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【#ざっくりレビュー】2019 J1リーグ第18節 大分トリニータ戦

akira(@akiras21_)です。
大荷物をまとめるたび、何かを入れ忘れた感覚に襲われます。

【前節の振り返り】

・首位攻防戦も4失点敗戦、6ポイントゲームをものにできず
・スタッツでは圧倒。FC東京による中央レーンのブロックを崩せず
・他会場の結果により、試合後の順位は暫定3位

勝てなかった悔しさこそ残るものの、昨シーズンの同じく第17節に行われた同カード(2018年7月22日、●2-5)よりも成長が垣間見えた試合でした。

【vs大分 前回対戦の振り返り】

・デザインされた即時奪回の罠にはまり、今シーズン初の敗戦
・ティーラトンのプレーがマリサポの間で批判の対象に
・喜田拓也の倒れながらのタックルが「前田日明だ」と俺の中で話題に

前回対戦が完璧にしてやられた試合だっただけに、今節は後半戦スタートであるとともにリターンマッチでもありました。ていうかこの頃はまだめちゃくちゃざっくりしたレビューだったんだなぁ…

そんなこんなで、今節のメンバーは以下。

[4-2-1-3]
GK:朴一圭
DF:広瀬陸斗、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン
MF:喜田拓也、天野純、マルコス・ジュニオール
FW:仲川輝人、エジガル・ジュニオ、遠藤渓太

[SUB]
杉本大地、栗原勇蔵、和田拓也、大津祐樹、山田康太、三好康児、李忠成

ミッドウィークに天皇杯2回戦(vs立命館大学)を行い、そこでフル出場したパギ、広瀬、畠中、AJ10、遠藤渓太が引き続き先発。特にAJ10は試合前夜にスポルディング・ロケレン(ベルギー)への期限付き移籍が発表されていただけに、壮行試合の様相を呈していました。

シーズン折り返し1発目、それじゃ今日もいってみよう!

グイグイ注意を惹く男たち

大分は5-3-2でスタート。開始早々グイグイとプレスを掛けてきますがまあ想定内ということで、そこからグイグイと惹きつけといて最後はドーンみたいなプレスのいなし方を披露します。ボールを失ってもすぐに奪い返し、この試合最初のシュートとなるAJ10のミドルシュートまではなんと1分足らず。めっちゃグイグイいくやん!

あと大分のプレスの掛け方として、2CB間とCB→SBのボールにはかなり反応していました。この対抗策が喜田とAJ10のポジショニング。8分38秒ごろからの一連の流れを見てみましょう。

喜田が藤本憲明の視界をさらうように動き、その後でAJ10が藤本、オナイウ阿道、前田凌佑が形成するトライアングル包囲網にあえて侵入。AJ10は畠中からのパスを受けたら、包囲網を抜け出していた喜田へとボールを逃し、包囲網を崩しつつ畠中にボールを渡して、ラインを上げながらのビルドアップに移行しました。

この間も、先程のトライアングルにティティパンを加えたダイヤモンド型包囲網の中にAJ10が絶えずポジションを取り、包囲網の注意を惹いていたのがポイントです。

続いてボールが畠中から喜田へと渡ると、ハーフスペースにポジションを絞っていたティーラトンが左サイドレーンにぽっかりスペースが出来たことに反応してスプリント。こうして大分側ハーフコートへとボールを運ぶことに成功しました。

現在のマリノスにおいては、相手の陣地に入り、そこでそのままプレーし続けることがゲームモデルの根幹を成す要素のひとつとなっています。それを封じられたからこそ前回対戦は苦杯をなめるどころかたっぷり飲まされたわけですが、ここで「あぁ〜不味い、もう1杯(CV:八名信夫)」とはいかないためのプランニングをしてきたわけですね。

ていうかこのCMちゃんと観てみると一瞬オエッてなりかけてるやんけ。知らんけど。

好きにやっちゃってー

そのほかにも「惹きつけといてからパスを出して剥がす」みたいな場面は数多く見られました。というのも大分の5-3-2の3の部分の両サイドが結構空いてた上に2トップもそこまで戻ってこないんで、それを逆手に取ってたからなんですね。

あと前半を通してハーフコートに押し込めてた印象があったんですが、これには大きく2つの理由がありまして、

◎大分の重心が低かった
◎マリノスの最終ラインが高かった

というところにありました。大分は「マリノスに先制点を与えたくない」のと「ビルドアップを着実に遂行したい」という意図があって低めの位置を取ってたわけですが、そうこうしているうちにマリノスは最終ラインを上げて大分をハーフコートに押し込める体勢に移行。これですよ、前回対戦時はこれをやりたかったんですよ。

