Design_Rationaleのススメ

03. Design RationaleとDesign Methods Movement

Design Rationaleは元々、第二次世界大戦後に少数のChristopher AlexanderやHorst Rittelなどを含むデザイン有識者によるDesign Methods Movement (DMM)から生まれたものである。このDesign Methods Movementは、デザインは客観的な存在であると定義した上で、デザインと科学を結びつけようとした運動のことを指す。

しかしながら、このDesign Method Movementの創始メンバーの1人であるHorst Rittel自身は、「デザインは、本質的に事象そのものをそのままに観察することを目的とした客観性は持たず、その事象がどうあるべきかを定義することを目的とした主観性を持つ」として、この運動を否定している。

この論拠に基づいて新たに生まれた運動が「次世代」のDesign Methods Movementであり、科学的な手法を機械的にデザインにあてはめた産業革命的なデザイナーによるデザインから、他(デザインされたものを使う人々:ユーザー)を巻き込んだ参加型のデザイン・ファシリテーションとしてのデザインを提唱した。

Hugh Dubberlyは、Horst Rittelから現在のデザイナーが学び取れることとして以下のことをあげている。

1.
既に定義がされている問題は、解決するに易い。なぜなら問題を定義することこそが、そもそも解決策を定義するからだ。

2.
問題の定義は、主観的である。なぜなら、その定義はある特定の観点からくるからだ。したがって、問題を定義する時、全てのステークホルダー、専門家、デザイナーが平等にその問題について精通している(または、していていない)。

3.
いくつかの問題は解決することができない。なぜなら、ステークホルダー達がそれらの問題の定義に同意することができないからだ。このような問題は 「厄介な問題」呼ばれるが、それらを取り扱うことを可能にすることはできる。

4.
単純な問題の解決は、向上(Improvement)を導くかもしれない—しかしそれは、革新(Innovation)ではない。革新を達成するためには、厄介な問題を再定義する必要がある。たった一人の人間では到底厄介な問題に関する(現状と最適な状態の両方の)全ての変数を記憶しておくことが不可能なので、厄介な問題を取り扱うことを可能にする為には、多くの人を必要とする。

5.
これらの人々は、対話をしなければならない。彼等は、審議しなければならない。彼等は、議論しなければならない。

6.
厄介な問題を取り扱うことを可能にする為には、彼等はそれを達成する為のゴールとそれを達成するための行動に対して同意しなければならない。これは、ただの事実関する知識だけではなく、行動に対しての知識を必要とする。

7.
科学は、事実(なに)についての知識を扱う。デザインは、状態の変革(なにはどうあるべき)に関する知識、行動がどのようにゴールと結びつくかについてを扱う。

8.
この議論のプロセスが、おそらく厄介な問題を取り扱うことを可能にする唯一の鍵であり、手法である。

9.
このプロセスは、政治的である。


10.
Design is political.

HughがRittelに学び説得された通り、結局のところ体力のある組織で、腰を据えたプロジェクトからサービスを生み出そうとすることは、政治的で途方もないデザインに関わる変数を考慮していかなければならない。

このような複雑を極めるデザインプロセスを成立させると同時に、そのデザインされるものに関して関わる全ての参加者にとってオープンなものとする為に、Rittelが考案したモデリングの手法の1つがIssue-Based Information Systems (IBIS)であり、のちにビジュアル・ファシリテーションなどを含むDialogue Mapping(対話のマッピング)の手法も生むきっかけとなった。

そしてこれらが、対話型のParticipatory Design Processを明確に記録・可視化してくれるDesign Rationaleの基本である。

・・・

・・・

On Design Rationale

00. Introduction
01. デザイナーとその役割の変遷
02. Design Thinkingとデザイナー
03. Design RationaleとDesign Methods Movement
04. Design RationaleとModel

・・・

References:

Reznich, Christopher.
1973

Rith, Chanpory. & Dubberly, Hugh. 
Why Horst W.J. Rittel Matters


基本的に今後も記事は無料で公開していきます。今後もデザインに関する様々な書籍やその他の参考文献を購入したいと考えておりますので、もしもご支援いただける方がいらっしゃいましたら有り難く思います🙋‍♂️