04. Design RationaleとModel

Design Rationaleの基本的な構成要素は、Model(モデル)である。Model(モデル)とは、私たちが観察した現象・仕組みに対する最もらしい説明を可能とする仮説のことを指す。このある事象から仮説を導き出す論理的手法のことをAbuduction(アブダクション)という。

なぜDesign Rationaleは、いくつものModelから構成されるのか?
それは、Modelが対話型のParticipatory Design Processにおいて参加者が議論し、合意しようとする対象であるからだ。

例えば、新規事業創案のワークショップにおいては、その新規事業が対象とする顧客(ユーザー)がどのような体験をするかどうかをペルソナやカスタマージャーニーマップなどを用いて可視化する。これらのフレームワークは、実際の顧客(ユーザー)を寸分違わず描写したものではなく、あくまで彼らの「最もらしい」行動を仮説として纏めたModelである。

このModelは、どのような検証をすべきかという次の行動指針を示してくれる。そして、この検証プロセスを踏むことで既存のModelを実証したり、反証したりして、新たなModelを生み出す。


Modelは、異なる抽象度を扱うことができ、ビジネスやサービスが提供する価値といった存在に近いほどその概念的抽象度は高く、顧客(ユーザー)が直接関わり合いを持つことが出来るモノ(インターフェース)になればなるほどその概念的抽象度は低い。

ソシオメディア株式会社の上野学さんは、先日Twitter上のでUIについて以下のように語っている。自分の認識が正しければ、Modelと上野さんのいう「見立てる」は、同意義な言葉として理解することが出来るのではないだろうか。

対話型のParticipatory Design Processにおけるデザイナーの役割とは、先ほど説明したModelの可視化とその積み重ねであり、Design Rationaleとはそのプロセスの結果を纏めたものとして生じる副次的な成果物のことをいうのだと認識している。

デザイン制作の場においてもDesign Rationaleと類似の存在などはあると思う。しかし、この文章の中で自分が指し示すDesign Rationaleは、「デザイナーがプロジェクトのファシリテーターとして対話型のParticipatory Design Processを通し、参加者共通のModelとその変化を纏め、反映させたもの」であるという点で、デザイン制作の場で用いられるそれとは少し異なるのではないかと感じている。

この「参加者共通のModel」= Boundary object という存在があるかないかによって、Participatory Design Processの対話の質とそこから生み出されるプロダクト/サービスの質は、相関的に変化すると信じている。


自分がこのnoteでDesign RationaleとModelとの関係性について言語化を始めた時に、Design Researcherである清水淳子さんが研究・啓蒙をされているグラフィックレコーディングで、彼女自身が書いた「モデル」とデザインプロセスの参加者の「モデル」をすり合わせをする場面をTwitter上に公開してくださっていた。

01. デザイナーとその役割の変遷のnoteの中で、

つまるところ今のデザイナーの役割は、MIT Media Lab Directorである伊藤穰一さんが言うように大量生産の中核を担う設計の専門家からサービスクラフトの制作を一緒に行う「参加者・ファシリテーター」になっている。

と書いたように、清水さんのツイートは、専門家としてのデザイナーではなく「参加者・ファシリテーター」としてのデザイナーの役割を追求している最中なのではないかなと感じさせてくれるものだった。

デザイナーの押し付けでは無い、共創(Parcipatry Design Process)から生まれる価値とそれを機能させる情報空間を設計すること。

自分は、この共創の「参加者」の一員として、Design RationaleとModelを対話の場に持ち込み、この先も試行錯誤していきたいと思う。

・・・

On Design Rationale

00. Introduction
01. デザイナーとその役割の変遷
02. Design Thinkingとデザイナー
03. Design RationaleとDesign Methods Movement
04. Design RationaleとModel

・・・

References:

Arango, Jorge. 
Living in Information: Responsible Design for Digital Places

Dubberly, Hugh.
Models of models
A Systems Perspective on Design Practice.

清水 淳子
https://twitter.com/4mimimizu/status/1099087071862374400

上野 学
https://twitter.com/manabuueno/status/1095323109471641602



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

今後ともどうぞよろしくお願い致します:)
7

akiramotomura

On Design Rationale

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。