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Pradaを目指す学生達へ

今日はゴールにどうやって辿り着くかを少し話したいと思う。僕はアメリカでカレッジ在学中にテイラーに出会ったことがきっかけでデザイナーを目指すことになったのだが、その時に既に25歳になっていた。そこからカレッジを辞めて帰国し学費を貯め直して服飾専門学校に入った時には28歳になっていた。

学費を貯めていた当時、自分のモチベーションが落ちない様に専門学校の夜間のスキルアップコースを受講していた。ベーシックパターン(パターン=型紙)も知らないのにパターンメイキングのスキルアップコースとファッションドローイングのクラスをとっていた。(本当に何の知識もなかったので学ぶ順番も分からず取り敢えず選んでみたクラスだったが、自分なりにかなり楽しかった記憶がある)

当時僕よりも6〜7歳も若いクラスメイトと話していた時に目標を話し合う機会があった。僕がとりあえずパリコレに出たいという話をした時にクラスメイト達に笑われたのを覚えている(誤解を招くといけないので説明しておくが、馬鹿にした笑いではなかった)。クラスメイトにしてみれば自分たちが必死に昼夜勉強しても遠い目標なのに、夜間1時間だけ受講している人に突然そんな事を言われたら誰でも笑うだろう。無知をバカにしているのではなく、そのギャップが面白いからだ。

自分はまだパリコレに参加はしていない。ただ以前のようにそれは遠い存在ではなく、もう目の前の現実としてパリコレがある。ここ数年の内には参加する予定だ。ではあのギャップを僕がどのように詰めて来たのか、遠いゴールがある場合にどのようにそこへ到達するのか、それを今日は説明したいと思う。そのようなゴールを持っている人がいれば参考のひとつにしてくれれば嬉しく思う。

大きいゴール、もしくは遠い目標に辿り着く為には様々なスキルと属性が必要だ。ただゴールに辿り着く人の多くがやっている事がある。それはステップを細かく割ることだ。大きい目標を掲げているという事は現状自分が立っている場所とゴールに相当な高度差があるという事になる。その高度差を例えば3段のステップで登り切ろうとすれば、おのずとその一段は相当な高さになるはずだ。そしてその一段の落差と自分の実力を対比する事で多くの人が疲弊し諦めてしまう。

ではそれが100段の階段になっていたらどうだろうか?膝を少し持ち上げれば登れる段差であれば踏み出す勇気も出る。段差が小さいので自ずと段数は増えるが確実にその目標へ近づいていく事が出来る。僕は専門学校で学生達を教えていた時(ブランド設立後数年間ファッションの専門学校で講師をしていた)、学生達が将来Diorで働きたいと言っても、Pradaのデザインチームに入りたいと言ってもそれを咎めた事は無い。つまりそれは僕の視点からは実現可能な目標だと思えたからだ。学生とPradaのデザイナーの落差は大きい、であれば必要な段数に割れば良いだけなのだ。

例えばそのゴールを3段のステップに分けるとどうなるか?1段目は服飾の知識を身につける、2段目はイタリアに留学もしくはインターンに向かう、3段目はキャリアパスをしながらPradaのデザインチームに入る、ぐらいだろうか。これを聞いているとかなり現実味が薄く、曖昧で可能性が低く感じられないだろうか?

ただこれを20段のステップに分けて考えてみると違ったものが見えてくる。1段目は服飾の知識を身につける為に専門学校を探す、2段目はそれぞれの専門学校にイタリアの姉妹校を持つ学校があるかを問い合わせる、3段目はイタリア語を同時に学んでいく為に近隣の語学学校を探す、4段目はその語学学校のパンフレットを取り寄せる、5段目は語学学校の教員を通してイタリア就業もしくはインターンのリサーチを始める・・などとかなり細かいアクションプランになっていく(そして20段であれば残り15段ものステップを用意できる)。このように一つ一つの課題を細かくブレイクダウンする事で課題の達成率は飛躍的に向上する。このプロセスで動く学生であれば学生である数年間にミラノにリサーチにいくはずだ。ミラノの日本人コミュニティーやファッションコミュニティーから情報も相当量集めるだろう。そしてその度に課題を見出しそれをまた細かく砕いては前進して行くはずだ。どうだろう、この学生が将来Pradaでは働けないとまだ感じるだろうか?僕は想像以上に早くそこへ行き着くと思う。

要するに目標が決まったら、目標地から今の現状まで階段を下ろしてこればいい。それも出来る限り細かく。そうすればそこへ行き着く為のアクションが見えてくる。あとは行動に出る、それだけだ。

僕たちは今の現状を見ながら将来の目標を決めがちだが、それは間違っている。将来の成長率を換算していないからだ。そしてその成長というのは課題に向き合うからこそ得られるものだ。そして成長の度合いはその課題の高さに比例している。つまり目標設定はその高さや難易度によって定められるべきものではない。それに必要な成長を自らが覚悟出来るかどうか、その意思や決意によって定められるべきものだ。

ロールプレイングゲームで初期設定のままボスキャラに挑む人はいない。同時に僕たちもそこへ向かう途中で得られる成長を見越した上で目標を定めるべきだ。そして目標を定めたら、課題を割れるだけ割ろう。


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