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  • CH55x関連備忘録

    書籍「CH55xでどうでしょう」のサポート情報を含むCH55x関連の情報の備忘録 https://www.rutles.net/products/detail.php?product_id=897

最近の記事

「半導体の民主化」を阻む要因に対する解決策はあるのか

「半導体の民主化」みたいな文脈で、これまで10年ほど、いろんなことを考えて試してきた。例えば「Lチカチップ動画」 をつくったり、MakeLSI:というのでコミュニティ構築や相乗りチップ試作をやったりしてきた。10年やってみて、つくづく思うのは、「半導体の民主化は難しい」、つまり「誰でもチップ設計・製造できる世界は遠い」ということ。 そして最近つくづく思うのは、その困難の根源は「製造が自分でできない」ということにあるような気がしてきた。 ソフトウエアも、電子工作も、デジタル

    • 技術とお金

      むかし、工学部の学生のころは、「お金」の話が、正直、好きになれなかった。お金は目的ではなく手段であって、それは誰かやってよ、自分は技術を深めたい。そんな事を考えていたと思う。だから、お金の話は、無意識に(あるいは意識的に)避けてきたんだと思う。 社会人(研究者)になってからも、最初のころは、そんな感じだった。いい技術を研究していれば、誰かが拾って世の中に出してくれてる(そしてお金をかせいで、世の中がよくなる)、と。 そんな考えが少しずつ変わってきたのは、いわゆるMake

      • Arduino UNO R4について思うこと

        イマドキの電子工作のあり方を変えた(と個人的には思っている)マイコンボードにArduinoがある。その中で、定番といえるのが、"Arduino UNO R3"というやつ。 https://www.switch-science.com/products/789 Arduinoが、それまでの(そして詳しい人しか使え/わなかった)無数のマイコンボードと異なる点はいろいろあるけど、個人的には「ジャンパワイヤが挿せるメスソケット」「PCからかけられるDTRリセット」「USBで給電と通

        • 「CH552でどうでしょう」の正誤表

          「CH552でどうでしょう」の誤字などをみつけたら、こちらに追記していきます。他にもあれば、ご指摘ください!(ご指摘いただいたみなさま、ありがとうございます!) p.40下からL.2 :(誤)fiesOnDrive →(正)FilesOnDrive p.71 L.4:(誤)リセット品→(正)リセットピン

        「半導体の民主化」を阻む要因に対する解決策はあるのか

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        • CH55x関連備忘録
          4本

        記事

          ch55xduinoでタイマ割り込み

          CH552のタイマの機能はデータシートなどで調べられますが、ch55xduinoでの割り込み処理関数の書き方などは、ちょっとひとクセあります。イチロヲさん(@ichirowo)さんから、こんな書き方でできる、という情報をいただいたので、まとめておきます。これはTimer2を使ったタイマ割り込みの例です。 void setup() { TR2 = 0; // Timer2をストップ(初期設定のため) C_T2 = 0; // Timer2クロックを内蔵クロック(デフォルト

          ch55xduinoでタイマ割り込み

          CH55xのUSBホスト機能

          探すとCH55xでホスト機能のあるCH559でいろいろ作っている方がいるので、備忘録。 「かんたんUSBホスト」は、q61.orgさんが作られている、CH559のUSBホスト機能を使いやすくまとめたボードで、つないだUSBキーボードで押した文字がUARTで出てくる、というお手軽さ。設定を変えるとUART通信速度を変えたり、特殊キーを読めたり、と色々使える。 サポートページには、開発過程の情報もいろいろ載っていて参考になる。ファームウエアは「CH559sdccUSBhost

          CH55xのUSBホスト機能

          CH552の高速Lチカ

          CH552の処理速度を上限を見積もるために、ハードウエアに近いところを直接いじる方法でLチカをやってみました。いわゆる「高速Lチカ」。ArduinoIDEを使う前提で。 まずは普通のLチカ void setup() { pinMode(10, OUTPUT);}void loop() { digitalWrite(10, 1); digitalWrite(10, 0);} ArduinoIDEサンプル通りのなんのヒネリもないLチカです。(出力ピンはP1.0を使って

          CH552の高速Lチカ

          深センに滞在して、見聞きしたこと、経験したこと、考えたこと

          深センに半年間行くことにした私は半導体集積回路(特にイメージセンサ)の研究をする一方で、広い意味での「ものづくり」である"Make"も、研究として、そして個人的にやっています(両者のつながりについてはこちらの記事で)。そんなわけで、おのずと「ハードウエアのシリコンバレー」とも呼ばれる中国・深センに関心が向くわけですが、大学のサバティカル研修制度(半年から1年程度の期間、研究以外の業務(授業や運営など)を免除されて研究だけできる制度。海外の大学や研究機関に滞在するケースが多い)

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          深センに滞在して、見聞きしたこと、経験したこと、考えた…