こうなってしまえば試合はもうマリノスのペース。ハーフスペースもガンガン使う攻撃でティーラトン、広瀬の両SBが躍動しつつ、その陰でひっそりAJ10と匠・喜田の的確なポジショニングが光り、ちょっとボールが下がれば大分のプレスを釣り出して、5-3-2→3-5-2に移行する中で空く最終ライン〜MFライン間のハーフスペースを使いに行ったりと、実に多彩な攻撃を披露。例えるならこのCMみたいな感じ。

やっぱそろそろ歳バレるよな?

ガードは固いラブコメ漫画のヒロイン

というふうにわりかし好き放題攻めまくっていたマリノスですが、大分もさすがの大分で最後の最後だけはやらせてくれません。青年誌に載ってるラブコメ漫画のヒロインみたいな感じです。たぶんやんちゃなJK。知らんけど。

そんなヒロインJK大分に焦れてしまったのか、パギがらしくないキャッチミス(35分53秒ごろ)と急激にエデルソン化したみたいな低弾道弾丸フィード(35分56秒ごろ)を披露。後者は急いで蹴ったせいかボールは誰もいないところに出てしまい、黒塗りの高級車と衝突するようなことこそ免れたものの結局ボールを奪われて云々やってるうちにゴール前でワチャワチャしてあわやピンチを招きますが、藤本が最終ライン際ギリギリでオフサイド。つまり何が言いたいかってトランキーロのひと言に尽きるんですよ。あっせんなよ。

このあとは大分も少しずつマリノスのやり方に順応してきて、たとえば藤本がハーフスペースでボールを受けるフリをしてチアゴを背負いつつ体を反転→後は任せたオナイケーーーーー!!!!!(38分24秒ごろ)など、じわり じわり(CV:和泉元彌)と主導権を取り戻しに掛かってきます。

とはいえまだまだマリノスのイケイケドンドンだったんで、ティーラトンの神出鬼没オーバーラップからのシュート(42分11秒ごろ)、遠藤のフィジカル上等なゴールライン際の肉弾戦(44分43秒ごろ)など、まだまだ攻めの姿勢を崩しません。が、ここで前半終了。大分的には及第点な前半だったかもしれませんね。知らんけど。

土曜夜8時の熾烈なチャンネル争い

はいそれじゃ後半へ。立ち上がりのペースは両者ともに変わらず、互いに攻め急ぐこともなければガツガツ奪いに行く感じもなく。右サイドバック喜田とかもうそろそろ見慣れてきたんで驚くことでもないっすよね。

ただ、ここまで観てればそろそろ見え隠れしてくるんですよ、「マリノスも大分も狙ってるのはチャンネルじゃないのか?」ということが。そうです、土曜夜8時は「めちゃイケ」か「世界一受けたい授業」なのか、「全員集合」なのか「ひょうきん族」なのかという熾烈な争いがあったアレです。んなわけあるかい。

えー気を取り直して「チャンネル」について簡単に説明しますと、ざっくりセンターバックとサイドバックの間のスペースを指します。主にイングランドで一般的なピッチの捉え方のひとつです。「えっ、それってハーフスペースじゃないの?」と思われるかもしれませんが、ハーフスペースとの違いは「固定されているかどうか」という点です。

ハーフスペースはピッチを分割したときに現れるスペースですが、チャンネルはセンターバックとサイドバックの位置関係によって出現し、現れる場所も広さも変わります。たとえば両者ともタッチラインに寄っていればチャンネルも端っこに現れますし、両者の間が大きく空いていればその分チャンネルの幅も広がるので、ハーフスペース以上に広くなることも有り得ます。そのほか詳しくはこちらをご参考に。

そしてこのエリアを突くことの有効性はハーフスペースに親しいものがあるので、両者とも狙っていたのではないかと思われます。たとえば大分の動きを例に取ると、

藤本がサイドに張ってチアゴをピン留め(48分31秒ごろ)

そこに生まれたスペースに高山薫が侵入(48分33秒ごろ)

といった動きや、

高山がサイドに張り、広瀬の注意を引く(48分45秒ごろ、よーく見ると広瀬が首を振っています)

広瀬とチアゴの間に生まれた広いチャンネルにオナイウが走り込む(48分50秒ごろ)

…など。大分の動き方は意図の感じられるそれでしたが、こういった形でチャンネルを狙われた際にそのスペースを埋めていたのがAJ10でした。んー粋だねぇ(CV:中尾彬)

