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'95 till Infinity #011

【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own #003


 最初にレイブに行くきっかけを持ってきたのはトーニだったと思う。

 あれは、多分高校3年も折り返し地点になろうかとする頃、俺たちがイースト・パースのいつもの倉庫の脇で滑っていた時だった。

 その倉庫の搬入口はトラックからの荷下ろしのために5mぐらいの幅でトラックの荷台の高さに合わせて一段高くなっていて、倉庫の屋根がその部分まで覆っていたので俺たちは雨の日はいつもそこで滑っていた。

 コンクリートのスムーズな地面は高い湿度のせいで汗をかいてつるつるだったけど、俺たちはただスケボーができるっていうだけで幸せだった。

 遅れてきたトーニは雨に濡れないようにスケボーをパーカーの中に大事そうに抱えていた。板が濡れて合板の間の接着剤に水が入るという事態はバイトもしてない俺たちには致命的だった。

 ずぶ濡れのトーニを見てからかう俺たち、トーニはそんな俺たちに「うるせーよ」と一言ニヤっと笑って滑り出す。自分の調子を確かめるような低いオーリー、そこからの180°ヒールフリップ、それがその頃のトーニのウォームアップルーティーンだった。

 露で濡れた地面でウィールが横に滑ってしまったトーニは一瞬宙へふわりと浮いてから、ケツから転んで背中で着地する。板はそんなトーニを置いて進行方向とは逆にがらがらと音をたてながらロケットのように一直線に進んでいく。

 転んだ瞬間のトーニの間抜け面とせっかく雨の中パーカーに入れてまで持ってきた板が「カタン」と音を立てて屋根の外へ飛び出していく様子を見て爆笑する俺たち。トーニはそんな俺らを大の字に寝たまんま見て苦笑いしている。

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書き手 えいきら

イベント映像会社、イベント制作会社、外資系映像機器メーカーを経て、現在東南アジア某国在住。酒は飲むからには呑まれる40歳。

'95 till Infinity ~ 第1章

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