【ざっくりレビュー】2019 J1リーグ第5節 サガン鳥栖戦

akira(@akiras21_)です。
おちこんだりもしたけれど、わたしは元気です。(年度末的な意味で)

【前節までのあらすじ】

川崎フロンターレ戦(△2-2)の勢いをそのままに意気揚々と大分に乗り込んだトリコロールだったが、対策を打ってきた昇格組の大分トリニータ相手に苦戦し、ゴールも奪えないまま終了のホイッスルを聞く。しかし、「開幕5試合で勝ち点10」という目安には依然として手が届く状況だった。

新戦力の中川風希(FC琉球→)と和田拓也(サンフレッチェ広島→)が加わり、松原健も実践練習に復帰。日本代表に招集された畠中槙之輔はボリビア代表戦(○1-0)で先発フル出場して代表初キャップを記録し、U-22日本代表では遠藤渓太と三好康児が揃って活躍を見せるなど、中断期間中も話題に事欠かさなかったマリノス。シーズン序盤の一区切りとなる金曜夜、日産スタジアムのピッチでサガン鳥栖を迎え撃つのであった…

ということで、先発メンバーは以下。

[4-1-2-3]
GK:朴一圭
DF:松原健、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、広瀬陸斗
MF:喜田拓也、三好康児、天野純
FW:仲川輝人、エジガル・ジュニオ、マルコス・ジュニオール

松原が先発復帰し、それに伴って広瀬が左サイドに回るという構成。そして、ルヴァンカップの2試合では安定感を見せていた“パギ”こと朴一圭が開幕5戦目にしてリーグ戦初スタメンに選ばれました。昨季までJ3を主戦場としていたゴールキーパーが早くも日産スタジアムのピッチに立つことになり、多くの人々から注目を集めました。

そんなこんなで「何が何でも勝つんや!勝ちたいんや!」という一戦が始まるわけですが、その姿勢はそりゃあもう分かりやすいぐらいプレーに表れてくるわけです。

それじゃ今日も元気に行ってみよう!今回は珍しく文字通りざっくりだよ!

人員過多の片方サイド:人が集まるには理由がある

まずはみんな気になる「サイド寄りすぎ案件」です。あれだけ散々ポジショナルプレーやら5レーンやら言われてきたのに、なんでこんなに片っぽに選手が寄ってるんだ…?と思った方もいるでしょう。

ひとつ参考までに申し上げますと、片方のサイドへと意図的に人数を割くオーバーロードというやり方があります。相手の注意を惹いたり、選手同士の距離が短くなるから素早くパスが回せたり、はたまた反対サイドのスペースを活かせたり…といったメリットがあるわけですが、最も重要なのは「反対サイドのスペース・選手を活かすこと」です。ボールや人が密集地帯だけにしかないとすると、守備側からすればそこだけ守ればいいし、カウンターにも繋げやすくなるなど対策や対応も簡単になってしまうからです。

それじゃマリノスはどうだったのかというと、反対サイドに誰もいないというわけではありませんでした。ただ、ガッツリ幅を取るためにワイドに開いていたというわけではなく、だいたいハーフスペース付近にいることが多かったのです。

あくまでもイメージなのですが、ボールがあるサイドのセンターバック・ウィンガーと、その反対側にいるサイドバック・ウィンガーの4点でひし形のような陣形を敷いてるように見えました。で、機が熟してないとみれば最終ラインまでボールを下ろしてきて、主に畠中からビルドアップをやり直す…みたいな。

このやり方自体は今シーズンここまで大きく変わってないんですが、それじゃなぜ今回うまくいかなかったのかと言えば、敢えて作り出した密集地帯での選手間の距離がよくなかったからでは?と思うんです。いくつかパスが引っかかっちゃったりしてましたしね。

ミャンマー帰りの三好を先発させたボスの意図

マリノスが密集地帯を敢えて作り出した理由は、おそらく去年のアウェー鳥栖戦の経験があるからでしょう。4-4-2の陣形でマリノスのひとりひとりにマークをつけ、パスの出しどころを塞ぐというマンツーマンディフェンスに苦しめられた昨季の試合は記憶に新しいかと思います。

