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ScrumMasterWayにおける私の現在地 - EM or スクラムマスター?-

SpecteeでVPoEをしております、おーのAです。
スクラムでチーム化する活動を始めてそろそろ2年になります。

現在はスクラムチームのエンジニアリングマネージャー(以下、EM)も兼任しています。

今日は #ScrumMasterWay の観点からEMとしての私の現在地について述べていきます。#ScrumMasterWayについてはSCRUMMASTER THE BOOKより引用しています。

スクラムマスターとしてのスタート

弊社でスクラム導入を開始したのは2022年です。それまでの体制はチーム体制をとっていましたが、個々のメンバーをマネジメントしている体制で、チームとして機能しているものではありませんでした。スクラム導入の経緯は割愛しますが、スクラム経験のある私が先導し、弊社でのスクラムの導入を進めていきました。

スクラムの開始当初、私はロールとしてスクラムマスターとしてチームに参画していました。その後、チームにスクラムマスターとして関わることが難しくなっていったため、EMのロールを担っていくことにしました。この経緯についてはSpeakerdeckの資料で述べていますので、ご興味ある方はご覧ください。

スクラムマスターとEMの兼務の難しさについて当時感じていたポイント1つだけ整理しておきます。

私の言うことが「正しいこと」になり、結果的にチームの自由を奪っていた

組織でスクラムを広めた私は、いつしか組織スクラムに詳しい人になりました。しかし、私の言っていることが正しいわけではありません。それにもかかわらず、チームは私の言うことを信頼し、私の意見をとても大切にしてくれます。結果的に、私の考える適応がチームでの適応になるという事象が頻繁に起こっていました。

スクラムガイド(2020版)には"関係者に権限が与えられていないときや、⾃⼰管理されていないときは、適応が難しくなる。(スクラムの三本柱・適応の項)"と記述があります。私がチームに関わることで、無意識的に権限を奪う結果につながっていたのです。

チームが自らの意思で検査・適応をできない状況ではチームが自己管理できている状態にはできないと感じた私は一歩引いたところからチームを支援することに決めました。

EMとしてのスクラムチームとの関わり

このような経緯で2023年から私自身はスクラムマスターのロールを担うことをやめました。開発者兼任のスクラムマスターに委譲しています。(開発者兼任についてツッコミどころではありますが、諸事情がありますので・・・汲んでください)

スクラムマスターを開発者兼任で担うことは非常に難しさがあります。この難しさの解決のために私が関わる必要がありました。

技術的な議論で対立をした時、兼任スクラムマスターの立ち振る舞いが難しいのでEMが支援する

スクラムマスターであれ開発者である以上、メンバーは主張したい場合もあります。この場合の対立をどのように解決すれば良いでしょうか。1つは兼任スクラムマスターが自分の意見をバランスよく取り入れながら議論をうまく収束させるという方法です。これはとても難しく、高いコミュニケーション能力が求められます。このような振る舞いをできる人も過去に何人か見てきましたが、私の感覚では数十人に1人程度だと思います(なお私はできません)。
2つ目は他の人、つまりPOやEMなどを頼るという方法です。

このような場合にEMとしての私がチームのスクラムマスター的なふるまいをしてチームを支援します。

チーム外との連携や会社・組織に対しての働きかけが必要な場合にEMが支援する

チームが十分に成熟している状態では、あまりEMの出番はないかも知れませんが、弊社のチームはまだそのような状況にはありません。

ゾンビスクラムサバイバルガイドでは、スクラムマスターが投資する時間はチームの成長とともにスクラムマスターが投資する隣接するプロセスや組織のプロセスに投資する時間が増える、となっています。

上位の組織のプロセスや隣接するプロセスにまで踏み込むのは多大な労力が必要となるので、開発者兼任スクラムマスターにはかなり負担となります。

このような場合にもEMの私がスクラムマスターとしてふるまうことになります。

余談:スクラムマスター兼EMはあるのか?

結論から言えばアリだと思います。
私の経験では難しかったです。しかし、それはスクラムマスターとしてもEMとしても未熟だったからです。今、兼任をしてみろと言われれば、おそらく以前よりも上手にふるまうことはできると思います。あくまで相対比ですが・・・。

個人的な意見ですが、EMとスクラムマスターの兼任をする上では、両方の経験もあることが前提になります。また、命令的にならずにチームの自己組織化を支援しつつ、チームを牽引することができるようなバランス感覚が必要です。

(と言ったものの、EMの定義の話から色々と考えなければいけないなぁと思いました)

ここまでのまとめ:EMはスクラムマスターとしてもふるまうこともある

現状、EMである私はスクラムマスターとしてのふるまいもしています。

さて、ここまで来てようやく本題の流れに繋がっていくわけですが、改めてスクラムマスターとは何なんだろうか、これについて述べていきます。

スクラムマスターとは何なのか

SCRUMMASTER THE BOOKでは、冒頭にこんな記載があります。

本書では、スクラムマスターの役割について一般的な説明より幅広い定義を与えています。

SCRUMMASTER THE BOOK 本書の読み方

一般的な説明とはおそらくスクラムガイドにあるスクラムマスターのことであると思います。ここで#ScrumMasterWayの観点が関わっています。まずは#ScrumMasterWayについて私と組織・チームとの関わり方に触れながら説明します。

