見出し画像

地元が「過疎地域」に指定されたので市民懇談会に参加してきた

姉さん事件です。
自分が住んでいる地域が「過疎地域」に指定されました。
うすうす感じていましたが、改めてお国から「あんたの地域は過疎だよ」と言われると現実を直視せざるをえません。

過疎地域指定の背景を説明しますと、昨年2021年4月1日に「過疎地域の持続的発展に関する特別措置法」(過疎法)が改正されました。その改正の中で、「平成の大合併の前の市町村区域を過疎地域とする特例」、いわゆる「一部過疎」が設定され、私の住む須賀川市、旧岩瀬村区域が晴れて一部過疎に指定されたのです。
そういうことだったのね!

さて、過疎法における過疎地域の定義はなかなか辛辣です。

~人口の減少、少子高齢化の進展等他の地域と比較して厳しい社会経済情勢が長期にわたり継続しており、地域社会を担う人材の確保、地域経済の活性化、情報化、交通の機能の確保及び向上、医療提供体制の確保、教育環境の整備、集落の維持及び活性化、農地、森林等の適正な管理等が喫緊の課題となっている~

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/2001/kaso/kasomain1.htm
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法

全否定じゃん! きっつー。

えーっと、じゃあ福島で他の過疎地域ってどこなのかな。。。。

https://www.kaso-net.or.jp/publics/index/34/
一般社団法人全国過疎地域連盟HPより

ほとんどじゃん!

※海沿いは福島第一原発周辺なのでちょっと特殊。
まぁ私も前職で福島県内をくまなく周っているので、肌感覚とは合ってます。
特に地図の左側の奥会津なんてなかなかの秘境です。皆さんも只見線の写真を一度は見たことがあるんではないでしょうか。そういえば、「奥会津は日本語の通じる海外だ、おもしろい!」と言って住みついた海外青年協力隊経験者もいました。

そんなわけで、過疎地域指定を受けて「過疎地域持続的発展計画」を策定するべく、住民の声を集める懇談会を須賀川市が開催する運びとなったので、夫婦で参加してきました。「過疎地域」の「持続的発展」がまず矛盾してない?という疑問を持ちつつ。

懇談会~現状の説明

まず市役所職員から現状の説明がありました。
過疎地域の指定要件は“過去25年間の人口減少率が23%以上、財政力指数が0.64以下”とのこと。旧岩瀬村地域は23.8%減なので「持続的衰退」してますね。ちなみに隣の須賀川市との合併が15年前なので、新市制になって色々な政治力学が働き、旧村区域の人口減少問題は有耶無耶にされていたことが想像できます。

老齢人口は40%を越え、年少人口は10%を切りそう汗

また、福島県と切っても切れないのが東日本大震災と原発事故で、2011年を境に人口がガクッと減っています。放射線を嫌って県外避難した人に加えて、岩瀬村は農業従事者も多いので、風評被害のために廃業して県外に出た人もいるのではないでしょうか。
それにしても、人口減少以上にヤバいのが65歳以上と15歳未満の人口比。あと20年も経てば老年人口の方が他界されて人口減少が加速度的に進むことが見て取れます。
つまり、今は崖っぷちの分岐点にいる。
20~30年後に振り返った時に、「こうなることが分かってたのに、あの時の人達は何もしなかったのね」と子々孫々に言われることだけは避けたい。

懇談会~出てきた住民の声

懇談会では様々な意見が出ました。

  • 「高齢者の移動手段が無い」

  • 「農業だけでは食べていけない」「働き口がない」

  • 「情報発信が足りていない」

どれも地方あるあるですね。
「じゃあ逆にこの地域の魅力は何ですか?」と聞くと、

  • 「野菜が美味しい」

  • 「景観が美しい」

  • 「地域のコミュニティが温かい」

などの声が出てきました。
確かにそうなんですが、それらの美点で人を呼び込む(観光も移住も)のは難しい。だって、岩瀬村より景観が美しいところは全国にたくさんあるし、ご飯が美味しいところもたくさんあるから。
厳しいことを言うと、色んな旅行先を選べる東京の人から見て、岩瀬村に他の地域と比較した客観的な良さはありません。
じゃあそれらの魅力は誰にとって価値があるのかというと、地域住民にとってではないかと私は考えました。

過疎脱却のKey Factor for Success:シビックプライド

これは私の持論なのですが、よく自己分析で使われる「ジョハリの窓」が地域の分析にも適用できると思っています。
つまり、地域の魅力は「地元住民が知っている/知らない」魅力、「他地域の住民が知っている/知らない」魅力に分けられると。

https://www.miraiarch.jp/column/glossary/johari/ より引用

東京ディズニーランドや京都の清水寺や沖縄の海などは1の開放の窓でしょう。しかし、そういったものは数えるほどしかありません。また、地元の人が認めていない魅力は消費され、価値が長持ちしません。
大事なのは、地域内の人と地域外の人が交流し、対話し、2の窓と3の窓を開示することで、地元の人が当たり前だと思っていたことに価値があるという気づきを得ることや、地元の人しか知らない魅力が外の人に伝わっていくことだと思います。また、それらのプロセスを通じて、4の窓も創造していくことができるでしょう。
まさにそれを実践していたのが私の前職の事業だと思います。

懇談会での会話を通じて、自己肯定感ならぬ、自地域肯定感が低いなと感じました。懇談会に参加している人は前向きな人が多かったですが、おそらく村の平均的な感覚は「こだとこ(こんなとこ)なんにもね」「子どもたちが出てくのは当たり前だ」であり、これが普通な限り「持続的衰退」は続いていくでしょう。
この問題に比べれば、移動手段の問題や生業の問題は些末です。逆に「おらの村はこんなにいいところだ」という人が増えれば、人も集まり知恵も集まり問題が解決されていくでしょう。

自分達のアクション

私たち夫婦が運営しているゲストハウスも上記のプロセスを目指して開業しました。いったん福島を出た私たちだからこそ気づく岩瀬村の魅力を、地域外の人にも地域内の人にも知ってもらいたいという思いで営業しています。

おかげさまで、ひっそりと運営しているにもかかわらずうちを見つけてくださり、お手紙で予約というハードルも乗り越えて泊まりに来てくださる方たちは、とても滞在を楽しんでくださっています。
ある人は私の伯父に山を案内してもらい昔ながらの里山の暮らしを教えてもらったり、ある人はネギの収穫体験をしたり、ある人はすぐ近くのあぜ道を散歩したり。 おそらく地元の人が聞いたら「それの何が楽しいの!?」という体験ばかりです笑

その他に、今年は藤沼湖でのBBQも予定しています。懇談会で教えてもらったのですが、この藤沼湖の支流にはサンショウウオやモリアオガエルもいるそうです!

こんな感じで村をハックして、自分達も楽しみながら地方創生に挑戦していきたいと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?