近年世界で立ち上がりつつある「即興型ディベート・スタートアップ/NPO・NGO」

昨今即興型ディベート界でトレンドになっているのは、「即興型ディベート・スタートアップ/NPO・NGO」の台頭です。海外では、即興型ディベートのコーチングを中心のサービスとした企業が増えてきているのです。この界隈に15年以上関わっている方に伺っても、「一昔前はコンサルタントが流行っていたが、最近は皆スタートアップやNPO・NGOに入る傾向にある」と言っていました。

例えば、Capstone社。中国や香港で、パブリック・スピーキング及びディベートのトレーニングプログラムを提供しています。2020年の世界大会の審査委員長もコーチを務めています。ハーバードやケンブリッジ大学と提携しているのも特徴ですね。

LearningLeaders社も中国でディベートやパブリックスピーキングのサービスを提供しています。過去の世界大会の優勝者もコーチとして在籍していますが、近年中高生を対象にぐんと事業を拡大している印象にあります。最近ディベート大会の協賛等もしています。

Debate Koreaは、韓国でディベートのトレーニングや大会運営等を行ってるNPOです。スポンサーにはAir AsiaやRed Bullも名を連ねています。

Debate for Allは、こちらも韓国のNGO/スタートアップです。世界大会の副審査委員長の方が設立されています。

これらはほんの一例ですが、他にもアメリカ、シンガポール等多くの地域でスタートアップやNGOが台頭しているようです。また、一方で、NGOという形態をとっていたかは不明ですが、地域の自治体のプロジェクトとして、不登校の問題などにディベートが活用される例も韓国ではあるようです。コミュニケーションスキルや、学力の向上、さらには自尊心の改善にも役立ったという学術的な調査結果が出ています。中には「落ちこぼれ」というレッテルを貼られた中高生がディベートで成果を出し、そのおかげで自信を取り戻したというサクセス・ストーリーもあります。

これらを見ていると、幾つかポイントが見えてきています。

1.主に中高生が中心の顧客のようですが、世界的にみるとリーダーシップ教育の文脈でのディベート市場が拡大しているのかもしれません。ディベートをコアのサービスとしながらも、プレゼンテーション/パブリック・スピーキング等とセットで行っているのが特徴的です。(もともと即興型ディベート経験者は、経営層向けのプレゼンやスピーチのアドバイザリーを行うことが多かったようです)

2.一方で、マス向けの教育としてのディベートも注目されているようです。どのような人であっても、自分の意見を他者に表明する、自信をもって話す、多様な価値観に触れる、等等、色々なスキルを身に着ける上でディベートはとても有益です。身につく3つの効用はこちらですでにご紹介していますが、私は「ドア・オープナーとしてのディベート」の可能性も感じています。

3.そして、最後に、競技ディベーターの最前線にいた経験者が教育や社会貢献に乗り出していることもポイントです。上記の例を見ても、世界大会の優勝者、審査委員長/副審査委員長などが全力でコミットしているわけです。安直かもしれませんが、ディベート教育の質が高まることが期待できるのではないでしょうか。

今後も、即興型ディベートのスタートアップやNPO/NGOから目が離せません。

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