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ブランドは自分の「弱点」とどう向き合うべき?

FICC BX事業部の福岡です。前回の記事「ブランドの本質を初めて理解できた」「今後の更新が楽しみ」など想像以上のポジティブな反響に驚いています!2回目の今回は皆さんの頭を悩ませるブランドの「弱点」のお話です。皆さんはどうすれば競合と戦えるブランドが作れると思いますか?

ブランドが持っている「強み」とは

ブランドを抱えている皆さんに方針によく聴くのが「他社に負けないように、他社がやっていることを真似しよう」というものです。そのお気持ちはよーくわかります。負けているところを埋めることで、自ブランドが挽回することができる――確かに一理ありますが、悲しいかな足りないところなんてものは探せばいくらでも出てきてしまうものです。

叩けばいくらでも出てくる「弱点」よりも、まずはそのブランド自身にしかない「強み」、そのブランドだけが提供できるベネフィットに目を向けるべきです。

ブランドは「機能・性能」を保有しています。男性用カミソリなら「5枚刃で肌に優しく深ぞりできる」といったスペックのことです。そのスペックから「メリット」が導き出せます。男性用カミソリの機能・性能は「鋭い切れ味と肌に優しい構造」、そこから得られるメリットは「剃り残しや傷のないきれいな顔になれる」でしょう。

ではそのメリットはターゲットのどのような自己像を実現してくれるでしょうか?会社員であれば「上司から良い評価を得られる私」かもしれませんし、娘を持つ父親であれば「娘から嫌われない親」かもしれません。この理想の自己像を実現してくれることこそがブランドが提供するベネフィットなのです。

ベネフィットが新しい市場を開く

バルミューダは自身の提供するベネフィットに対して最も自覚的なブランドと言えます。震災後の節電需要をきっかけにヒットした扇風機・The Green Fanを皮切りに、おいしいトーストを焼けると評判のBALMUDA The Toasterも大ヒットを記録しました。このトースターが持っている機能・性能はスチーム機能と温度管理機能といったところで、全体はシンプルな製品です。

多くのブランドが機能や性能、そこから得られるメリットを訴求する中、BALMUDA The Toasterは「最高の朝が迎えられることで、豊かな朝を過ごす余裕を持った人になれる」というベネフィットを提供することで他社とは一線を画するブランドを確立することができました。

ベネフィットが明確になった結果、何が起こったでしょうか。これを読んでいる方やその周囲にBALMUDA The Toasterを実際に買った方がきっといらっしゃるでしょう。その人は何か別のトースターと比較してBALMUDA The Toasterを購入したでしょうか? きっと今までトースターなんて興味がなかった人ではありませんでしたか? 

ベネフィットからブランドを考えることで、ただのトースターとは違う市場が開ける――直接競合との競争から抜け出し新たな収益源を確保できるのです。

ブランドの弱さを減らし、強みに光を当てる

新たな市場が開ける…とはいえブランド担当者の方には「上から競合に勝つことを求められていて、そこでしか評価されない…」と嘆いている方も多いことでしょう。競合と戦う際に重要なのは競合同一性(Point of Parity、略してPOP)と競合差別性(Point of Difference、略してPOD)です。

先ほどのバルミューダを例にとると、扇風機やトースター、空気清浄機など構造がシンプルなものはPODたるベネフィットをうまく訴求することができていますが、電子レンジや炊飯器などの高度なセンシングが必要な製品に関しては長年の技術を培ってきた老舗メーカーに努力にPOPが追いついていないように感じます。

「同一カテゴリーの製品なら備えて当然と期待されている要素」はPOPとして押さえておかなければ、どんなに素晴らしいPODがあっても検討にすら上がらないかもしれません。検討に値するだけのPOPと、競合の持たないPOD、そして競合の定義を変えるベネフィットを考えましょう。

今後もFICC BX事業部公式マガジンからブランドやブランディングにまつわる知識をわかりやすくお伝えしていきますので、マガジンのフォロー(と私のフォローも🙇)をよろしくお願いいたします!

福岡陽。FICC inc. ブランドエクスペリエンスクリエイティブ事業部 ブランド・ストラテジスト/クリエイティブディレクター。