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'95 till Infinity #027

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own #019



 「何やってんだよ、トーニ。もう行くぞ」と何度言っても、「いいから、いいから」と言って出てくる気配はない。

 ドアを押さえている左手の肩にそっと鼻をあててみる。Tシャツの袖には確かに汗の匂いや他の何だかわからない臭いが混ざり合っいて、確かにこれじゃ女の子は寄ってきそうにない。

 ラウンジのテーブルの上にはトーニが置きっぱなしにしたCKのボトル。カイロは外で煙草を吸いながら空を見上げている。俺はもう一度トーニを呼んでみる。トーニからは相変わらずの「いいから、待っとけよ」という答え。

 「トーニの奴遅いなぁ、ちょっと呼んでくるよ」とカイロに言い、俺はそっと中に入る。一瞬俺の方を見たカイロは、また顔を上げてまっすぐに空を見ている。そっとドアを閉めた俺はテーブルの上のコロンを手に取る。

 トーニが出てくる気配はない。

 俺はトーニがしていたように手首にコロンをつけて、それを肘の内側と首に軽く叩いてつけてみる。これで大丈夫なはずだと思ってTシャツを匂ってみるが、そこからはさっきと変わらぬ匂い。

 そりゃそうだ、Tシャツには何もつけてないしな。

 しばらく考えた俺は前にどっかの雑誌で読んだように自分の目の前の空気にコロンを吹きかけて、それをくぐってみる。Tシャツを匂ってみると、確かにONEのすっきりとした柑橘系の匂いが汗の臭いに勝っている。

 あんなに偉そうに言っていながら、Tシャツから雨に打たれた野良犬の臭いをしているトーニとカイロを思い俺はほくそえむ。

 本当に馬鹿な奴らだ、何もわかっちゃいない。

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書き手 えいきら

イベント映像会社、イベント制作会社、外資系映像機器メーカーを経て、現在東南アジア某国在住。酒は飲むからには呑まれる40歳。

'95 till Infinity ~ 第1章

1990年代西オーストラリア州パースを舞台とする3人に少年の物語。第1章。世界の果ての俺たちの2nd Summer of Love。
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