められるようなデッキではありませんでした…そう、Day1の環境のままなら。

私はDay1の環境や様々なプレイヤーが選択したデッキを見ていて、おそらくDay2では全く違うものになるような気がしていました。特にゾロアークダストダスの存在が少ないだなんてありえない…間違いなくこれだけは増えるだろうと考えました。それらを中心にして環境読みをしていくと、ゾロアークコントロールというデッキタイプは自ずと減ってくる…ならば、ルガルガンゾロアークというデッキタイプにおける位置付けも変わってくるだろう…だったらこれでいけると、WCSに向けて磨き続けた勘がそう導き出しました。

他にも、環境読みだけではなく私がルガルガンゾロアークを選択した理由には、私自身の性格とのマッチングがありました。簡単にまとめると「私はオラオラ系の攻撃的なデッキタイプが大好き」なんです。逆にコントロール系やロック系のデッキは苦手意識が強くて上手く使いこなせません。この自分の想いを最も叶えてくれるデッキタイプがルガルガンゾロアークでした。よくよく考えてみるとこの環境では攻撃的なゾロアーク系統のデッキってあまり無いんですよね。ルガルガンゾロアークはその中でも珍しく、積極的に力で相手を圧倒していく攻撃的なデッキタイプです。まさに私好みのデッキでした。

 そして、このデッキにはWCS2018環境では珍しかったであろうゾロアーク(XY8)が入っています。それをどこまで上手く使えるかが今大会で勝ち続けるための肝となりました。おそらくレシピの59枚はよくあるものですが、このたった1枚だけは滅多に見ないものです。これは私の持論ですが「100%の内、99%の常識の中に1%の非常識を取り入れることで、その1%はとてつもなく強い光を得る」と考えています。このデッキレシピにはWCS2018に向けて私がずっとやってきたあらゆる考えと想いが詰め込まれています。

数か月前までは大嫌いだったはずのルガルガンゾロアークというデッキは、WCSを迎える頃には心の底から大好きになっていました。本当に不思議なものです。

《② 長年夢を見続けていた舞台への挑戦が始まる…WCS2018 Day2 1~3戦目》

1戦目 Patrick Landis [CH] 66位 WIN 
○○- ゾロアークGXダストダスラティオス

 会場の対戦スペースで待機しているとマッチアップが公開されました。早速、卓に着いてみると隣の席に座っていたのがチームアチャモのヒラノ君だったので、ちょっとだけリラックスできました。そうこうしているうちに初戦のお相手がやってきます。ヒゲを伸ばしサングラスのようなメガネをかけたダンディな方でした。どうやら、前日に行われたDay1を突破されたプレイヤーだったようです。

 早速、お相手に前日のサイドイベントの時と同じように「私は今回が初めてのWCSです。よろしくお願いします」と英語で伝えると、ニコっと笑って「OK!」と答えてくれたので安心しました。そして、そのまま握手をしながら「Good luck!」戦いの火蓋が切って落とされました。

 こちらが先行を取りお相手の場を見るとゾロアとヤブクロンが並びます…いきなり想定通りのマッチアップでした。ゾロアークダストダスと対戦する時にはいつもMTリーグとポケカメモ杯にて計3回対戦したしゅん君のことが頭にありました。だから、「しゅん君より強いゾロアークダストダス使いを自分は知らない」と思っていたので、正直全く怖くなかったです。1セット目も2セット目も、終始こちらの思い通りのゲームプランを辿ることができたので難なく勝利することができました。初めてのWCSはストレート勝ちで幸先のよいスタートです!

1戦目が終わる頃、一部の日本人プレイヤーの方々と情報交換を兼ねて集まった時には「ゾロアークダストダスに負けるわけがない!」と自信をもって勝利の報告をしていました。全体のデッキ分布を簡単に把握してみたところ、表面上は自分が想像していた通りの環境でした。あくまで表面上は。


2戦目 Edwin Lopez[US]106位 WIN
○ ○ レックウザGXラティオス◇マーシャドーヤレユータン
 
2番卓での対戦でした。まだ2戦目ではありましたが、いきなり上位卓にやってきたのでテンションも上がります。ここにいるとギャラリーの姿もよく見え、日本人プレイヤーを見守っている方々の存在が心強くなります。同じように1勝している日本人プレイヤーは思ったより少なめ…さらに身が引き締まります。

マッチングしたお相手は1戦目よりも大柄な方で、目の前に現れた瞬間に失礼ながら萎縮をしていまったのですが、あからさまに緊張している私に対して両手を広げて「Relax」と優しく声をかけて下さったほどとても良い方でした。これまたDay1を突破されたプレイヤーのようです。

 ここではお相手に先攻を取られ、場を開けるとラティアス◇スタート…おそらくレックウザGXかなと考えて「早速、当たってしまった…」と思っていたのですが、お相手の様子がおかしい。どうやらかなり事故っているようでラティアス◇単のまま2ターン目で1セット目を即投了されました。

2セット目ではレックウザGXらしい爆発的に山札を掘り進む展開を仕掛けてきます。ルガルガンゾロアークはこのスピードに追い付いて攻撃をし続けななければ勝つことができません。しかしながら、1セット目でこちら側のデッキがルガルガンゾロアークだと判明した以上、お相手は必要にイワンコを狙ってきました。1枚たりともイワンコへエネルギーを付ける余裕を与えさせてくれませんでした。

しかしながら、こっちもただのルガルガンゾロアークではありません。マオからのとりひきでフィールドブロアーとゾロアーク(XY8)を手札に呼び込んで、お相手のレックウザGXについている闘魂のまわしをフィールドブロアーで剥がし、ベンチのゾロアがゾロアーク(XY8)に進化してこだわりハチマキを巻いて渾身のマインドジャック190ダメージによって、レックウザGXを一撃で気絶させます!お相手はそれを見て目を見開き「ヒュー…」と口を尖らせながら息を吐きだしました。こういったまさに外国人のような反応は映画でしか見たことが無かったのでそれが見れて嬉しかったです。そのままゾロアーク(XY8)がレックウザGXをもう1体倒して2セット目も取り、ストレート勝ちです!