          量子コンピュータとのファーストコンタクトをしてきた

          量子コンピュータをつくっているSPINQへ行ってきた。自分は大学時代に量子力学は勉強したことはあるものの、量子コンピュータについては「なんかすごいもの」ぐらいの、ものすごく雑な知識しかなかったので、事前に「量子コンピュータが本当にわかる!」という本で予習。それによると量子コンピュータの基礎はこんな感じ。 普通のコンピュータ向けのアルゴリズムとは根本が違う、量子コンピュータでしか使えない、チートともいえるアルゴリズムが使える問題は劇的に速くなる可能性がある それ以外の問題は

          量子コンピュータとのファーストコンタクトをしてきた

          STCmicroのマイコンSTC8Gを使ってみた

          中国にSTCmicro(宏晶科技)という半導体メーカがあります。(会社名で検索するとstcmicro.comというアドレスが出てくるのですが、どうもドメイン移行中なのか2022/6/8現在はつながらず、ここでリンクをはってあるサイトが公式(?)ページのようです) いろんなマイコンのラインナップがあるのですが、個人的に「8-20ピンくらいの小規模なマイコン」に興味があって、具体的にはATtinyやPIC12あたりの代わりになるマイコンを探しています。中国の部品調達サイトLCSC

          STCmicroのマイコンSTC8Gを使ってみた

          自作チップマウンタの記録

          (2022/1/28追記)この内容をまとめて薄い本を書きました!→https://www.amazon.co.jp/dp/B09MDXVLVL/ ふと思い立って、勢いではじめてしまったチップマウンター製作。先人もたくさんおられるけど、なるべく既製品・標準部品を使って作る、という方針で。 https://github.com/openpnp/openpnp-openbuilds/wiki/Build-Instructions https://cronos.kibe.la/sh

          自作チップマウンタの記録

          CH340を炙って削って解析してみた。(23/02/28追記)

          マイコンをPCにつなぐときによく使う「USB-シリアル変換器」というものがあります。Arduinoあたりをよく使う方なら、FTDI Basic(またはその互換品)を使うことが多いかと思います。これらにのっている、USBとシリアル(いわゆるUART)をつなぐICには、いろいろなメーカーがいろいろな製品を出しています。有名どころだとFTDI社のFT232シリーズというのがあったり、そのピン互換のPL2303シリーズというのがあったり、そのニセモノがあったり、みんな大好きM5Sta

          CH340を炙って削って解析してみた。(23/02/28追記)

          CH340KでESP32の書き込みをしてみた

          激安USB-シリアル変換チップに、中国のWCH(Nanjing Qinheng Microelectronics)社のCH340シリーズというのがあります。激安Arduino互換ボードなどでよく見かけるのですが、そのうちのCH340Kという製品が、最近秋月で買えるようになりました。 ・1個70円 ・外付け部品がほとんど不要(電源のバイパスコンデンサだけで、水晶も抵抗も不要) ・UARTの制御に使うDTR, RTSなどが出ている という特徴があって、かなり胸アツな仕様です。

          CH340KでESP32の書き込みをしてみた

          TaoBaoで日本から買い物をしてみた

          中国のショッピングサイトに、淘宝(TaoBao)というのがあります。最近、よく買い物をする人をみかけるAliExpressと同じく、Alibabaが運営しているショッピングサイトです。(ちなみにAliExpressで買い物ばかりするのを「Ali地獄」と呼ぶとかなんとか)AliExpressは、出店するショップに審査があり、ある程度は信用できるショップと考えていいのですが、こちらのTaoBaoは、そのような審査がない、どちらかというと個人ショップやフリーマーケットのような雰囲気

          TaoBaoで日本から買い物をしてみた

          研究進捗報告をGitHubでやってみた

          研究室の学生さんが、各自で研究を進めているのですが、たまに些細なことで悩んでいたり(本人にとっては大きな問題なんでしょうけど)困っていることがよくあります。悩んでるなら質問や相談してよ、と思うのですが、なかなか心理的なハードルがあるのか、あるいはどうも悩んでいることに気づいていない、という場合もあるようで、下手をすると1ヶ月ぐらい、研究が止まっていることも、かつてはありました。ゼミの発表担当がだいたい月に1回なので、ゼミの時に、はじめてその状態が発覚したりするわけです。もちろ

          研究進捗報告をGitHubでやってみた

          After Corona時代の研究室のあり方

          先週から、研究室での研究活動に制限がほぼなくなってきて、今週から対面のゼミも再開するんだけど、研究室のあり方、について、いい機会なので、いろいろ考え直している。 というのも、実際、自分の経験として、4月からの在宅勤務が続いて、自宅での研究環境がかなり快適になってしまって、このまま在宅のほうがいいよ、という気持ちさえ出てくる。何人かの学生さんに聞いたら、やはり同じようなことを感じているようだ。そして学生さんの研究も、個別のオンラインミーティングで、進捗を聞いたり方向性を議論で

          After Corona時代の研究室のあり方