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'95 till Infinity 009

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 001 】


 俺は手を洗いながら、トーニのことを考える。

 トーニ・モルトーニ、高校の頃はよく一緒につるんで遊んだ。

 スケートにレイブにドラッグ、あの頃の俺らみたいにサーフィンやオージールールズ・フットボールだとかとっていう普通の高校生が「クール」って思うようなものに興味が持てない、思っていたって仲間に入れてもらえないってガキがやったことはみんなやった。

 俺たちは学校が終わるとすぐに電車に乗って、バスに乗って俺たちだけのスポットを探しにスケボーに行った。

 他のガキどもがスポーツの試合をやっている週末には汚いバックパックに安物のウォークマンと聴きすぎて擦り切れそうなテープ、そこらへんの蛇口から入れた水道水の入ったペットボトルを入れてどこまでも行った。

 先のことなんか考えたこともなかった、今その瞬間楽しければよかった。

 やることやること全てが楽しかった。

 何も考えちゃなかった、ただ仲間と過ごす毎日が楽しかった。

 先のことなんか考えたこともなかった。

 目の前の瞬間瞬間の景色が新しすぎて、もうそれだけでいっぱいだった。

 朝起きて目を開けるとそこが何年間も寝起きしている自分の部屋でカーテンが閉まっていようとも、太陽を肌で感じた。毎日目を覚ました瞬間にそれが新しい、ブランニューな一日の始まりだということがわかった。

 いいことがあるか、悪いことが起こるかはわからなくても、それは同じ日は二度とない新しい一日の始まりだった。自分の前に広がるのは無限に繋がる永遠ともいえる時間、そんな状況で誰が先のことなんて考えるんだろう?

 明日も明後日も、1週間先も一ヶ月先も一年先も十年先も全てが一緒くただった。目の前に広がる永遠に続く、終わりの見えない道を見て誰が想像すらできない5 km先や10 km先、果ては500 km先にあるものについて考えるだろう?

 俺たちは来週末の予定すら決められなかった。ただ毎日を流れるがままに過ごしていくだけで何か必ず今よりももっと楽しいことがある、そして実際にその通りだった。

 ただ流れに任せているだけでひょっとしたら、ひょっとしたら、もっともっといいことがあるかも知れないのに、先のことなんて決めることはできなかった。

noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。