3戦目 Ryan Moorhouse [GB] 25位 DRAW
○ × - ゾロアークGXダストダスラティオス

 3戦目を迎えこの時点で全勝していた日本人は自分を含めて3名だけとなり、WCSという大会の厳しさを実感するとともに自分にはどういうわけか良い流れが呼び込めていることを感じ始めます。1,2戦ともストレート勝利をしていたため引き続き上位卓での対戦です。

この辺りから自分の隣の対戦卓(1つ上)がフィーチャーマッチに選ばれ始めて、私にとって憧れの舞台で対戦ができるのではないかというチャンスを感じ始めていました。フィーチャーマッチに選ばれる際は対戦準備開始前にスタッフがやってきて「On Stream!」と宣言され、配信卓へと連れていかれます。自分のすぐ傍でその出来事が起こったので、それがとにかく羨ましかったです。

ここでやってきたお相手はちょっと痩せ型で知的なイメージを感じさせられる方でした。しかし、実際に対戦してみると私がTrade(とりひき)を宣言する度に、「Uh-huh(アーハン)」と相槌を打ってくれて、私からするとお茶目な一面もあるように思える方でした。さらにこの対戦で初めてDay2からの出場者と対戦することになります。

 試合が始まり場をオープンするとお相手のバトル場にはラティオス、ベンチにはゾロアとヤブクロンが出ていたのでまたまたゾロアークダストダスとのマッチアップが発覚。しかも、お相手はあまり展開が芳しくなかったようでラティオスに基本超エネルギー2枚とダブル無色エネルギーをつけて無理やり殴ってきました。当然のようにこちら側の展開にお相手が着いてこれなかったので1セット目は難なく勝利。正直、この時点では怖いもの知らずということもあり全く負ける気がしていませんでした。

2セット目を迎える前に、1セット目でお相手は勝ちの目が薄いにも関わらず投了をすることはなく時間をかけてでもこちら側のデッキを分析していることに気が付きます。何ならこちら側もそれなりに時間を使ってこの試合を逃げ切ってやろうと思っていたのですが、1セット目とは比べ物にならないほどお相手のプレイングが早く、尚且つそれがあまりにも適格でこちら側はペースを握られてしまっていました。

それでもエクストラターンの3ターン目でパーツを4枚(※基本超エネルギー、グズマ、フィールドブロアー、こだわりハチマキ)揃えなければ負けないように展開をもっていったのですが、ラストターン手前でお相手に向けて残りサイド2枚で打ったNが私にとっては逆効果の1手となってしまったようでした。お相手は1回のとりひきで時のパズルを2枚揃えることに成功し、こちらのベンチにいたカプ・テテフGXをグズマ呼び出され、フィールドブロアーでこちら側のポケモンのどうぐを2枚剥がされ、ダストダスに超エネルギーとこだわりハチマキを貼られて、ゴミなだれで170ダメージでピッタリきぜつ…お相手は残りのサイドを2枚引き切って勝利しました。これにより1勝1敗にてこの勝負は引き分け…全く負ける気がしていなかっただけあって引き分けに持ち込まれたという事実にショックを隠しきれませんでした。

お相手は試合後に「最後は自分の運が良かった」とお話していましたが、私からしてみると彼はこれまで対戦したゾロアークダストダス使いの中でも群を抜いてプレイングが上手くて、初めて世界というレベルの高さを見せつけられたプレイヤーでもありました。この対戦の後も予選で25位と好成績を収めていたので、やはりこのプレイヤーは本当に強い方でした。これが世界か…

《③ ターニングポイントとなった4戦目にて世界大会で対戦することの面白さを知る》

4戦目 Poet Larsen [US] 56位 WIN
× ○ ○ ゾロアークGXダストダス

 この辺りから日本人プレイヤーの間で、「参加人数的にこの予選は7回戦で終わるのではないか」ということが言われ始めました。そうなるとこの4試合目がちょうど折り返し地点となるので、戦績的にも気持ち的にもちょうどターニングポイントになり得るのでより気持ちが引き締まります。

マッチングが発表されて対戦相手を待っていると、これまた私の隣の対戦卓(1つ下)がフィーチャーマッチとして選ばれていました。その時に私は、率直に「いいなぁ…羨ましいな…」と思ってしまい、その感情を抑えることができず、わりとわかりやすく顔に出しながらフィーチャーマッチを指定したスタッフを見ていました。下手にアピールをしたというわけではないのですが、2戦連続で私の隣の対戦卓がフィーチャーマッチに選ばれたことで、スタッフからしても私のその様子を気にさせてしまったようにも思えました。その真偽は今もわかりません。

そして、このタイミングでマッチングしたお相手は、これまで対戦してきた3名と比べると最も若々しく顔つきが明るい方でした。また、彼の話し方もとてもフランクなものだったように感じます。これまたDay1を突破してきたプレイヤーのようです。

 1セット目からお相手のデッキがゾロアークダストダスだと発覚したのはいいのですが、こちらが絶望的なほど事故ってしまったためマッチアップで優位を取れると思えなくなってしまいます。3戦目の直後ということもあり、これは下手に時間をかけたら負けてしまうし、どんなに頑張っても引き分けになってしまうと判断し、1セット目は2ターン目の終わりに即投了します。

