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【タカホとアキラの往復書簡】 engagementの本質は、「約束」

タカホからの手紙
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この本では、「かかわり(engagement)」という概念がメインテーマになっているのですが、この本を読んでいて、まったくそのプロジェクトに思い入れも何もない人がアサインされた時、どうやってその人とプロジェクトの「かかわり(engagement)」をつくっていけばいいだろうと思いました。
一昔前は、飲ミュニケーションで親睦を深めるといったことがありました。最近では長尾さんのご専門であるチームビルディングもありますが、これらは人同士をengagementしますが、人とプロジェクトをengagementさせるでしょうか?
私はこれまで「自分で仕切って、タスクを与え管理する」式のプロジェクトばかりやってきたため、このengagementという概念を知って、考え込んでしまいました。

「人とプロジェクトをどうengagementさせるか?」

長尾さんはどのようにお考えになりますか?
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この問い、ずいぶん長いあいだ考えました。

書いては消し、書いては消しを繰り返してたどり着いた答えは、engagementの本質は「約束すること」ということ。

約束、はお互いの合意と同意に基づきます。
約束、はお互いがその約束を尊重します。
約束、はお互いがその約束が続くように努力します。

契約とは違います。
契約は破棄されることが前提で、内容を交わします。
契約内容に基づいて契約を解消することができます。
約束は、破られないことが前提です。
約束は、解消することができません。
約束は、果たされるために存在します。

人はプロジェクトにengageします。

「このプロジェクトを最後までやりとげる」
「このプロジェクトで望む成果が出るように全力を尽くす」
「このプロジェクトはとことん楽しむ」

これらの表現は、人が主体的にプロジェクトに対して約束をしています。
プロジェクトに対して、自分自身に約束をしています。

自分自身に約束することを「コミットメント」というと思います。
それは他者に与えられたり強いられたりするするものではありません。

人がプロジェクトにengageするには、プロジェクトの側にいくつかの条件がありそうです。「engageされやすくなるプロジェクトの設計要因」といったところでしょうか。

1.ひとりでは達成できない
2.全員で協力せざるを得ない
3.制限(お金・時間・道具・人材)が明確になっている
4.ゴールが明確になっている
5.目標と指標を自分たちで決められる
6.テーマがあり、体感・実感できる
7.プロジェクト終了後、メンバー同士がプロジェクトを通して何を共有したか、明確になっている
8.プロジェクトを始めた人が、そのプロジェクトを通じて伝えたいことが明確にある
9.自分の考えを整理するための省察(ふりかえり)と観察の機会が十分に設けられている
10.参考にできる事例が少ない
11.最初の時点で達成できるかどうかがわからない
12.再チャレンジ可能
13.難易度が調節できる
14.「フロー」が体験できる
15.現実と理想のギャップを明確にできる(できている状態とできていない状態が明確にわかる)
16.対話を通してお互いを理解できる
17.プロジェクトの継続可否(続けるか・やめるか)を自分たちで決めることができる
18.役割や職位、所属や出自を問われない
19.心理的安全が確保されている
20.自然発生したモラル(ルール)が重視される

こんな条件が揃ったプロジェクトは、engageしてもらいやすいのではないでしょうか。
プロジェクトにengageされた人は、自ずと成果を残すことにコミットメントするでしょう。

ということは、「成果にコミットしなさい」と指示・命令するより、「いつのまにかコミットしてしまう」ようなプロジェクトの条件・要件・目標・指標の設計やデザインが必要です。

契約関係でのコミットメントは、金で強いることがてきます。
約束(engagement)関係でのコミットメントは、金で強いることはできません。

約束は、「共感」で強化されます。
納得感と信頼感でengagementが涵養されます。

さて、ここで前田さんに質問です。
ここまで僕は、「これが、わたしのプロジェクトなのだ」とプロジェクトに人がengageされる条件を思考・整理しました。

では、プロジェクトにengagementされやすい人は、どんな人でしょう?
どんな特長や、どんな特性を備えた人が「プロジェクト向き」なのでしょうか?
反対に「プロジェクトに不向き」な人は、どんな特長や特性を備えていると思いますか?

次のお便りを楽しみにしています。

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