【ざっくりレビュー】2019 J1リーグ第7節 名古屋グランパス戦<前半>

akira(@akiras21_)です。
最近レビューを書くときはスタバ率が高いです。

【前節までのあらすじ】

2週連続の「#金J」で浦和レッズ相手に勝利を掴むべく、埼玉スタジアム2002のピッチで試合開始のホイッスルを聞いたトリコロール。システム変更によりオーガナイズに不安の残る浦和の弱みを突いて、古巣への恩返しとなる広瀬陸斗のゴールを含む3-0と圧倒的な勝利を収めた。

ミッドウィークにカップ戦を挟んで、今節ホーム・日産スタジアムに迎えるのは名古屋グランパス。風間八宏監督体制3年目である名古屋との一戦は、ともに攻撃を軸とし、緻密な連携で相手を崩しにかかるアタッキングフットボールを標榜する者同士という、ある種の“ミラーゲーム”として開始前から注目を集めていた。百花繚乱の火花が散る新横浜の夜、勝利の勝鬨を挙げるのは果たして…?

ということで、先発メンバーは以下。

[4-1-2-3]
GK:朴一圭
DF:松原健、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、広瀬陸斗
MF:喜田拓也、三好康児、天野純
FW:仲川輝人、マルコス・ジュニオール、遠藤渓太

[SUB]
飯倉大樹、ドゥシャン、和田拓也、扇原貴宏、山田康太、イッペイ・シノヅカ、山谷侑士

毎度スタメンしか書いてこなかったんで、これからはサブメンバーも書いていくよ!

今節の注目選手は今季初先発となる遠藤でしょう。浦和戦で負傷したエジガル・ジュニオに代わってスタメン入りし、本人も覚悟を口にするなど戦前からやる気満々。サポーターが寄せる期待は大きく、いよいよ飛躍への第一歩が待ち望まれていました。

と同時に、ミッドウィークのカップ戦で先発フル出場を果たした和田拓也ことワー坊がしれっとリーグ戦メンバー入り。マリノスデビュー戦としては上々の出来を見せた偽サイドバック適性のある偽石原直樹…じゃなくてワー坊ぱみゅぱみゅへの期待感の表れが見られました(結果から言うと結局出られなかったんだけどね)。

さあ今節もいつも通りざっくり行きますよ、ザーボンさん、ドドリアさん!

ボールは走る、そして歩く

開始早々「(マリノスもグランパスも)どちらもボールを握りたがるチームで、それこそが立ち返るべきところなんですよね」という秋田豊解説員の鋭い指摘が飛ぶ中、マリノスが最終ラインでボールを保持するのに合わせて縦のコースを切ってくる名古屋のアタッカー陣。動いてるだけで怖い元ブラジル代表FWジョーや、「潤滑油」とも形容される働きぶりの長谷川アーリアジャスール※らに押し込まれ、パギまでボールを下げさせられてしまいます。

長谷川アーリアジャスール:
「長谷川」って呼ぶのは違和感あるし、かといって「アーリア」って呼ぶのもなんかしっくりこないので、以降は「それっぽく聞こえる」という理由でHAJとします

この時脳内をよぎったのは、昨季幾度となく見た「ハイプレス→恐怖の縦パス→気付いたらゴールネットが揺れてる」というビタースウィートシンフォニーな失点パターン。「台本は一切ございません」とYOUあたりに紹介されそうなリアリティーショーばりの緊張感が走る中、THE・気の利くGKとしてすっかりレギュラー組に定着したパギが選択したのはなんと縦パス!やってくれるぜ勇猛果敢!

で、前節同様絶妙なユルさで気の利いた1本の縦パスはそのまま喜田とAJ10を経由し、手数を掛けずにつながってつながって、終いにゃクリリンまで渡りますがオフサイド。このことの何が大切なのかといえば「ぶん殴り方にもいろいろある」ということで、Vゴール※のない90分フルタイムを戦う上で毎度右ストレートを狙う必要はないのです。ジャブ、ジャブといってからストレートを打てばいいわけですね。

Vゴール
延長戦に入って最初のゴールが決勝点となる方式。「ゴールデンゴール」とも。開幕間もない頃のJリーグでも採用されていた。福田正博(元浦和)が挙げた「世界で一番悲しいVゴール」はあまりにも有名。

ひと言に「前に運ぶ」といっても勢いは様々。ボールは汗をかきませんが、歩くことも走ることもあるわけです。

海の民・喜田拓也。進化への航路は“首振り”を羅針盤に。(『Number』風)