※本節ではダブルクォーテーションで囲った内容は全てSCRUMMASTER THE BOOKの引用です。

#ScrumMasterWayにおけるレベル1:「私のチーム」

レベル1は「私のチーム」です。"自己組織化した開発チームを作ること、スクラムの価値観とアジャイルなマインドセットを持ってもらうことです"。私の活動で言えば、初期のスクラムマスターをやっていた時期に該当します。

ロールとしてのスクラムマスターを離れた今もチームに対してスクラムやアジャイルについて説明したり理解を促したりすることがあります。(もちろん私の理解も不完全ではあると思っていますが)。

では、現在のチームのスクラムマスターに全て委譲できるかというとそれも難しい話です。なぜなら、現在のスクラムマスターは経験を積んでいる最中でスクラムについて分からないことがたくさんあります。

現状、私もチームのスクラムマスターもこのレベル1の活動をしていることになります。

#ScrumMasterWayにおけるレベル2:「関係性」

レベル2は「関係性」です。移行時期として、"あなたはチームがいい状態だと感じています。第二のレベルに移行して関係性に注目するべき時期です"と記載されています。やるべきこととして、"チームが持つあらゆる関係性や繋がりを強化すること”が求められます。

私は今この状況に置かれています。この2年間、エンジニア組織でスクラムチームを作ることに努めてきましたが、全てのチームがビジネスチームや経営層を巻き込んでアジャイルマインドで取り組めているかというと、まだそこまで至っていません。

ビジネスとエンジニアの間の障壁を取り除きながらいかに早く顧客へ価値を提供できる仕組みを作っていくかを模索している最中です。

この際に大事になってくるのが「私と人の関係性」です。
文化の異なる組織を巻き込みながら、"協力関係を継続的に改善し、永続的に順応し続ける、そうした環境づくり”をするためには私自身の関係がとても重要になると感じています。今まさにこの「私と人の関係性」の構築に注力しているところです。

レベル1の「私のチーム」に注力している場合、私のチームを最優先に考えることができます。チーム外とのコンフリクトが生じた時にはチームが有益になるように働きかけることもあります。しかし、それにより他チームの人との関係性が悪化することも考えられます。

私のチームと他チームとの関係性を構築しながら、チームがさらに検査適応していくことができるようになった今、私はレベル2に取り組んでいるのだと感じています。

#ScrumMasterWayにおけるレベル3:「システム全体」

レベル3は「システム全体」です。ここでは企業全体として考えます。

"レベル3ではスクラムマスターの焦点はシステム全体に移り、アジャイルのマインドセットとスクラムの価値観を企業レベルに持ち込みます。そうすることで、従業員の接し方、マネジメントやリーダーシップのスタイル、プロダクトオーナーシップや戦略にいたるまで、組織がそのやり方を変えるのを手助けします"

かなりハイレベルですね。もちろん企業レベルで取り組めている会社ももちろんあると思います。弊社はまだまだやれることがあります。

会社内での役職・ロールとスクラムマスターの関係

#ScrumMasterWayの説明をしてきましたが、ここまで読むと分かると思うのですが、多くの日本企業で与えられている「スクラムマスター」のロールの人がレベル3まで到達するのは難しいのではないでしょうか。レベル2ではいわゆるマネージャーの仕事、レベル3では経営層の仕事と感じる人が多いのではないでしょうか。

もちろん全ての企業ではないですが、日本企業は依然として階層構造の組織を基本としています。このような企業の在り方でロールとしてのスクラムマスターがレベル3に到達することはかなり難しいです。

では、#ScrumMasterWayの言うスクラムマスターとは何なのでしょうか。

#ScrumMasterWayのスクラムマスターとは?

スクラムマスターの目標について、SCRUMMASTER THE BOOKでは以下のように記載されています。

スクラムマスターは自己組織化したチームを構築し、企業のあらゆる階層で基本原則として自己組織化が行われるよう努力します

SCRUMMASTER THE BOOK 第1章スクラムマスターの役割と責務

私は#ScrumMasterWayのスクラムマスターとは「組織を良くしたいと思い、働きかける人」だと理解しました。これにロールや役職は関係ありません。組織に関係する全ての人がスクラムマスターになることができるのだと思いました。

ここまで私はスクラムマスターやEMをロールとして担ってきましたが、現在ではスクラムマスターは私の人生のあり方そのものなのではないかと考えています。

ロールとしてのスクラムマスターと#ScrumMasterWayとしてのスクラムマスターを意識しながら仕事と向き合っていきたいです。

まとめ:私は"偉大なスクラムマスター"への道を歩んでいる

EMの役職を担っているとしても「組織を良くしたいと思い、働きかける人」であることに変わりはありません。ロールとしてのスクラムマスターに囚われることなく、スクラムマスターの認識・理解を深め、偉大なスクラムマスターを目指して頑張っていきます。

長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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