リスクはミサイルで撃ち落とせ

で、マリノスはこのチャンネルのケアに加えていよいよパギが対地空ミサイルの如きフィールディングを見せます。何かって言うと攻め込まれそうになったときの素早いクリアです。佐藤優也ではないです。いやアレはアレで凄かったけども。

一例として、最終ライン裏へと蹴られたロングボールにオナイウが反応して走り出す(51分5秒ごろ)わけですが、先に落下地点へと入ったのはパギ。落ちてくるボールをそのままボレーで叩き、大分最終ライン右側のチャンネル目掛けて蹴り出す(51分7秒ごろ)という芸当を披露しました。

パギが蹴り出した先には味方が誰もいなかったので、そのままカウンターとはなりませんでしたが、ピンチをすぐさまポジトラに変えてやろうという気概が垣間見えたプレーでした。パギはこの後も高めに設定された最終ラインの裏のスペースをケアする動きを何度か見せてましたね。

あと大分がFC東京のやり方を真似してきた一幕もありました。左サイドから攻め上がりつつ、一旦逆サイドの松本怜に出して、その松本は左ハーフスペースのゴールライン際にいたティティパンを狙ってクロスを出します。で、この裏でゴール近くに藤本が待ち構えていた、と。「またじゃ(CV:千鳥ノブ)」でおなじみディエゴ・オリヴェイラの得点パターンです。

二度と同じ手を喰らうもんかい、と言いたいところですがクロスが上がった時点でティティパンはフリーだったので、もしティティパンがばっちりヘディングを合わせてたらどうなってたか分からんかったという点で実はピンチでした。あとその後の小塚和季が見せたハーフスペース(チャンネル)の突破も対応した仲川はサクッとぶち抜かれてたんで更にピンチでした。あとチアゴが尻もち突いちゃったやつもハーフスペース→ハーフスペースの揺さぶられ方したんで尚の事ピンチでした。あぶねーあぶねー。

サイドがダメなら真ん中や、と見せかけてサイドや

といったところでクリリンに代わって三好が入り、そのままトップ下の位置へ。クリリンは調子が悪かったわけではなく、フリーで居られる時間が少なかったというか、敢えてそういう状態に自らを置いてたような気もします。自分が相手の注意を惹く存在であることを理解した上でのプレー選択といいますか。

いずれにせよ、これは今節に限らず、なんならここ数試合ずっと見られる症状ですし、さすがにそろそろ対策されてきたかな…?といった感があります。クリリンがボールを持ったときにキーパスを出せない状況を作り出しさえすれば、少なくとも封じることはできるわけです。

最も簡単なのはゴール前を固めてしまうことで、これはこれでマリノスとしては相手に対して攻めの選択肢を制限することになるのでアリっちゃアリなのですが、果たしてこれを是とするかどうか、ボスの判断が気になるところです。

さて交代で入ってきた三好はといいますと、こちらはポジションを維持してボールを待つ(いわゆる「メインテイン」)スタイルを披露。「動」のクリリンに対して「静」の三好といったところでしょうか。このへんの塩梅はプレーしてる側として調節が難しいでしょうね。知らんけど。

さてこのあたりからマリノスはプレーエリアの意識が中央に寄っていきます。大外レーンを全く使わないかっていうとそういうわけではなく、「あくまで中に入れるために外を使う」ようなイメージといいますか。中央レーンが渋滞したときにサイドへと注意を惹いてスペースを作り出すために一旦サイドに預けるようなやり方を採るようになりました。すると大分は肝心の中央エリアを固めるべく、システムを5-4-1にスライド。目には目を、ってやつですね。

1点目:ティーラトンすげー、広瀬すげー、エジガルやべー

個人的には72分12秒ごろに仲川が見せた横方向カットインが興味深かったんですが、これも含めてマリノスが次第にゴール前へと迫る展開になっていきます。そして遂に決勝点が…!

