行きつけの定食屋で、女店主の娘が常連の客に、夫への嫌がらせの話をしていた。そうそう、女店主の娘は結婚している。
「だんなとけんかして、すごくむかついたときにやる嫌がらせの極めつけがあってね。やつが風呂に入ろうとして、服を脱ぎ、眼鏡をはずすでしょ。その眼鏡をこっそり隠すのよ」
「陰湿だな、それ」と常連客。
「風呂から出ると、中腰で手探りで眼鏡探しているけど見つからない」と娘。
「そんなに目が悪いのか」と常連客。
「そうなの。そのうちお～い、眼鏡知らないかあ！って大声で聞いてくる。で、テレビずっと見てたふりしながら、知らな～い、って答えてやる。もうおかしくって」とうれしくてたまらない様子の娘。
「陰湿だぞ、それ」と常連客。
「私が気が済んで眼鏡を出してあげるまで、絶対見つからない」と娘。
「携帯なら、別の携帯で呼ぶとブーブーいうから見つかるのにな」と別の常連客。
「そんなら眼鏡も携帯で呼ぶとブーブーいうようにすればいいのにな」とまた別の常連客。

ありとあらゆるものが携帯で呼ぶとブーブーいうようにできたら便利だろうかと夢想した。
鍵、時計、財布、ハンカチ、ポケットティッシュ……。

眼鏡、眼鏡、とオロオロする横山やすしが、おおそうだと携帯で眼鏡を呼ぶが、頭の上の眼鏡がブーブーいったためにウワっと驚いて、頭から眼鏡を払い落として、グシャっと踏んでしまって……。

2005年06月08日