 2セット目はまさかのミュウEXスタートで心の中で悶絶していましたが、お相手はこちらのデッキをまだちゃんと把握できていないからミュウEXを囮にして突破口を開けばいいのではないかと考え、実際にそのゲームプランで勝ちに行こうとします。お相手のゾロアークGXによりミュウEXが倒されサイドが4枚になったタイミングでの返しのターン、こちらはマオからのとりひきでマッシブーンを呼び込み、「Let's GO! Buzzwole!」と言いながらベンチに繰り出し、バトル場のゾロアークGXを一撃できぜつさせます。相手はその時に「Wow!」と高揚しながらリアクションをとってくれたので嬉しかったです。

このままテンポをつかめるような気がしたので、その後のアタッカーをゾロアークGXとルガルガンGXに切り替えながら攻めていったのですが、このタイミングでお相手から「Surprise!」と言われながらレッドカードを使われました。この瞬間、こちらも気が動転して「Really!?(マジで!?)」と無意識に英語で反応してしまいました。その後もお相手からはフレア団のしたっぱなども打たれたことでこれまた驚き、このゾロアークダストダスデッキにはゾロアークコントロールのような要素が入っていることにやっと気づきます。そこで自分がこれまで抱いていたゾロアークダストダスデッキの常識が、この対戦を通して打ち砕かれたのを感じました。しかし、幸運にも2セット目はマッシブーンからゲームテンポを取り返せたようなので、レッドカードやフレア団のしたっぱなどで妨害されつつも、そのままの流れを止めることなく勝利します。試合の残り時間が残り10分ぐらいでしたが、運命の3セット目へ突入です。ゾロアークダストダスデッキにこの短時間で勝てる自信はありませんでしたが、勝ちたければやるしかありません。

 3セット目を迎えたのはいいのですが、手札状況が1セット目ほどではないもの芳しくなく、こちらの展開が1ターン目から思うように遂行できません。時のパズルを使うとシロナが見えたので、それを迷わず1番上に並び変えてターンを渡します…すると、お相手は驚くことに手札からヤブクロン(SM2L)をベンチに出して、そのままバトルポケモンにかるいし、ヤブクロンに基本超エネルギーを貼ってふみならすを打ってきたのです。「Oh...」と口に出し項垂れながら、私は山札の上からシロナをトラッシュしました。それを見てお相手は「Yes!」とガッツポーズをします。このプレイングには相当驚かされました。

しかし、時のパズルで操作した2枚目はその時に現物で欲しかったパーツであるダブル無色エネルギーだったので、そっちが落とされなかった事実に私は安堵もしていました。そこからバトル場のゾロアをゾロアークGXに進化をさせとりひきをすると、カプ・テテフGXを引き当てることに成功します。そこからアズサでベンチにゾロアとイワンコを並べながらライオットビートでひたすらビートダウン…気が付けば短時間でお相手よりも2手先へ行くことができて、制限時間内に3セット目で勝利することができました。

対戦が終わってから、私はお相手に対して「あなたのゾロアークダストダスデッキは私が見てきた中で最も面白いものでした!」と賞賛していました。お相手も喜んでくれていたように思います。また、この頃には自分が自然と対戦相手とコミュニケーションを取れるようになっていたことに気が付きました。対戦中の駆け引きやちょっとした言葉のやり取りで意思疎通ができた瞬間は、私にとってこれまでポケモンカードをやっていて全く感じたことのない喜びを抱かせてくれました。世界大会はこれほどまでに楽しいのか!

《④ 5戦目がフィーチャーマッチに選ばれ夢の舞台での対戦が実現するも悪夢到来…》

5戦目 Klive Jun Jie [SG] 5位 → 世界3位 LOSE(配信卓)
× ○ × ジガルデGXルガルガンGXマッシブーンGXヤレユータン
 4戦目を終えてこの時点での日本人プレイヤーの成績を確認してみると、3勝1分が自分を含めて2人、3勝1敗が3人、2勝2分が1人となりました。予選が7戦目までとなると、決勝トーナメント進出のボーダーラインは5勝1敗1分ぐらいになると考えていたので、ここでより一層負けられないという気持ちが強くなってきます。しかも、自分には引き続き良い流れが呼び込めている…このままTOP8を目指して駆け上がるぞ!そう思いながら次の対戦に臨みました。

マッチングされた対戦相手の名前と[ ]内に表示されていた国名を見て、「ん?SGってシンガポールか?となると、もしかしてアジア系のプレイヤー?」と考えながら対戦卓に着いてお相手を待っていたのですが、やってきたのはこれまで対戦してきた方々と全く違った雰囲気の青年でした。風貌や顔つきを見てまさにアジア系のプレイヤーというイメージ通りの方だったので、この日に初めて抱く不思議な感覚が私を包みます。

そして、対戦準備をしようとするとここで思わぬ出来事が…スタッフが私たちの前にやってきて「On Stream!」と宣言します。そう、この対戦がフィーチャーマッチとして選ばれ、私は憧れの舞台だった配信卓へ行くことになったのです。開会式前に配信卓を間近で見て「うおおお!!!この席で対戦してえ!!!」と声に出してかなり興奮していた、あの憧れていた舞台で対戦ができるのです。この瞬間、自分の中で喜びが爆発して席を立ち上がりながら軽く右腕を挙げてガッツポーズをしました。

