【ざっくりレビュー】2019 J1リーグ第1節 ガンバ大阪戦

akira(@akiras21_)です。
横浜F・マリノスサポーターです。

2019シーズン開幕にあたって何か新しいことがしたいなぁと思っていたので、マリノスのマッチレビューを書いてみることにしました。ただ、90分間を詳説するのは他の方々が行ってらっしゃるでしょうし、私は私自身が気になったポイントを中心にヒョイヒョイと見ていきたいなと思います。

ということで、さっそく参りましょう。パナソニックスタジアム吹田で2月23日に行われたJ1リーグ第1節、ガンバ大阪戦のレビューです。先発メンバーはこちら。

[4-1-2-3]
GK:飯倉大樹
DF:広瀬陸斗、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、高野遼
MF:喜田拓也、三好康児、天野純
FW:仲川輝人、エジガル・ジュニオ、マルコス・ジュニオール

ドゥシャン・ツェティノヴィッチ、松原健、扇原貴宏、大津祐樹、遠藤渓太といった昨季のレギュラークラスがサブメンバーとなり、試合前は「このメンバーでどんなサッカーになるんだ…?」という声も聞かれましたが、蓋を開けてみれば3−2という結果に。枠内シュート18本と圧倒的に攻めながらオフサイドは0回、それどころか相手のオフサイドを11回も記録するなど、試合を支配していました。

ただ、個人的には「昨季と変わらないなぁ」という印象でした。

もしかしたらガンバ戦はあんまり参考にならないかも…というのは「昨季と変わらない」から

共通理解を助けるために、「アタッキングサード・ミドルサード・ディフェンシブサード」という考え方と、せんだいしろー(@sendaisiro_naka)さんの「5レーン&4レイヤー理論」を少しだけお借りしたいと思います。どちらもざっくり言うと「ピッチの区切り方」についてのアイディアなのですが、詳しくは以下リンクをご参照ください。すでに読まれた方はそのままどうぞ。

では本題に。たとえばチアゴや畠中が第1レイヤーでボールを持っていたとき、ガンバのFWはプレスを掛けてきませんでした。プレッシャーがないのでボールホルダーはそのまま前進。ミドルサードに差し掛かるあたりからガンバのFWがじわじわとボールホルダーに寄ってくる感じでした。

DAZNの映像では画面外の部分も含まれるためなかなか確認できないんですが、ガンバは前線〜最終ライン間を比較的コンパクトに保ちながら前後にスライドしてたんじゃないかなと思います。というのも、ガンバの前線にはスピード系のアタッカーが多かったので、サクッと奪ってショートカウンターにつなげるためだったのではないかと考えられるからです。こうしたガンバの動き方は昨季対戦したときも同じでした(そしてあっさりやられてしまいました)。

ただ、今回対戦に関してこのガンバの守り方はマリノスにとって好都合でした。昨季終盤のサガン鳥栖戦では今回のガンバとは対照的に徹底したマンマークを付けられ、第2レイヤーに通すパスコース、つまりボールの出し先が封じられてしまい、手も足も出せなくなる…という困った現象が起きましたが、ガンバはそういったマークもせず、心理的余裕を削ってくるようなプレスも掛けてきませんでした。そうなれば、(特に後方の選手は)攻撃を進める上で効果的な縦パスのコースを探して通すだけの余裕が持てます。

第1〜第2レイヤー間に限ったことではありませんが、レイヤーを跨ぐようなパスが素早くバシッと決まれば、その先の攻撃にも勢いが付きます。そしてその勢いを活かし、相手を揺さぶるために、マリノスの選手たちは常に相手選手同士の間のスペースを縫うようにして動き始めます。マリノスのこの動きについては昨季から特に変わっていませんね。

「ボスのサッカーはポジショナルプレーではない」説について

ここで考えてみたいのは、ここ最近ちらほらと見られた「ポステコグルー監督のサッカーはポジショナルプレーではないかも」という意見です。ガンバ戦をリプレイしているうちに思い出したのですが、この意見についてはどちらかというと「オーバーロードを採用している可能性がある」と言ったほうが近いのではないでしょうか。「オーバーロード」については以下より。

あるエリアに密集することで数的優位と反対側のスペース、いわゆるアイソレーションと呼ばれる状態を作ろう…というのがオーバーロードの目的なのですが、ガンバ戦ではこうしたシチュエーションが散見されましたし、実際に効果的に働いてもいました。

また、密集地帯でのパス回しが作用していたのが「やりたいサッカーをやりやすくするための位置取り」ができてたからだとすれば、その時点で十分ポジショナルプレーが為されていたと言えそうな気がします。

ただ、ボールを失った後のネガティブトランジション時に即時奪回を仕掛けるために、ガンバも敢えて人数を多く掛けている節がありそうなので、この試合だけを見て判断するのはやや危うい気もしました。要経過観察ではないかと思います。

しかしながら、仮にマリノスがこの試合でオーバーロードを採用していたとすれば、扇原ではなく喜田が起用されたのは納得がいきます。喜田はスペースを察知する能力に長けており、かつ球離れ良くパスを出すこともできるので、密集地帯で相手を翻弄するのに適した能力を持っています。対して扇原は素早さというよりも視野の広さやロングフィードが武器なので、ガンバ戦のゲームプランではミスマッチになった可能性があります。

喜田だけでなく、マリノスでのデビューを果たした広瀬にもひょっとしたら似たようなことが言えるかもしれませんが、現在のチームにおける松原のプレーを観ていないので、ここはひとまず保留したほうが良さそうです。ただし、広瀬の積極的な「偽サイドバック」の動き・プレー志向は今季のマリノスにフィットしそうだということは言えますね。

ポジショニングにまつわるエトセトラ

ポジショニングの話題が出たので、ポジショニングについて気になったことをもう少しだけ挙げていきたいと思います。

まず、自分の持ち場以外のスペースを埋めようとする動きが昨季以上に活発になった感があります。たとえば、それこそ広瀬が攻撃の流れで一時的に前線付近まで上がったときは仲川が後方に下がる、もしくは喜田が横にスライドするなど、相手カウンターに備えた動きが見られました。様々なポジションの役割についての共通理解が広がったというよりも、「チームとしてのゲームモデルやコンセプトが根付いてきている証左になり得る」という方がより近いかもしれません。

関連して、「サイドバック裏問題」について。広瀬、高野のポジショニングが高めであるために彼らの背後を使ったカウンター未遂が何度か見られた件についてですが、これは逆になぜそのリスクを冒しているのかに注目すべきでしょう。個人的にはサイドバックの裏が使われることよりも、サイドバックが第1レイヤーにいないことや、「第1レイヤー→第2レイヤー
のボール運びは絶対に通す」という大前提
がどのように作用しているか…ということの方が重要だと思います。

おわりに:まだまだ1試合終わっただけですし

この他にも規則性がありそうな細やかな動きなど、いくつか気になる部分はあったんですが、チームとしての約束事なのか個人のアイディアなのかを見極めるためにも、しばらく経過観察したいと思います。

まだまだ1試合が終わったに過ぎませんし、あっけないミスで2失点していることや、後半もガンガン攻めながら追加点が取れなかったことなど反省点は決して少なくないですが、それでもこの先に向けて希望の持てる内容だったと言えます。このサッカーを継続し、そしてブラッシュアップしていった先に「誰もが恐れるようなチーム」という将来像が待っていることでしょう。

この先どうなるか見てみようじゃないか。

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