今夜、大塚で起こったこと(急)

串カツ田中とは近年急激に店舗数を増やしているように見える串カツチェーンである。串カツとハイボールを主力に据えた居酒屋である。名前の由来になった田中さんは社長でもなんでもないらしい。なんやねん。

森山智仁を上座に据え、ニシカワリキとぼくは出口側を固めて、容易には逃げられないようにポジションをとる。少なくとも原稿を持って帰ってもらうところまでは粘らねば、ここまで来た意味がない。

とはいえ、来月に公演を控えた大事な時期であるし、彼の諸々の事情も把握はしていない。こちらの一方的な頼み事である以上は、これがどう断られても飲み込む覚悟はあった。

「ごめんなさい、実はまだ電子書籍を読んでなくて」

森山智仁が切り出した。一昨日送ったばかりであるし、それは想定内である。だから出力を持参したのである。

「プリントあります。お持ちください」
「ああ、こりゃすいませんね」

抵抗なく出力を手にしてくれた。メールでも伝えてあるし、頭紙にも書かれているが、ストーリーをざっと口頭で説明する。

「面白い話ですよね。売れそう」
「ありがとうございます。これを舞台化したいという話なんですよ」
「なるほど」

森山くんは丁寧に劇場の取り方や、必要なスタッフ、キャストの探し方など教えてくれた。たいへん勉強になる。これだけでも来た甲斐はあるにはあるが、本題は違う。レクチャーを頼みにきたのではない。

「という感じなんですが、そういう話でいいのですかね」
「いいえ。違います」
「と言いますと」
「森山さんのご都合を聞かずに勝手なことを言います。この小説を元に、森山さんの作品をとして舞台をやっていただきたいのです」
「あ! そういうことですか!」

言ってしまった。もちろんその話をしにきたのだが、こういうものの根回しや下話の入れ方がわからないので、真っ向勝負を仕掛けてしまった。だいぶ驚いている。しかし、回りくどいことを言っても始まらない。

「そうですか、そういうことでしたら……」

ああ、これは断りのときの枕詞だ。舞台を控えているわけだし、他の企画もあるかもしれない。生業の都合だってある。ちょっと絵を描いてくれなんてのとは次元が違う。時間もかかるし、魂も削るだろう。カジュアルに引き受けられるような、そんな軽いものではないのだ。

「劇場を押さえないとなりませんね」
「は?」
「ぼく1月の公演のあと予定が空いてるんですよ。その後まで待ってくれるならいいんですが、グランプリとかあるでしょ?」
「いや、そもそもグランプリに間に合うとか思っていないので、そこは構わないのですが」

2ヶ月で舞台公演ができるなんて思うほどアンポンタンではない。知人の舞台も半年はかけて準備している。一年以上かけるものも多いだろう。

「そういうことであればできると思いますよ」
「マジ?」
「まあボランティアってわけにはいきませんが、ぼくもこの物語には興味があります。一人芝居か、二人か。面白そう」
「どうおうおおおどどおうどいまどうもうこうこうもうこ1あqwせdrftgyふ13ふじこ」
「でもホントに1月中じゃなくていいんですか?」
「できる方法ある?」
「ないですね(笑)」
「いやもう、グランプリどうのってことより、これを実現させたら絶対面白いなって思うんだよね。NovelJamが舞台になるって絶対面白い」
「やりましょうよ」
「お願いします!」

それから、具体的な時期は早くて四月。劇場次第ではもう少し先。
必要な人員や、キャストなど。そしてかかる費用の相談などもした。

「役割的にはどう考えますかね。脚本まで自分でいいのですか?」
「そうですね。演出・脚本をお願いします。とくにかくぼくらは演劇のことはわかりませんから」
舞台は監督と言わないらしい。「演出」が統括ということのようだ。そして、底本を脚本化するのもお願いした。
「じゃあニシカワさんは原作者で、波野さんは、そうだなプロデューサーかな?」
「え、マジ? 演劇プロデューサー? ヤバ」
「波野さんまた肩書増えるねw」
「では、正式に森山さんにセンコロ舞台化の演出・脚本をお願いします」
「お願いします!」
「こちらこそ!」

著者と演出家はがっちりと握手を交わした。
資金はどうするのか、役者はどうするのか。劇場は? 舞台のスタイルは?
考えることは山積みだけど、とにかく舞台化は決まった。

チームGOMERA
『【大好き】センパイを双子コーデでコロしてみた!』
2018年春、都内某所にて舞台公演決定!!
演出・脚本   森山智仁
原作      西河理貴
プロデユーサー 波野發作

乞うご期待!!!

うひゃーたいへんだー

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