 フィーチャーマッチはその対戦の様子がTwitchによって、世界中へ向けてリアルタイムで配信されます。しかも英語による解説つきです。このような体験はポケモンカードをずっとやっていて世界大会へ参加できたとしても、なかなか実現できるものではありません。私はこれまで世界大会の配信卓で対戦したことがある日本人プレイヤーのことを、この時を迎えるまでずっと羨ましく思っていました。同時に、その様子を日本から見ながら「自分は何で世界大会に行けないんだ…とても悔しい…」とも思っていました。様々な想いを抱き、憧れていた夢の舞台でついに対戦することができるという喜びをかみしめながら、私はその対戦卓に着きます。配信卓は中継越しではサイドカードの中身が視聴者からはわかるガラス張りの特別な仕様になっているテーブルで、実際に座ってみるとそれは思っていた以上に大きかったです。また、フィーチャーマッチでの対戦の様子はメインステージ横の大きなスクリーンで表示されていたので、ギャラリーも沢山いらっしゃいました。

配信卓ではプレイヤーの希望に応じて、日本語で通訳ができるスタッフが同席してくれるとのことでした。私はDay1にてリョウ君が配信卓での対戦においてシャッフルの回数不足によりサイドペナルティを受けて敗北していたことを思い出し、もしも不測の事態が起こってしまった時のためを考え、通訳スタッフを付けて頂くことにしました。

この対戦の様子はYOU TUBEにてアップロードされているため見返すことができます。試合の詳しい流れはそちらを見ればよくわかるので、ここでは私がどんなことを考えながら対戦をしていたのかを書きます。

 1セット目で先攻を取り、私はゾロアとイワンコを並べながらNを打つという普段通りならばわりと幸先のよいスタートダッシュをすることに成功します。お相手のバトル場にはイワンコがいたので、この時点ではマッシブーンルガルガンデッキかなと考えていました。しかしながら、この勘違いが既に悪夢の始まりだったのです。私はお相手の最初のターン中、配信卓でも平常心を保つべくいつも右腕に身に着けている彼女とお揃いのブレスレットへ左手を当てて、心を落ち着けながらお相手の動きを見ていました。そこにハイパーボールから現れたのはジガルデGX…ジガルデGX!?私は思わず軽く前かがみになるように身を乗り出して驚きます。その瞬間、私がこれまでWCSへ向けた各国の動向を調べまとめ上げた情報の中に、Klive AwというジガルデGX使いがいたことをやっと思い出しました。どうやら彼には別の名称もあるようです。そうこうしているうちに、お相手はこちらのベンチにいるイワンコをグズマで呼び出しながらセルコレクターで一撃で気絶させ、トラッシュから基本闘エネルギーを2枚身に着けてターンを返してきました…これってこの後にジャッジメントGX打たれる流れやん!正直、初っ端から気が動転しかけました。

「いや、まだ大丈夫だ…だって自分のデッキにはジャッジメントGXをかわせるゾロアーク(XY8)がいるのだから…それとマッシブーンのスレッジハンマーによるダメージを組み合わせてジガルデGXを処理すれば何とかなる…落ち着いて山札を見るんだ…」と考えていたのですが、この試合ではゾロアーク(XY8)がサイドに行ってしまったのです。しかも、時のパズルまで2枚もサイドに行ってしまう苦行っぷり。この時点で1セット目は負けを確信します。山札の中身を確認するまでは突然のジガルデGXの登場と緊張が相まって保とうとしていたはずの平常心が揺らいでしまったのですが、1セット目の負けを確信した瞬間に気持ちを切り替えられたのか、不思議と落ち着けるようになりました。

とはいえ、何もしないまま投了するのも癪なので、できそうなことはやってみようとジャッジメントGXでゾロアークGXが倒された返しに、ブラッティアイでベンチにジガルデGXを下げて、それをグズマで呼び出してカプ・テテフGXのエナジードライブで倒すという見せ場のようなものを作ってみました。しかしながら、その返しにお相手はこだわりハチマキとプリンセスエールでパワーアップしたマッシブーンのスレッジハンマーによって、こちらのカプ・テテフGXを倒し残りサイドは1枚に…こうなるとククイ博士を打ちながらライオットビートを打ってマッシブーンを突破するしかないのですが、それはおそらくかなり難しいだろうなと考え、1撃ではやられにくいであろう無傷のルガルガンGXを前に出して、ゾロアークGXのとりひきを繰り返します。ここでわざと手札にある改造ハンマーをとりひきでトラッシュしてその存在をあえて見せることによって、2セット目以降にお相手のエネルギーの貼り先を思い通りにできるのではないかと考えました。そのまま、ここでできるとりひきを終え、やることが無くなってしまったので1セット目は投了しました。

 2セット目は1セット目と全く違うゲームプランで戦うことにします。1セット目で掴んだ感覚を元に頭の中でどうやったらお相手にとって困るかを感がると、マッシブーンルガルガンのデッキタイプと同じようにルガルガンGXが積極的に戦いに行くスタイルが強いと考えたので、序盤からルガルガンGXが2体ともアグレッシブに攻めていきます。お相手の展開が芳しくなかったこともありデスローグGXやマインドジャックの打点を高めることはできなかったのですが、展開が十分にされていない時に最も小回りが利くマッシブーンGXをデスローグGXで突破したり、お相手のサイドカードが3枚になるようにゾロアーク(XY8)でマインドジャックを決めたりと、こちら側がわりと理想的なプランを辿ることに成功しました。他にも後半のターンにジガルデGXを倒すタイミングで、お相手のベンチについていたイワンコのストロングエネルギーを時のパズルでトラッシュから改造ハンマーを拾ってトラッシュすることにも成功できたのはとても大きかったです。最後はグズマでベンチのゾロアークGXを縛られてしまいますが、2ターンの猶予ができたのでそこで行った取引でグズマを引き当てて、お相手のジガルデGXを倒して2セット目は勝利しました。