そこで、「広がってたら相手にマンマークを付けられちゃうとすれば、自分たちからちっちゃくなっていけば相手のマークもズラせたり剥がせたりするんじゃね?」という逆転の発想で密集地帯を作ることにしたわけです。これが最高にハマればガンバ大阪戦やベガルタ仙台戦の再現になるわけで、U-22日本代表帰りの三好を先発起用したのもそういう意図・狙いを持っていたからではないでしょうか。

連戦出場した上にミャンマーからの移動を含めて実質中1日というコンディションを考えれば、三好は少なくともベンチスタートにしたかったところですが、「前半のうちにスコア的にも主導権をバッチリ握って勝ち切る」というアンジェ・ポステコグルー監督の確固たるゲームプランから、ボールの扱いがしなやかで華麗な三好を外すことはできませんでした。

しかし、何度かチャンスがあったにもかかわらず、マリノスは再三ゴールを逃し、三好も連戦の疲れからか黒塗りの高級車に…じゃなくて、プレーのクオリティが案の定いつもより早く下降線を辿っていきました。試合後のボスのインタビューを見れば分かりますが、ボスとしては不本意というか、自らの策に溺れてしまった感すら覚えたのではないでしょうか。

支配率63%:バックパスとU字パスと

攻めあぐねたりするとよく言われるんですよね、「ボールを持たされてる」と。守備側が完全に割り切ってブロックを敷いたりして、わざわざ奪いに行かずにカウンターだけを狙ってくるみたいなあの感じ。そんなもんだから攻撃側も困っちゃって、パスを出そうにも出す先がないんで時間だけが流れていっちゃう…みたいな。

鳥栖戦はマリノスがボールを握る時間帯が長く、それなのになかなかゴールが決まらず悶々とする展開でした。「ボールを持ってるチームに主導権がある」とよく言われますが、主導権があるならゴールも決められるんじゃないの!?という声も聞こえてきそうです。ごもっともです。

特に試合終盤の70分以降は「ガンガンいこうぜ」ばりの畳み掛けがあり、若干オープンな展開にもなりつつ、それでいてマリノスが攻める時間帯が長めでした。そんな中、ちょくちょく見られるアレを疑問に思われる方もいらっしゃるんですよね。

バックパスです。

おい!攻めてる展開でどうして後ろ向きなパス出すんだよ!?という思いから「ビビるな!」「前!前!」「仕掛けろ!」「勝負しろ!」といった声がスタジアムには飛び交うものです。こんなこと言っといてアレなんですが、自分もゴール裏にいるときは結構そのクチです。

ただ、ゴール裏とはちょっと違った視点から観たり、試合をリプレイしてみたりすると「あのバックパスは妥当だったね」ということも往々にしてあります。その判断基準になるのが「バックパスをせずに仕掛けていったときのリスクマネジメントはできているのか?」「バックパスをすることで相手を押し込むことができるのか?」という点です。

いろんな状況があるので一概には言えないですが、たとえば89分頃のエジガル・ジュニオと大津祐樹の2人で見せたカウンターなんかはバックパスの必要性がないですね。相手ディフェンダーも少なく、エジガルと大津の後ろにはたくさんの味方が残っているので、前に運んでいってボールを失ったとしても、それを味方が拾って波状攻撃に…という展開もあり得なくはないです。

一方で、鳥栖の選手たちをハーフコートに押し込めた状況では、むしろバックパスで整えたほうが良かった場面が多かったです。「ボールを持った選手はドリブル突破が得意か」「突破した先・周りに味方はいるか」「相手のプレッシャーはどれくらい強いのか」などを踏まえると、相手の守備のネットに入り込んでしまう前に一旦後ろへ下げて、攻撃をやり直したほうが賢明なことがあります。こういう観点からでも、畠中が最終ラインにいることには大きな意味があるんです。