さて「今日の試合はねぇ、ホントに殴り合いのケンカになるんじゃないのかな(笑)」という示唆的な秋田豊解説員のコメントを間に挟みつつ試合は進んでいくわけですが、3分ごろに一際光るプレーを見せた選手がいました。そう、喜田拓也プロです。

いわゆる観音開きの配置で幅を取ったチアゴにボールが渡り、フラフラっとボールを受けに下がってきたAJ10とパス交換をした後、ピッチ中央で両手を広げてボールを呼び込む喜田名人。近くに寄ってきていた米本拓司とHAJによるプレスを惹きつけるべく、チアゴはAJ10と再度パス交換。その後、チアゴは向かって斜め方向にいたマスター喜田へと鋭いパスを通します。

ここで注目したいのが、匠・喜田の首振り。前述の両手を広げた時点から数えると、

①背後に振り向いて畠中の位置を確認
②ジリジリと後ろに戻りつつ、相手ゴール方向のスペースを確認
③チアゴにボールが渡ったところで再度相手ゴール方向を確認
④チアゴがボールを出した瞬間、三度相手ゴール方向を確認
⑤ボールが来る直前、4度目(!)となる相手ゴール方向の確認

と、なんと5回も首を振っているのです。もっと言うと両手を広げる前にも前後を確認するために3回ほど振ってるので合計8回。ジョアン・シミッチとガブリエル・シャビエルの2人に挟まれても、そりゃー焦ることなく的確に広瀬へとパスを出せるわけです。

これは筆者の推測ですが、最初の首振りで全体の状況を広く捉え、そこで得た情報を整理しつつ、自分がプレーするかどうかを判断したら、プレーを実行に移す上で確認したいポイントを徐々に絞って、その点を把握するために何度も首を振って、ボールが足下に来るまで、もっと言ってしまえばプレーの直前まで確認に確認を重ねているのではないでしょうか。自分が思い描くプレーを実行に移すというよりも、周囲の状況から実行できるプレーを判断して着実に遂行しているものと思われます。

この他にも海の民・喜田は随所に光るプレーを見せるわけですが、それを支えるのはまさしくこの首振り。その魅力や努力の背景については安藤隆人Jリーグ学部育成年代学科教授の記事をご覧いただければと思いますが、今後喜田が関与するプレーについては「首を何度、どこに向かって振っているか」に注目すると面白いかもしれません。

1失点目:こればっかりはなんやかんや仕方ない

とかやってたらまーた試合が3分しか進んでない!毎度ざっくりレビューって言ってるのに!とか思ってたらHAJの落としからジョーが打った弾丸シュートを防ぐ1パギに加えてAJ10も気迫のブロックを見せます。秋田解説員の「殴り合いのケンカ(笑)」が現実味を帯びる中、6分23秒ごろに遠藤がペナルティエリア内で宮原和也を引っ掛け、PKを献上してしまいます。

遠藤の脚の振りを見るには、ゴール前に両チームの選手が密集していたこともあって一旦蹴り出したかったのだろうと思いますが、宮原が先にボールに触ったことで、遠藤の左足がアフター気味に入ってしまったわけです。こればっかりは仕方ない。

で、PKキッカーはジョー。元セレソンだし、そもそも「PKはサッカーではない」(©イビチャ・オシム)から仕方ない。「いや〜、やっぱり、この試合は得点がたくさん生まれそうな、何か雰囲気ですね」という、ずーっとおんなじこと言っててもはや乱打戦を期待してるんじゃないかとすら思える秋田豊解説員のコメントも出てることだし仕方ない。

ここまで9分しか進んでないのにさんざん細かく見ちゃったから次のゴールシーンまで飛ばすよ!空白の12分間については他のレビュワーさんに任せます!

1点目:ポジショニングが光る世界のHATANAKA

とか言ってたら松原がゴールの枠にバチコーンと当てる超惜しいシュートを放ってたり、マエストロ喜田(コモエスタ八重樫みたいな響きだよね)が猛然とゴールに迫ったり、「ボス激おこ」のピッチサイドレポートが入ったりといろいろあったわけですが、そんなムードをぶち破ったのはまたしても我らが松原健!しかもジョーへのプレゼントスローインで!

という冗談は置いといて、ジョーからボールを受けたガブリエル・シャビエルのシュートをパギが防いでこの日2パギ目を記録しつつ、広瀬→遠藤→畠中とパス交換、そして畠中からレイヤー2つ先でなぜかどフリーだった三好へとロングパスがつながります。三好の前を走るのは仲川、クリリンの2人。三好は仲川を選択し、なんやかんやで若干オフサイドっぽくもありながらクリリンへパス、ほんで冷静にシュートを沈めてゲット!