 そして、運命の3セット目、私は初手を見るとカプ・テテフGXのみでサポートが無くて絶望します。とはいえ、お相手もイワンコスタートでせせらぎの丘を出し、そこからジガルデGXを出して基本闘エネルギーを貼ってきただけ。とりあえず次に引くトップカード次第では何とかなると思い引いたのはゾロア…1枚遅い!とりあえずゾロアを出そうとするもこのゲームでは先にどんなルートを辿るのかを考え、このままバトル場にいるカプ・テテフGXはアタッカーとして突っ張っていくしかないと思い、ダブル無色エネルギーを貼ることは確定させます。そのままゾロアを置き、このターンは時のパズルを使ってせめてサポートを呼び込めるようにしようと思って使用した際に大問題が発生します。何とお相手が出してくれたせせらぎの丘を見落としてしまったのです。この状況下でせせらぎの丘を使ってイワンコを持ってこない理由はほとんどありません。普段ならば絶対にやらないようなミスなのですが、最も大事な試合で私はそれをやってしまいました。何故このようなことをしてしまったかというと、この対戦が始まる前に書いたように配信卓のテーブルが思っていた以上に大きくて、その時の自分の視界にせせらぎの丘が入っていなかったこと、カプ・テテフGX&サポート無しスタートという厳しい状況で正常な判断ができていたなかったことが挙げられます。この瞬間から私の平常心はボロボロに崩れていきました。幸い、時のパズルでNがひっかかってくれたので、とりあえず次のターン以降もゲームを続けることはできると、このNへ僅かな望みを託します。しかし、この直後に最大の悪夢が私を襲いました。

返しのターンでお相手は何とサポートを使わずにジガルデGXへピーピーマックスで2枚目の基本闘エネルギーとダブル無色エネルギーとこだわりハチマキをつけ、前のイワンコにかるいしを貼って逃がし、ジャッジメントGXを打ってこちらのカプ・テテフGXを倒してきたのです。カメラには映っていませんがこの時の私は「嘘やろ…」と目を見開き、開いた口が塞がらなくなるほど仰天してしまいます。このシーンは後に夢で何度も見てしまうほど恐ろしいものでした。そこからはもう何もかもがボロボロです。何とかして抗おうとはしましたが、既に完成してしまったお相手のジガルデGXとマッシブーンによる牙城を突破する術をこのセット内にどうしても編み出せず、最後はジガルデGXにグランドフォースでこちらのポケモンが倒されてサイドを引き切られて敗北…世界大会で初めて土をつけられた対戦になってしまいました。とはいえ、勝敗が決した瞬間に気持ちを腐らせることなく、素直に負けを認めてお相手へと右手を差し伸べて握手を求めることができて良かったです。

 対戦が終わってからデッキチェックがあるとのことでデッキをケースごとジャッジへお渡しして、この試合を見ていた日本人プレイヤーの元へ向かいました。その時にししゃもさんとお話したのですが、目の前で起こったとんでもない出来事に対する感情を抑えきれず、自然と「何だよあの引きー!!」と「やばいですよね!!」と会話していたのは今でもよく覚えています。この試合はそれぐらい衝撃的な対戦となりました。後日、この配信を見返してみたのですがお相手は終始ほとんど事故っていたのですね…にも関わらず豪運で私を圧倒したので、様々な意味合いでとてつもない相手は世界中にいるのだなということを初めて認識することになりました。

 ここからは余談です。この配信卓での対戦動画を見るとよくわかると思うのですが、私のシャッフルは明らかにおかしいです。それもそのはず…私はファローシャッフルがものすごく苦手なのです。それこそ世界大会出場に合わせて初めてファローシャッフルという習慣を身に着けようと練習してみたのですが、結果的に最後まで上手くできずデッキを2つの束に分けてその束を優しく左右から揉みこむように横に入れるシャッフルしかできませんでした。また、実況をしていた解説者からは「セイタロウのシャッフルはユニーク(笑)だね。あまり見ないタイプの混ぜ方だけど、きちんとランダムに混ぜられているから大丈夫だね」と辛辣なコメントをされていたようです。

結果的に問題のないシャッフルとして捉えられたようですが、目の前にいたジャッジのダーヴィットさんからはものすごく凝視されてしまったので、わりと恥ずかしかったです。とはいえ、私は世界大会へ参加するにあたってシャッフルだけはかなり気を付けていたので、どんなに下手でもシャッフルする際はこのやり方で7回以上横入れをするようにしていました。実際にシャッフルにおいてペナルティを受けてしまった日本人選手も複数いたので、今後世界大会へ参加する方はファローシャッフルを絶対に習得しておいた方がいいです。その際は私のような下手なシャッフルではなく、綺麗に上手なファローシャッフルをできるようにしておきましょう。そうでなければ最悪の場合、私のように世界中からシャッフルのことだけで笑われてしまいます。他にも、私のカードが全体的に右上がそり過ぎていて「まるでプリングルス(※ポテトチップスのこと)のようだ」と配信を見ていた視聴者から言われてしまいました。日本でも海外でもネット上におけるコメントはあまり変わらないようです。しかし、そんなことを言われる日本人は私だけで十分なので、世界大会の配信卓へ憧れを持っている方がいらっしゃいましたら反面教師として覚えておいて頂けると幸いです。

《⑤ 様々な出来事が生じるも15年越しの夢が叶った6戦目》

6戦目 Takuya Yoneda [JP] 22位 WIN
○ ○ ゾロアークGXエルレイド

 配信卓でのデッキチェックを待っている間に次の対戦のマッチングが発表されました。そこで表示された名前は何と Takuya Yoneda [JP] …

いつかは日本人対決をすることになるんだろうなと思っていたけれどついに当たってしまいました。日本でポケモンカードをさせている方ならばほとんどの方がご存じでしょう。2018年日本チャンピオン 現ポケカ四天王のタクヤ選手です。まさかここで彼と対戦することになるとは思いませんでした…しかし、ここで問題が発生します。私の手元にはデッキが無いのです!