左ハーフレーンでボールを持っていたティーラトンから三好→遠藤とつなぐも、大分が2人掛かりで遠藤にプレスを仕掛けた結果、ドリブル突破は不発。こぼれ球がオナイウに転がっていきますが、今度はこれをティーラトンが奪い返します。

オナイウとの競り合いの末、ティーラトンは倒れながらも三好にパス。これを受けた三好が前を向き、近くに立ち留まっていた遠藤との位置関係を利用しながら低弾道クロスを放ちます。

クロスの先ではおよそ2対2。一瞬エジガルが受けに行こうとしますが踏みとどまって、最終的には仲川がこれを回収。少しだけ下がりながら溜めを作ると、後方から広瀬が右ハーフレーンに向かい全速力で駆け上がってきました

広瀬の上がりには小塚が反応していましたが、広瀬は追いつかれることなく中央で待ち構えていたエジガルへとボールを供給。エジガルのダイレクトシュートは一度弾かれるものの、跳ね返ってきたボールを再度シュート。三竿雄斗の足に当たって軌道が変わったボールに対してはさすがの高木駿も反応できず、ゴールネットへと吸い込まれていきました。

ていうか同じコースに2回打つって度胸座ってるなエジガル!さすがや!

おわりに:この空の下 同じ星見上げて悩む僕らは

この後はエジガル貫禄の参勤交代などありましたが、5バックやボールサイドに寄るタイプの4バックで大分の攻撃に対応しつつ、ボールを奪ったらサイドを駆け上がってボックス内中央に低弾道クロス…という基本形をキッチリこなす試合運び。最後までリードを守り切り、試合を締めました。

前半はほぼハーフコート制圧。後半も同じように圧倒していたものの、膠着状態と見るやアプローチを変えてゴールを奪取し、最後はきっちりクローズ。前回対戦でバッチリ対策されて完封されていた相手だったり、試合を進めていく中で脆さが無かったわけではないですが、とはいえこういうゲームメイクができるようになったのか…と感動しておりました。再び得た勢いを活かす意味でも、次節・浦和レッズ戦もこんな試合運びが観たいですねぇ。

〜 〜 〜

「感動」といえば、この日がマリノスラストゲームとなった天野純。試合後のセレモニーで多くの笑いと涙を誘った彼のことを綴らずに、本稿を終わることはできません。

彼が入団当初どうだったか、そしてそこからどのような努力を重ねてここまでのし上がってきたのか、そのあたりはいろんな方々やメディアが語り、伝えているのでここでは触れません。しかし、彼にとって2016年シーズンが転機だったことは誰の目にも明らかでしょう。

あのシーズンをどのように振り返るかは本当に人それぞれで、リーグ戦成績から「停滞」と捉えたり、翌年の躍進をして「必要な時期だった」と捉えたり、実に様々。ただ、背番号29がその左足でトリコロールに一筋の光をもたらしたことを忘れるようなマリサポはいません。

その経緯やキックフォームの近さから、「中村俊輔の後継者」と呼ばれることは多々ありました。今季からは特に「10番でキャプテン」としてプレーすることとなり、Jリーグファン諸氏は一層その姿をかのウルトラレフティーに重ねたことでしょう。

ただ、マリノスサポーターの多くはそうではありませんでした。

天野純は、天野純でした。

高い技術と素早い判断に裏打ちされ、一振りのキックで試合を動かす華々しさは、天野純の特徴ではありません。彼の特徴はポジショニングの妙であり、大局観であり、そして気まぐれさでした。だからこそ、相手の注意を惹いたり、あるいは自分の先に立つ味方へのパスコースを作り出すポジショニングをしていたことが、私の目には素晴らしく映っていました。

ポステコグルー体制になってからの1年半で、彼ほどチームのために汗をかいた選手もそう多くないでしょう。しかし、今節の大分戦でキャプテンマークを巻いていたのが、彼と同じようにとても多くの汗をかいてきた喜田拓也だったという事実が、個人的にはとても意味あることだったと思っています。

今のマリノスに求められる選手とはどんな姿か、天野純はその身をもって示してきました。そして、いよいよ天野純は真に彼自身になるべき時が来ました。他の誰でもなく、ましてや中村俊輔でもなく、天野純という1人のプレイヤーとして自立し、羽ばたいていくべき時が来たのです。

言ってしまえば背番号は「ただの番号」で、あるポジションに対するイメージも、実のところはあってないようなものです。しかし、天野純はそのことに気付かせてくれたという点で、私にとって偉大な選手です。

「いつかマリノスに戻ってきます」という言葉、私は納得していません。ただ単に戻ってきてはいけないからです。出戻りではなく、“凱旋”であってほしいからです。

いつかまたマリノスのユニフォームに袖を通すことがあれば、その時は今よりもずっと大きく、ずっと逞しい存在として、今よりもずっと偉大な存在としてチームを導いてほしいんです。

そんな気持ちを込めてこそ、次の言葉で締めくくりたいと思います。


英語の本さっそく忘れんなし。


いってらっしゃい!応援してるぞ!

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