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私の神山上勝訪問記その1

先日、徳島県の神山町と上勝町を訪問してきた。
仕事を転職し、ギャップイヤーならぬギャップウィークがあったので、こんな時でないと行けないところに行きたいと思い、地方創生、地域活性化のトップランナーを自分の肌で感じたいと思ったから。
他にも、島根で一番美味しいと言われてる里山イタリアン-AJIKURA-と若者地方移住の先駆けである海士町を巡るプランも検討したけど、冬の訪問は止めておこうとなった。このプランもいずれ行ってみたい。

事前リサーチ

訪問前にfacebookで情報を募ってみたら、あれよあれよとコメントをいただけた。私とfbで繋がっている人はやはり神山、上勝が大好きですね。

そして異口同音に出てくるのがNPO法人グリーンバレーの大南さんという方だった。すごい人らしい。
コメント欄では大南さんを始めとして色んな方の名前が挙がり、それぞれの方に話を聞いてみたいと思うけれど、今は会った方にgiveできるものが自分に無いと思ったのでアポは取らず訪問した。
教えてくださった皆様、ありがとうございました。SNSの集合知のすごさを思い知りました。

神山と上勝の違い

とても失礼な話だけど、訪問するまで両者のイメージは乏しかった。どちらも徳島の山の中の町で、上勝は葉っぱビジネスで有名、神山はシリコンバレー目指してるんでしょ?というくらい。
訪問して、両者の違いがよく分かった。特に私の認識では、神山は民が主体で、上勝は官が主体だった(農協も官とする)。

神山町は、上記に名前が挙がっている大南さんという方が30年近く前からアーティスト招聘活動などをしていたことで部外者を受け入れる土壌ができ(お遍路が通る町なので部外者にはもともと寛容だと思う)、インターネット黎明期に町に光ファイバーが通ったことでICT企業などがサテライトオフィスをこぞって作った。
上勝町では、特産のみかん枯死から農協職員が中心となって葉っぱビジネスを開始した。また、ダイオキシン問題から小型焼却炉が使えなくなり、町役場が中心となってごみゼロ運動が始まった(詳細は後述)。
ざっくりまとめると以上のような流れがあるので、神山は活動している個人が割と前面に出てくるのに対して、上勝は組織的に進められている印象があった。どちらが優れているとかではなく、地方創生の文脈でこれだけ有名な町が隣り合っていて、発展の経緯や雰囲気がぜんぜん違うのはとても面白いと思った。

上勝とゼロ・ウェイスト

宿泊したのは上勝にあるゼロ・ウェイストセンターだ。ごみゼロを目指す取り組みを学べる施設ということで全国的に有名なホテル。4部屋しかなく、眺望の良い山側の部屋もあったがより安い道路側を選んだ。1部屋あたり最大4人まで泊まれるので、人数が多いほど割安に泊まれる。

ホテルは独立した棟

ごみ収集センターにホテルを作るのはかなり攻めているように思うけど、生ゴミは各家庭でコンポストにするのでここには持ち込まれないし、他のゴミも分別と洗浄が徹底されているから汚れも臭いも一切なく、不衛生と感じることは全くなかった。バングラデシュの市場より数百倍清潔だった。
ちなみに、上勝のゴミの品質の高さ(分別や洗浄状態)はブランド化しているそうで、ごみ処理業者から上勝のゴミなら引き取りたいと言われるらしい笑。

清潔な収集センター

チェックインするとまずは上勝のゼロ・ウェイストの取り組み紹介を聞ける。
なぜ上勝がゼロ・ウェイストを目指し始めたかというと、貧乏だったから。ダイオキシン問題で小型焼却炉が使えなくなり、大型焼却炉を建てるお金もなく、ゴミをよそに持っていくのも大変で、それなら分別して資源にしたりゴミを減らしたり”せなあかん”状況だったとのこと。だから役場職員が、分別を面倒くさがる住民を説得して周り、庭でゴミを燃やす住民に止めてくれと懇願して周り、ここまで至ったそう。

チェックインすると聞けるガイダンス

秀逸だと思ったのが分別表示。それぞれのゴミが、どこに持ち込まれて1kgあたりいくら処理にかかるか、逆に紙や金属などはいくらくらいの町の歳入になるかが明示されている。ゲーミフィケーションされている良いデザインだと思う。自分の財布でなくても、これは高いから減らさなきゃなどと住民は思うので。

乾電池は北海道にしか処理工場がないのでお金がかかる

センター自体も気合を入れて作られている。住民の要らなくなったものを持ち込んでもらい、建材として壁や床に使っている。私達自身もエシカル、リデュース、アップサイクル等をテーマに結婚式や家のリノベーションをおこなっているからこの大変さは理解できる。アップサイクルはめちゃくちゃ手間とコストがかかるのだ。

廃材となったサッシが埋め込まれた壁面は圧巻だ

ゼロ・ウェイストセンターに泊まった感想

この宿泊体験は非常に印象的だった。まず、上勝の先進的な取り組みは、「社会はこうあるべき」という高い理想から始まったのではなく、「やらなしゃーない」という消極的態度がスタートだったこと。
それから、ゴミを起点として自分たちの生活や社会を見直すことも面白かった。これを買ってしまうと、使ってしまうとゴミが出るなぁとか、これは使い捨てが前提となっている商品だなぁとか。
なお、上勝もゴミをゼロにはできておらず、残り10%強のゴミが発生している。これは消費者側だけではどうしようもなく、メーカー側を巻き込んでいるとのこと。 商品を作る側は、生産のコストだけでなく廃棄のコストも考慮し、ライフサイクルのトータルバランスを検討して商品づくりをこれからはおこなっていく必要がある。

上勝での滞在で思い起こしたのが、数年前にNHKのクローズアップ現代が脱プラスチックを取り上げた記事だ。

現代生活からプラスチックを無くしてみたら?という無茶な仮定を体当たりで実践して検証してみるという良記事だった。ノープラ生活に挑戦した池上ディレクターが高校の同級生というのもあり爆笑しながら読んだが、プラスチックの意味やプラスチックを導入したことで我々が失ったもの(省いたもの)が浮き彫りになった。

その他

廃油から作った石鹸を使う分だけもらうアクティビティ
シャンプーやトリートメントは量り売りで有名なeco store
同じコンセプトで作られたクラフトブルワリーRISE & WIN Brewingで夕食
ゴミがほとんど出ない朝食

長くなったので神山については次につづく


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