慌てて対戦前にタクヤ選手へ「デッキチェックが終わっていなくてデッキが手元にない!」と前もって伝えてから、ジャッジステーションに向かいました。そこからスタッフが通訳とともに配信卓へ再び連れていってくれたのですが、スタッフもデッキがどこにあるかわからない状態だったため、またジャッジステーションに戻ります。そのまま今度は6戦目の対戦卓へ連れていかれたのですが、そこにはタクヤ選手とジャッジが1名立って私のことを待っていました。タクヤ選手には真っ先に「遅れてしまってすまない」と伝えたのですが、彼は「案内が悪かったから仕方がない」と返してくれました。その言葉に私はすごくホッとしました。

突然の出来事が色々と重なってしまい私は混乱し続けます。卓に座るとその場にいたジャッジからは「デッキシールドに不備があったので、対戦前にこの新品のものに私たちの目の前で交換してください。ペナルティとしては警告とします」と告げられました。前日の夜に新品にデッキシールドを変えたにも関わらず起こった事象なので理解が追い付きませんでしたが、とりあえずジャッジに言われるがままにタクヤ選手も含むジャッジの目の前で、付与されたデッキシールド(黒背景のPLAY! Pokemon!のもの)を交換することになりました。

その際、試合に関するロスタイムのようなものを設けてくれるのかが全く分からなかったのですが、タクヤ選手がジャッジから英語で伝えられた内容を私に日本語で訳して下さって、この試合は9分のロスタイムが設けられることを知りました。彼にとっては迷惑以外の何物でもない予想外のアクシデントが私のせいで起こってしまったというのに、この試合をちゃんと成立させるために彼は私を助けてくれたのです。デッキシールドを変えながら私は彼に対して感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 デッキシールドを変え終わり、やっと私たちの6戦目が始まります。お相手のデッキは事前にゾロアークエルレイドということは把握していたのですが、それがいわゆるゾロアークコントロールのような動きをするということまではちゃんと理解していませんでした。しいて言うならば、クラッシュハンマーが入っているということを知っていたぐらい…そう考えると私のデッキはどう考えても不利であるとしか思えません。相性が悪いことはわかっていたけれど、今の自分は精一杯やれるだけのことをしてお相手に勝つしかない。そう考えながら私は彼と戦っていました。

だけど、正直な話をすると私はこの試合のことをよく覚えていません。対戦が始まる前に様々な出来事があった影響だと思うのですが、終わった直後も全然思い出せないのです。そのためかろうじて覚えていることだけを書いてみます。

 1セット目は先攻2ターン目からお相手のエルレイドが完成し、こちら側のゾロアークGXを倒し始めます。対してこちら側はエルレイドを突破する手段がゾロアーク(XY8)のマインドジャックか、ルガルガンGXのストロングエネルギー+ククイ博士でのツメできりさくかデスローグGXしかありませんでした。サイドカードを3枚先攻された状況から、仕方なくデスローグGXでエルレイドを突破してやっとサイドカードを1枚取ります。その返しにお相手はクラッシュハンマー・改造ハンマー・フレア団のしたっぱを多用して私の場にあるエネルギーを枯渇させようと狙いますが、2回投げられたクラッシュハンマーは全て裏でした。対戦中に見えたスカル団のしたっぱやともだちてちょうを見て「そんなのも入ってるの!?」とかなり驚いた覚えがあります。私はこの時点で彼が3戦目の配信卓でどんな試合をしていたのか知らなかったのです。気が付いたらこちら側のサイドがお相手に追い付いていて、「ここで前にいるゾロアークGXをアセロラで回収して、このターンベンチにいるゾロアをゾロアークGXに進化させなければ負け筋は消せる」という状況になり、それに気を付けて冷静にプレイを進めると、お相手はサイドカードをこちらより先に全て取りきることができなくなりました。そのままこちらが先にサイドカードを6枚引き切って1セット目を勝利します。

 2セット目では、お相手が先行を取るもミュウEXスタートに加えてサポートも何も使われずにでターンを返してきます。思わず、「うそっ…!?」と口にしてしまいました。対してこちらは、理想的な展開をしながら盤面を整えていきます。こうなってしまうとルガルガンゾロアークというデッキは、どんなゾロアークデッキよりも前のめりに攻めることができるので簡単には止められません。アズサからお相手が出してきたラルトスをブラッディアイで呼び出しては倒し、ルガルガンGXが積極的に戦ってお相手の場を毎ターン荒らし続けます。その時にもまたクラッシュハンマーと改造ハンマーを投げられたのですが、クラッシュハンマーだけはこの試合でも再び裏しか出ませんでした…1ターンの隙もなくエネルギーを全て壊されなかったルガルガンGXは、まさに最強のポケモンそのものでした。サイドが残り1枚になった時、お相手の改造ハンマーでルガルガンGXのダブル無色エネルギーが壊され、カウンターキャッチャーによってこちらのベンチにいるゾロアークGXを縛られながらターンを渡されました。

そして、ラストターン…私はかつてないほど冷静になってマオを打ちます。「この試合ではまだ使っていないかるいしとダブル無色エネルギーが山札にあるはず…それを手札に加えればデスローグGXで前のポケモンを倒してこの試合に勝利することができる…かるいしとダブル無色エネルギーは絶対にある…絶対にある…!」気が付いたら私の目には大粒の涙が溢れだしていて、まともに山札を確認できる状態じゃありませんでした。それでもしっかりとかるいしとダブル無色エネルギーを選び、とりひきによって山札から手札に加え、その2枚のカードをお相手に見せます。それを見た瞬間、お相手から「…負けで」と言われ、2セット目の勝利が決まります。その瞬間、私は彼に対して「ありがとう」と涙をボロボロ流しながら握手をしていました。

