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'95 till Infinity 017

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 009 】


  バスセンターに着いた俺たちは濡れてしまった上着を脱ぎ、靴を脱ぎ、ずぶ濡れの靴下を脱ぐ。靴下を絞るとぼとぼとと音を立てて水が地面を打ち、水を吸った上着は手にずしりと思い。

 濡れた靴下を「ブルース・リー」とか言いながら振り回していたトーニは誰かにシャープなローキックをくらって、ふくらはぎを押さえてうずくまっている。

 上着と靴下を手すりに干した俺たちは、その横でスケボーの上に座って喋り始める。雨の中走って乱れた呼吸を整えながら、飲み物を片手に5分後にはすっかり忘れてしまうような馬鹿話を俺たちだけの言語で始める。

 車座に座ったスケーターのガキども。手には湿った煙草、足元にはミネラルウォーターのボトルやコーラのカンカン。手すりに掛かった人数分のパーカーと靴下、周りに適当に散らばっているスニーカーにベースボールハット。コンクリートの地面が素足にひんやりと冷たい。

 そうやってしばらく話していると、ひんやりとした初冬の空気は火照っていた体から徐々に体温を奪っていき、皮膚から染み込んだ寒さが体の中まで入り込んでくる頃には誰からともなくスケボーからゆっくり立ち上がって干していた服を着始める。

 靴紐を締めなおし、立ち上がり見たスケボーには、デッキテープに浮かぶ様々な尻の跡。それを見て、俺たちはまた笑い出す。


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