ここで改めて振り返りたいのは畠中のポジショニングでしょう。広瀬→遠藤とつながったところで畠中は「俺ここ行くからボール出して」と腕を上げて指示を出しますが、そのとき、畠中の前にいた喜田と広瀬の間にはぽっかりとコースが空いていたのです。

それに気付いたHAJがヌルヌルっと潤滑油らしく穴を埋めに行くわけですが、このとき畠中はすでに三好の存在を見通していたので時すでにお寿司。利き足とは逆の左足で出したにも関わらず畠中のロングパスは三好に至るまで正確な軌道を描き、後はなんだかんだウェーイという流れでした。ここ最近の畠中のスケールアップは控えめに言ってヤバいですね。世界を見てますよ、彼の目は。世界のHATANAKAと形容すると3の倍数でアホになっちゃいそうですが彼の背番号は4の倍数です。自分でも何言ってるか知らんけど。

ちなみに、「クリリンならかめはめ波じゃなくて気円斬ですよね」というシャープなツッコミを入れた倉敷保雄実況はクリリンと仲川のゴールパフォーマンスに対して「なるほど、フッフッフ」というフリーザっぽさすらあるリアクションを示しておられました。なんなんすかそれ。

#本日のおパギさん 〜古舘風の詩的な形容詞を添えて〜

とかなんとか言ってたらまーたピンチだよ!

米本からジョーに繋がりかけたボールは世界のHATANAKAがなんとか防いだものの、こぼれ球を拾ったHAJが絶妙な緩さのパスをジョーに供給!しかしこれにはパギが素早いレスポンスを見せて、ボールには触ってないけど本日3パギ目(参考)

これがケンカか!殴り合いなのか!!一難去ってまた一難、ここ日産スタジアムで繰り広げられる男同士の魂の闘いは、海をも飲み込む大波が荒れ狂う大海原であります!!!って古舘伊知郎あたりがよくよく考えると意味わからん形容詞を使いながらトーキングブルースを披露しそうな流れですよこれは!

あーっとここで倉敷実況が「さっきのマルコス・ジュニオール選手はアレ元気玉だったんですかねぇ?でも相棒がピッコロさんみたいな技を使っていたので(笑)」と意味わからんタイミングでドラゴンボールネタをぶっ込んできた!実況席をも巻き込んでしまうほどのカオスに次ぐカオス!新横浜の夜空ノムコウから突如表れた混沌の大海原は人間の正気すら飲み込んでしまうというのでありましょうか!?

前半終盤:名古屋の「外し」、うまいよね

本稿のこの辺りを書いてる頃にこんなこと↑があったので、そろそろ正気に戻ろうと思います。正直、すまんかった

で、試合を進めてみたらオフサイドっぽい位置で受けた和泉竜司に超ギリギリのコースでシュートを打たれるという。ここはグッと堪えて、秋田豊解説員による分かるような分からないようなディフェンスライン構築論をBGMに試合を進めていきましょう。ウイイレで試合やってるときにジョン・カビラと福田さんがこういう雑談をし始めると途端にゴール決まらんくなるよね。知らんけど。

あと、この後に例のミッチェル・ランゲラックと遠藤の交錯があるんですが、遠藤としたらスピードに乗ったカウンターだったので急に止まることもできなかったようです。この件で遠藤を責めるのはちょっと酷かなぁと思いますが、とはいえ首の後ろという危険な部位に彼の足が入ってしまっているので、ランゲラック選手の無事と早期快復を祈ります。

さて、名古屋のGKが武田洋平に代わった後はマリノスが低い位置でのボール回しを強いられる、ないしは防戦に回るようになります。コースができたかと思えばその先のコースを閉められ、ボールを奪われるとハーフスペースを巧みに使った裏抜けからシュートを被弾するなど、なかなかに辛い展開。片方サイドにボールとプレーヤーを集めておいて、反対サイドで味方が1人浮いたらサイドチェンジ…というマリノスがやりたかったことを思いっきり仕掛けられました。うまいわ。

このあと38分10秒ごろのシミッチの剥がし→ジョーのワンタッチパス→シャビエル絶好機の一連の流れなども含めて、相手選手の視界からの消え方、そしてマークの惹きつけ方や外し方については名古屋に一日の長があるなぁと思わされた瞬間です…失点しなくて本当に良かった。

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といった感じで、前半はこんな具合だったわけですが…あまりにも試合内容が濃かったので、申し訳ありませんがここらでいっぺん中締めとして、後半は別立てとさせていただきます。

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