スコアシートを記入して、ジャッジステーションへ向かいスタッフへ自分が勝ったことを告げます。その対戦相手を見てスタッフは大きな声で「Wow! Congratulation!」と祝ってくれました。その瞬間にありとあらゆる喜びが私の身体の中を駆け巡り、思わず声を出しながらその場に泣き崩れてしまいました。まさか大人になってからポケモンカードでこんなに泣くとは思いませんでした。

 タクヤ選手は私が世界で最も尊敬しているポケモンカードプレイヤーです。2003年の夏に当時宮城で行われていた公式イベント:ジムオフィシャルのハーフデッキでの対戦にてたまたま勝つことができた時が、彼と私との初対面でした。しかし、その当時の私は彼のことまだ誰なのかを知らなかったのです。そこからずっとポケモンカードを続けていくと、当然彼の存在は知ることになり、彼が持つポケモンカードにおけるとてつもない実力やストイックさを思い知らされ続けます。どんなに時間が経っても日本のトップを常に走り続けていたタクヤ選手は、あらゆる意味合いで昔からずっと私の憧れそのものでした。2003年から面識があったものの、その後に対戦したのは僅か2回だけ。具体的には2012年秋のバトルカーニバル クライマックスステージ1回戦と2015年秋の バトルフェスタ プレミアステージ3戦目で、いずれの試合でも私は彼に負けています。その彼にやっと勝てたのです。しかも、世界大会の舞台で…この夢を叶えるまでに15年かかりました。ずっとそのためにと言っていいほどポケモンカードを続けていた私にとって、彼に勝てたということはこの上ない喜びでした。

しかしながら、この6戦目においては対戦前に様々なアクシデントがあったり、彼がミュウEXスタートでドローゴーをしたり、彼が投げたクラッシュハンマーが全て裏だったりと、明らかに彼にとって不利な事象が多かったことと私の運が良すぎたということは否定できません。また、相性的な意味合いでも私のルガルガンゾロアークデッキは、彼のゾロアークエルレイドデッキに勝つのがどう考えても難しいほど不利です。私は彼のゾロアークエルレイドデッキならば、2018年の世界大会で優勝できたと本気で思っています。そのため「この対戦で勝った」という事実は、今後私がポケモンカードを続けていく上でとてつもなく重いものになるとも考えています。それこそ世界大会が終わってから半年が経った今でも気持ちの整理ができておらず、その時のことがずっと頭の中で渦巻いているほどです。だから、いつかこの対戦に勝った自分へ向けてちゃんと胸を張れるようになるためにも、私はこれからもポケモンカードをやり続けます。

 とてつもないほどの勝利を収めたことによって、「朗さんなら決勝トーナメントにいける!」と沢山の方々から背中を押されました。自分でもここまで来たらもうこのデッキと共に、世界の頂点へ上り詰めるしかない…そう考えながら今までにないほど緊張感とわくわくを抱きながら最終戦へと臨みました。

《⑥ 清々しいほどに負けてしまった最終戦…そして勝ち取った最終順位は》

7戦目 Michael Bergerac [US] 10位 LOSE
× ○ × レックウザサンダースマーシャドーヤレユータン

 最後の試合は5番卓での試合になりました。1,2番卓はIDをしていたので、それを見て「ここで勝つことができれば5勝1敗1分によって決勝トーナメントに行ける!」という確信しました。隣の6番卓には5戦目に戦ったKlive選手が…互いに頑張ろうと拳を掲げてアイコンタクトを交わしました。

最終戦でやってきたのはとても大柄なアメリカ人。明らかにこれまで以上に強いプレイヤー特有のオーラを放っていた方でした。しかも、すぐ後ろのギャラリーの中には彼のお仲間もいっぱいいたようです。お話を聞くとDay1からここまで駆け上がってきたとのこと。すさまじい勢いに乗ったプレイヤーが最後の壁として私の前に立ちはだかりました。ただ、この試合が始まる前にお相手から「これをGXマーカーとして使っていいか?」と聞かれたのですが、そこにはなんとレシートの裏のような紙にボールペンでGXと書かれていて、その紙を緑色のスリーブに入れているというものがありました。それを見て思わず笑ってしまったのですが、断る理由は無かったのでそのまま「OK!」と返しました。世界大会ではそんなこともありなんですね(笑)

 「Good Luck!」と互いに熱い握手を交わし、1セット目が始まりました。お相手の場にいたのはレックウザGX…サイドイベントと2戦目で勝利していたこともあったので、あまりデッキ相性に関しては気にしないでいました…が、彼のレックウザデッキはこれまで自分が見てきたレックウザデッキよりもとにかく早かった。お相手に先攻を取られ爆発的な展開を仕掛けられるのですが、そこにマーシャドー(SM3+)の特性:やぶれかぶれも経由されたことによって、こちらの手札に対して初っ端から壊滅的な被害を加えてきます。しかも、お相手のデッキには時のパズルだけでなくデンジ、サンダースEX、ニンジャごっこなども見え、「あ、このレックウザデッキは只者じゃないやつだ…」と思い知らされます。極めつけは3枚も見えたねがいのバトン…とてつもなく早いレックウザデッキというわけではなく、様々なアプローチが施されていた素晴らしい構築だったのです。日本のポケカプレイヤーで例えるならば、まるでKouさんが使いこなしているような先攻逃げ切り型のデッキタイプでした。そのまま1セット目はお相手の展開を返すことができずに敗北し、すぐさま2セット目に突入します。

