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消えた航空機 マーチンXB-68 3発ジェット機案

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東西冷戦の時代には、アメリカでも旧ソ連でも様々な兵器が考案され、開発・試作されました。
もちろん、その中から実用量産化されたのはごく一部のもので、それらの多くは形にもならずに、設計図やデザイン案のみで忘れ去られていきました。

そんな計画案の一つに、マーチン社(現在はロッキード社と合併しロッキード・マーチン社)が開発しようとして計画中止になったマーチンXB-68爆撃機があります。


アメリカ空軍のウェポン・システム302A戦略爆撃機計画に対し、マーチン社が提出したのがマーチン・モデル316という計画案で、画像のような中翼配置の後退翼の主翼に、T字尾翼を組み合わせた長い胴体の双発ジェット超音速爆撃機案でした。
ウェポン・システム302Aのコンペティションにはボーイング社とダグラス社も参加しましたが、採用となったのはマーチン社の案でした。
1954年の計画提示から1962年~1965年の間までに米空軍に納入する予定でしたが、開発に関する予算が十分ではなく、計画は1957年にキャンセルされました。

さて、この文章のメインはこのマーチン・モデル316ではありません。
実際にモックアップが作られるまでに至ったマーチン・モデル316とは別に、その計画案とはあまりにもかけ離れている、XB-68として紹介されていた3発デルタ翼ジェット爆撃機案の方です。
もちろんこの機体案は、昨今のアメリカの爆撃機計画を扱った書籍では一切見る事が出来ません。
この画像は、1962年に刊行された「U.S.Bombers B1 - B70」に掲載されているものです。

実は、この本に掲載された本機の三面図には、PROVISIONAL(暫定)の文字が書かれています。つまり本機は、「U.S.Bombers B1 - B70」を刊行するにあたり、暫定的に掲載せねばならなかった機体なのです。

1962年と言えば、マーチン・モデル316の開発が成功していれば早くて初号機の空軍納入が終了していなければならなかった年です。もちろん東西冷戦のまっただ中で、米空軍としては予算不足による計画のキャンセルをソ連に悟られたくなかった時期であると推測されます。
この時期に、このような大型デルタ翼3発ジェット超音速爆撃機をでっち上げてソ連軍の眼を欺こうとしたのだと思われます。つまりこの機体は、東西冷戦の残滓なのです。

現在では東西冷戦が終結し、XB-68が計画中止となった理由を隠す必要もなくなったためにXB-68=マーチン・モデル316となってしまいましたが、時代の影にはこのような目的で考案され、模型が作られて消えて行った航空機も存在したという事なのです。

……という事をイカロス出版のMC☆あくしず Vol.35 のかこいかずひこさん連載記事「ぱすぽん!」の「米ジェット爆撃機開発物語」(後編)向けに調査協力いたしましたので、みなさまよろしくお願いします!!!【宣伝かよw】

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