'95 till Infinity 034

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 026 】


 トーニの家からバス停のあるキャニング・ハイウェイまでの路地を俺たち3人は押し黙りただただ歩く。キャニング・ハイウェイに辿り着いたところでカイロが黙って手に持っていた板に飛び乗る。

 すっとノーズを浮かしたカイロは、浮いた板を前足で、テールを後足で絶妙にバランスし緩やかな坂をマニュアルで降りていく。

 重心の軸を無駄にブレさせないように体はしっかりと動かさず、宙に上げた両手でバランスを取りながら坂を滑っていく。

 歩道の舗装の継ぎ目にウィールが当たってそのショックで重心の軸がずれると、カイロは前足と後足でコントロールしている板と上げた宙に上げた両手の角度を微妙に調整して一瞬で重心を元に戻す。

 歩道が交差点で途切れると、カイロは板の前を浮かしたまま歩道を降り、マニュアルをしたまま、後ろのウィールで車道に着地する。

 カイロのマニュアルはコンクリート張りの歩道よりも粗いアスファルト舗装にスピードが削がれ、決してスムーズとは言えない路面からの振動にウィールはガラガラと音を立てている。遠くから見ている俺の目からでもカイロの体が小刻みに震えているのが見える。

 ここまでか、と俺は思うけれども、カイロは体のバランスを保ち、なんとか持ち堪える。5mも我慢すればまた歩道は復活する。歩道が復活したところでカイロは縁石をオーリーで越える。

 今にも止まってしまいそうだったマニュアルは、歩道に戻った途端に歩道のスムーズな路面と下り坂の勾配で息を吹き返す。


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