 2セット目では1セット目でお相手には見えていなかったゾロアーク(XY8)が活躍してくれます。2戦目と同じように、お相手にとってはこちら側のGXをただ3匹倒せばいいというプランに対して、甚大な被害を与える役割を担ってくれました。もちろん1セット目と同様にお相手からはやぶれかぶれが飛んできましたが、このセットではしっかりと返す術を持つことができていたので意地で勝利もぎ取りました。そのまま勝負は運命の3セット目にもつれ込みます。

 3セット目では1セット目と同様に先攻をとられて、お相手が爆発的な展開を仕掛けるとともにやぶれかぶれによる妨害をされてしまいます。こちらはそれを十分に返せる術もなく、3ターン目にはゾロアーク(XY8)が1匹しかいないという状況…もう正直、笑うしかないレベルで清々しいほどのやられっぷりでした。私は「参った!」と観念して最後にマインドジャックの宣言だけをして、お相手に向けて右手を差し出し握手を求めました。お相手の勝ちが決まった瞬間、ギャラリーからは喜びの声が上がります。私は無意識にお相手へ「Nice Game!」と素直な気持ちで述べることができました。お相手から再び両手で握手を求めてくれた時は本当に嬉しかった。やれるだけのことをやった上での負けだったので、悔しさよりも気持ちよさのようなものが強かったですね。対戦が終わった後はお相手に対し、「そのレックウザデッキは私がこれまで見てきたレックウザの中でも最も強かった!」と、できる限り賞賛していました。こういう気持ちは日本の大会でも世界の大会でも、自分らしさとして忘れないでいたいものです。

(上記動画の2:46 ~ 2:54にて最終戦のラストは残っています)


 最終戦が終わり予選の最終結果が出ます。それまで自分がどれぐらいの位置にいるのかがよく解っていなかったのですが、ここでハッキリしました。

4勝2敗1分 世界23位

 私は世界23位のポケカプレイヤーとしてTOP32に入賞することができました。貼り出された順位を見た時に「23位…?それならお 23(兄さん)で覚えると語呂が良くていいな!」とえらく気に入っていました。これからは世界お兄さん(23)プレイヤーとでも名乗ろうかなと、そんな悠長なことを考えていました。しかし、その一方で22位の選手の名前を見て、「これはまた1つポケモンカードをやめられない理由ができたな」と、同時に悔しい気持ちも抱いていました。

このタイミングでポニータ石井さんが登場し、TOP32入賞選手としてインタビューを受ける運びになりました。その時のやり取りは先ほど載せた動画の3:00 ~3:14にてそのまま残っています。さらにここで驚きの出来事が。

 TOP32以上に入賞すると賞金(≒奨学金)がリワードとして頂けることは知っていたのですが、いわゆるオリジナルバッグなどの景品はTOP16以上に入賞でしか貰えないと思っていたら、まさかのTOP32以上でもらえることが発覚…私にとってこれは予想外の喜ばしい出来事でした。ジャッジステーションにてオリジナルバッグと共にオリジナルキャップ・Celestial Stormm 2box、TOP32入賞ロゴ入りのChampions Festival 2枚が手渡されます。ウェルカムキットを受け取った時と同様に、これらの景品を受け取った時はとても感慨深く思わず抱きしめてしまいました。私にとってこれは特別な勲章のようなものです。


 自分が世界の舞台に立ってみたらどのような結果になるのだろう?そもそも本当に自分らしく戦い続けることができるのか?と、出場する前はちょっとしたことでもとにかく不安でいっぱいで、何もできないまま負けてしまうのではないかということを、常に考えてしまっていました。

しかし、大会当日は「絶対に勝つぞ」という気持ちよりも、「どんな対戦相手とも楽しい試合をし続けよう、最後までやり遂げよう」」という気持ちで全試合を過ごしました。実際にそのスタンスは達成できたと思います。そして、私の初めての世界大会への挑戦は、自分でも驚くほどの結果を残す形で終えることができました。

正直、自分の実力や練習量などを鑑みるとあまりにも上出来すぎる結果だと思います。大好きなカードとデッキと共にここまで戦うことができたのが本当に嬉しい。自己肯定感が低い故に普段から自分のことを強いと思えない私ですが、今回ばかりは自分に〇をつけてあげて、これからはもっと自分に自信を持つようにしてみようと思いました。

世界大会へ実際に参加するまでは「WCSに行けるのはこれが最初で最後」だと本気で考えていたのですが、この期間を通して「細々とでもいいから
、また世界大会を目指してやっていこう」と心に決めることができたので、私の世界大会への挑戦はまだまだ終わることが無さそうです。ずっと見続けた夢を叶えられると、また新しい夢ができてそれを叶えたくなるものなのですね。どんなに大人になってもポケモンカードは自分にとって夢を与え続けてくれるものなのだと、改めて感じることができました。

世界大会へ出場するにあたって日本から応援して下さった皆さん、本当にありがとうございました!次はこれを読んでいるあなたの番です!

…と、本戦のレポートを書き終えましたが、世界大会の記事はもうちょっとだけ続きます。次回の記事はDay3(WCS 最終日)での出来事と、予備日に現地を観光したこと、帰国までのレポートになります。

もしよかったら引き続きご覧下さい。

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朗(あきら)

ポケモンカードプレイヤーです。2018年に日本代表選手として世界大会に出場しました。 イベントオーガナイザーとしても活動中。宮城県にて公認自主イベント:仙台バトルスタジアムを開催&シティーリーグなどでジャッジをしています。普段のメガネは茶色いメガネ。勝負メガネは黄色い面白メガネ。
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