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THINK TWICE 20211121-1127

11月21日(日) CLOSING

2009年から通算12年間借りていた自前のレンタルサーバを解約。ドメイン(akiramizumoto.info)の契約はもうちょっと先まであるが、そっちもこれ以上、延長なんてしないなんて言わないよ、なんて言わないよ絶対。

情報の取り入れ口の主流はSNS。個人で個人の活動を宣伝する/発信するためのウェブサイトを少額とはいえ、コストをかける意味がさすがに見いだせなくなってた。3年前、ずっと使っていたドメイン(akiramizumoto.com)を諸事情で手放すことになり、新しいドメインに切り替えたところで、この契約期間をひと区切りにしようと決めていた。

ウェブ上で日記を書きはじめたのは1996、7年だったかな。ぼくは20代後半で、サブカル界の端っこになんとなく居場所を見つけ、仕事したり、遊んだり、喧嘩したり、仲直りしていた。やってること自体は今とさほど変わらない。でも、日記に出てくる固有名詞は今よりずいぶん華やかだった。交遊録として興味を持ってくださる人もそれなりにいただろう。

どこで誰に会って、何をしたか、といったことを細々と記録して、オープンにするのはそれなりに楽しかった。表立って書けないことも山ほどあったけど(笑)、他にまだやってる人も少なくて、ちょっとだけ目立ってた分、友だちや知り合いから「勝手にアレを書かれちゃ困る」なんてお叱りを受けることもたまにあった。「プライベートな日記なんだし、何十万人も見てるわけじゃないんだから、そんな神経質にならなくても……」なんて心の中で思ってたけど、それもひとつの反響として素直に受け止めてたな。相手のリクエスト通りに削除したり、ぼやかしたりして───そういうことも今となっては青春というか、いい思い出だ。

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懐かしのサンシャイン牧場、通称《サン牧》。

たかが12年、されど12年。TwitterもInstagramもFacebookもYouTubeもとっくにあった。mixiにも毎日のようにログインして「サンシャイン牧場」に野菜を植えたりしてた。SNSはここ数年で急に伸びたわけではなく、プラットフォーム自体、その頃からあまり代わり映えはしていない。使ってる人たちの意識や依存度が変わっただけだと思う。

いきつけの喫茶店や食堂を紹介することも、おすすめの音楽や本を紹介することも、散歩中に見つけた面白い風景を写真に撮ることも、その道のプロというか、それぞれの分野に専心して、もっと一生懸命やってる人たちがいる。まとめれば専門書になるような濃ゆい発信をおのおのが行なっていて、それをいくらでも無料で拾い読みできる。ぼくのような雑誌型───雑食で、軽薄な情報発信はもう時代に合わないんだな、と思ったりする。

恨みごとみたいに読めちゃうかもしれないけど、全然そうではなく、第三者的に自己分析したとき、そう見えてるってことです。

でも、こうしてnoteをできるだけ毎日書く、Instagramで発信する、ときどき本を出す、ときどきお客さんの前で話す。ぼくのような仕事にとって、承認欲求はそれなりに有用なガソリン。でも、結局、自分の性に合ってることしか続けていけないんだよね。


11月24日(水) The Turn of The Screw

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年末締切の案件や、月末に更新しているMustakiviのnote連載を執筆したり(労作なんで公開されたらぜひ読んで欲しい)、来月には出そうと思っている武田百合子本の続刊の推敲をまた始めちゃったり、なんとなくバタバタ。

こういうバタバタしてるときだからこそ、文章だけは時間をかければかけるほど良くなっていくということに救われる。音楽や映像だとこうはいかない。何回か録り直したけど、結局ファーストテイクが勢いがあって一番良かった、なんてことがH&M……じゃなくて、ザラにあるから。

その点、文章は直せば直すほど、言葉の精度は増していく。昨日まで言語化できずにモヤモヤしていたことが、今日になって急にうまく表現できたりする。推敲を重ねることでグルーヴが欠けてしまった部分は、前後左右を見直し、ネジを適度に締めあり緩めたりして直せばいい。

もちろん料理と同じでサッと炒めて、すぐに食べてもらうほうが美味しい文章もある。鍋で何日も煮込んだほうが美味しくなる文章もある。でも、大抵の食材は弱火でじっくり……の方が美味しくなると思う。たとえば目玉焼きだって濡れ布巾でフライパンの温度調節をしながら、弱火でじっくり焼き上げるほうが断然美味しいしね。

11月25日(木) If I Am Rich Man...

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脚本、絵コンテ、イメージイラストなどが詰め込まれた夢の一冊。

かの有名なアレサンドロ・ホドロフスキーの『DUNE』本が、クリスティーのオークションに出品されていた。予想落札価格は25,000ユーロから30,000ユーロ(約400万円)。メビウス、ギーガーといった仲間たちと、上映時間にして12時間分、この何万倍の予算で映像化すべく練り上げた、途方も無いアイディアがここに詰まってるんだから、数百万なんて、安い安い。

───と思って蓋を開けてみると、落札価格は驚異の266万ユーロ。つまり3億4千万円。競り落としたのはDUNEのファン組織"DAO"。Sobyというメンバーが個人資産(!)で落札。今後は資金を集めて、所有権を組織に移し、みんなで共有するためにさまざまな計画を進めるんだって。理想的なお金の使い途。


11月26日(金) Hot

タヒチ80の新曲「Hot」。2年前の『Fear Of An Acoustic Planet』がセルフカヴァー物だったから、『The Sunshine Beat Vol. 1』(2018年)以来のオリジナル。パンデミック下で進めたレコーディングはリモートだったみたいだけど、もともと彼らってバンドサウンドといっても非常に密室的で、宅録的な雰囲気が強かったから、良い意味でいつもと同じ。

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Tahiti80 “Hot“ Artwork by Laurent Fetis

アートワークもデビューアルバムの『Puzzle』以降、おなじみのローラン・フェティが担当。砂漠(砂丘)モチーフで『DUNE』っぽいね。

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Mellow “Another Winter Mellow“ Artwork by Laurent Fetis
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Mellow “Instant Love“ Artwork by Laurent Fetis

ローランのアートワークで思い出深いグループはMellow。エールの兄弟分みたいなバンドで、日本でもそれなりに人気があった。今でも時々聞き返すけど、エールより悪くないんじゃないかと思ったりする。

すっかり音沙汰もやみ、とっくに解散したと思っていたら、2014年のレコード・ストア・デイにフランスオンリーの7インチシングルを発売。このYouTubeのコメント欄には「もうすぐ出るアルバムからの先行シングルだよ」って書いてあったけど、あれから7年。まだ出す気はあるんだろうか?

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