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'95 till Infinity 010

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 002 】


 そんな毎日の中でいいこともあったし、悪いこともあった。

 学校の先生にうだうだ言われることもあれば、好きで好きでしょうがないコにどうしても振りむいてもらえないこともあったし、たまには今でもタイムマシーンをかっ飛ばしてブン殴りに行きたいようなこともあった。

 それでも、俺にはそれがたいして悪いことのように感じられなかった。

 毎日が新しすぎて他に比べるものを知らなかったからだと思う。

 そんな気の利いた猿でさえ考えるようなごくごく近い将来のことさえ考えられない俺たちと同じ教室の1mと離れていない隣の席には、16や17でもう将来のことを真面目に考えている奴らがいた。

 どの大学のどの学部で何を勉強すれば何になれる、TAFE(*テイフ / 専門学校)に入ってどういう訓練を受ければどういう職業で飯が食っていける、そんなことを考えている奴らがいた。

 何がなんだかわからないままに勉強すればいい、真面目に勉強すればなんとかなると言われて素直に勉強に励んでいた奴らもいた。


 そして、それよりも大多数を占めていたのは、ハイプまみれのラジオのトップ40を聴き、放課後はオージールールズフットボールで汗を流し、伸ばした髪をわざとシャンプーしないことでサーファーにでもなったつもりのクソみたいな奴ら。

 足元にはお揃いのドクター・マーチン、背中に背負った体とバランスのとれてないバカみたいにでかいビラボンやリップカールのバッグ。他の奴らと同じ格好をして、同じ格好をしているということで安心をする奴ら。

 自分達が学校で一番クールだと囁くパッとしない奴らの言うことを疑いもせず、自分たちの輪の中に入ってない奴とはろくに口もききやしない。

 そして、そういう奴らを遠巻きに手に届くアイドルのように見ていた、先生にさえも名前を覚えてもらえないような地味な奴ら。

 クールグループの奴らが仲間をイジっている時には爆笑の端の方で自分もイジる側の優越感を遠慮がちに楽しみ、自分がイジられている時には愛想笑いをして下を向き気まぐれな北風が止むのを待つような奴ら。

 俺たちは、そんなどのグループに入りたいとも思わなかった。

 俺たちはそういうくだらないものすべてから自由でいたかった。

noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。