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'95 till Infinity 041

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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 033 】


 俺たちは、てんでばらばら、好き勝手に、さっきあの瞬間が俺たち一人一人にとってどれだけすごいことだったかを、自分が何を言っているか、相手がそれを理解しているかなんて気にもせず、叫びあっている。

 それはもうマニュアルの距離や、何十秒ものマニュアルに耐えてからの360°フリップの難易度なんていうこととは全然関係なく、あの瞬間、俺たちが居合わせたあの世界の中で考えられうる最も美しい絵を共有できたことへの純粋な喜び。

 その喜びを、雨に濡れた歩道の上で抱き合い、沸きあがってくる感情のまま、互いの耳元で怒鳴りあっていた時、俺はこのマニュアルが、俺たちが住む街が生み出したこの世界にもう一つとない唯一無二の絵だったということを心の芯で感じていた。

 これが、この世界の果てともいえるオーストラリアの西の外れにあるパースという街に来たことも、そんな街が存在することも知らない人の心を打つかどうかなんてことはどうでもよかった。

 少なくとも、これは、俺とカイロとトーニにとって、世界に他に一つと存在しない、俺たちだけの絵であり、俺たち以外の誰にも - 少なくとも、俺たち自身を除いては - 汚すことのできない、たった一つだけの絵だった。

 胸の底から湧き上がった感情の奔流は生まれたままの姿で脊髄を駆け上り、とてつもない勢いに加速し、コントロール不能な”ラッシュ”となったそれは、俺たちの頭の中を縦横無尽に駆け巡る。

 それは俺たちが初めて体験する種類のもので、言葉で表現なんかできるものではなかった。

noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。