そして、こうした状況下でのバックパスは「ボールを持たされている」のではなく「ボールを持っている」のです。ボールを前に運ぶために一旦下げて、頃合いを見て縦パスを刺して仕掛けに行くわけです。ボールの出し先がない、どこに出したらいいのか分からない、とりあえず安全な方にボールを逃がそう、でも逃した先でも出し先がない、それじゃ安全な方にボールを…という、いわゆる「※U字パス」とは似て非なる状況です。

※U字パス:
主に最終ライン付近でひたすらボールを回すこと。ボールの動きが「U」の形に似るためこのように呼ばれる。
パスを回している間に相手の守備陣系が整ってしまい、余計に苦しくなる…という連鎖に陥りがちなので良くない。
例)
右サイドバック→右センターバック→左センターバック→左サイドバック→(ちょっと前進)→左センターバック→右センターバック→右サイドバック→(ちょっと前進)→右センターバック…(以下ループ)

ということで、意識的に「ボールを持っている」のと、受動的に「ボールを移動させている」のとではちょいと意味が変わってくるのです。余談ですが、U字って名前なのに逃げ腰だとそれこそ「ふっざけろよボケェ」とか言われてボコボコにされちゃいそうですね…(分かる人には分かる)

おわりに:ノリって大事、ベースも超大事

これだけいろいろ書いてきましたが、要するに「いっぺん主導権を握ったら、どんな形でもいいからそのまま点を取りきらないともったいない試合になる」ということです。

長いシーズンなら「負けなかっただけマシ」という試合も時にはあるでしょう。ただこの鳥栖戦に関してはそうではなく、むしろ「勝ち点2を落とした」というべきです。試合後にボスも言ってましたね、「我々は誰にも止められていない。クロスバーに阻まれただけだ」と。「勝利には何が足りなかったのでしょうか?」という問いには「Goal」としか言わなかったのもひじょーに示唆的で、何事もひとたびノッたらそのまま最後までやり切らなきゃもったいないのです。

とはいえ、コンディションの面でいくつか不安な要素があったのも確かです。三好は言わずもがな、仲川も中断期間に別メニュー調整をしていたと言われてましたし、実際にプレー中に傷んで途中交代していました。膝のあたりをかばうようにして歩いてたのが少々気になるところです…

が、一方で好材料もありました。負傷離脱から戻ってきた松原がいつも通り効果的なポジショニングを見せて我々をホッとさせてくれましたし、機会があまり多くなかったとはいえ、パギも比較的安定感のあるプレーを見せていました。個人的にはパギの素早い判断とロングスローがいいなぁと感じました。一部界隈の話では「パギはまだまだ遠慮してる」とのことなので、今後も継続して起用してほしいなというのが個人的な思いです。

最後にこちらをひとつ。パギに押し出される形でサブメンバーに回った飯倉大樹のコメントについてです。

「やっぱり、相手は対策してくる。正直、今はまだAプランしかないから。Bプラン、Cプランを作らないと、勝利には届かない。今日は勝ちそうだったけどね。でも、今後もっと手強い相手とやれば、またハメられるだろうし、Aプランだけでは試合巧者にはなれないと思う。だから槙には自分の考えを伝えて、そうやってサポートして」

「Bプラン、Cプランを作らないと」という言葉尻を捉えられてしまってる感があるのですが、飯倉はつまり「状況に応じてやり方を変えていかないと」ということを言いたいのだと私は解釈しています。

しかしながら、その柔軟性というのは今のスタイルの根幹、柱として組み込まれているものだと思います。なので個人的には「何をいまさら」という印象でして。オープンな展開になりかけた時間帯を観てこのように発言した可能性もありますが、全体的にはコントロールできてた時間のほうが長いので、やっぱり「言うほどかなぁ」という感想です。ただ、いろんな意見があるのはいいことなので、これも何かのきっかけになればいいですね。

ささ、切り替えていきますよ…って来週もまた #金J かよ!しかも19時半埼スタって!!ベースボールユニ着てっちゃうぞ!!!

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