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'95 till Infinity 025

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 017 】


 俺たちが靴ひもを締めなおしているところに、自分の部屋から去年のクリスマスプレゼントに母親に貰ったカルバン・クラインONEのボトルを持ったトーニが戻ってくる。

 それは、いつもスケボーで波状に塩が拭いたTシャツから汗の臭いを撒き散らしているトーニに、「そんなことじゃ、女の子にもてないわよ」と奴の母親が買ってきてくれたものだった。

 クリスマ明けに会ったトーニは「俺は全然臭くなんかねぇよ。俺のどこが臭いんだよ」とぶつくさ言っていたけど、実際は相当嬉しかったみたいだ。

 そのコロンをこれでもかと振りつけるトーニを黙って見ていたカイロが、「俺もちょっともらっていいかな?」と聞く。

 トーニはカイロをちらっと見て、「ダメだね」と即答し、居間の壁に掛かった鏡を見ながら手櫛で髪を整え始める。それでも珍しく食い下がるカイロにひとしきり髪をいじって満足したトーニが言う。

 「何だよ、カイロ。何でお前はそんなにこれつけたいんだよ?大体、これは俺の大事なコロンってお前も知ってるだろ?

 俺だってなんか特別なイベントごとじゃなかったらつけないんだぜ。それをなんでお前なんかに分けてあげないといけないんだよ?」

 「トーニ、そんなケチなこと言うなよ。だってさ、今日のレイブですっげーかわいいコと知り合うかも知んないわけじゃん?そんな時に汗臭かったりとかしたら、絶対ダメじゃん。さっき乾燥機に入れたっても、このTシャツは洗ったわけでもないんだよ。

 それにさ、お前は特別なイベントごとって言ったけど、これこそ特別なイベントになんじゃない。だってさ、俺たちは今から生まれて初めてのレイブに行くんだよ。

 お前がずっと言ってるみたいにレイブがホントにとんでもなく楽しいもんだったら、俺たち3人にとってこれ以上のイベントってないよね?

 だから、いいじゃん。友達でしょ、俺たち?」

noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。